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年金支払い、不平等相続…“家族への迷惑”自覚し、32歳ひきこもり男性が復帰するまで

ひきこもり当事者の中には、現状に危機感を感じつつも、「月に数万円稼ぐ程度では生きてはいけない」などと考え、なかなか立ち直れない人もいるようです。

ひきこもりから抜け出す一歩は?
ひきこもりから抜け出す一歩は?

 ひきこもりのお子さんの中には、「ちょっとだけ働いて月に数万円稼ぐようになっただけでは生きていけない。それでは意味がない。でも、自活できるレベルの仕事をするには壁が高すぎる。そんなの無理…」といった考えにとらわれてしまい、身動きが取れなくなってしまう方もいるようです。「自活できなければ生きていけないのか」「もっと別の道はないのか」と、「仕事をする=自活できるようになる」という図式から脱却して考えることも時には必要かもしれません。

就職失敗をきっかけに、ひきこもりへ…

 秋の気配が感じられるようになったある日。「8年間、ひきこもっている長男のお金のことで相談したい」という父親から相談の依頼がありました。相談者の家族構成は以下の通りです。

・父(59歳) 会社員
・母(59歳) パート従業員
・長男(32歳) 無職、ひきこもり、両親と同居
・長女(34歳) 既婚、父親家族とは別居

 面談は、父親、母親、長女夫婦、筆者の5人で行いました。お金の話をする前に、まずは長男の状況から伺うことにしました。長男は大学4年までは特に問題もなく過ごしてきたそうですが、就職活動がうまくいかず、結局、就職できないまま卒業を迎えました。卒業後はアルバイトをしながら就職先を探していましたが、思うようにいきません。

「このままじゃ俺は一生就職できない。アルバイトなんかじゃ生きていけない」と言い出し、24歳のときにアルバイトも職探しもやめてしまいました。仕事をしていない負い目のためか友人関係はどんどん希薄に。外出の機会も減っていき、いつしか家にひきこもるようになってしまいました。

 母親は沈んだ様子でつぶやきました。

「長男は30歳を過ぎても仕事をしていないので、本人も将来のお金のことについて心配しています。ならば、アルバイトでも何でもいいから仕事をしてほしいと思うのですが『正社員じゃないと生きていけない。でもそれは無理』の一点張り。どうしたらいいのか分からず困っています…」

 父親が続けました。

「長男は病気や障害はないのですが、この先、仕事をすることは難しいかもしれません。そこで、私が定年を迎える前に長男とお金のことについてしっかり話しておきたいと思うのです」

「なるほど、分かりました。この場では、大まかな金額になってしまいますが、ちょっと試算してみましょう」

 筆者はそう提案しました。

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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