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頭部打撲 頭を打ったら何科に行けばいいの?【ぼくの小児クリニックにようこそ】

重症なら6時間以内に症状

 では、頭を打った後はどのくらいの間、注意深く見ていればいいのでしょうか。

 子どものけがに詳しい脳外科医の話によれば、「硬膜外血腫」も「硬膜下血腫」も進行が速いので、受傷後6時間以内には症状が出るそうです。逆にいえば、6時間を過ぎると、命に関わる大きなけがの可能性は減るそうです。もちろん、その後も注意はしてくださいね。

 頭の骨折に関しては、注意点が2つあります。一つは、骨折に伴い、脳の表面を循環している液体「髄液(ずいえき)」が漏れてくるケースです。この場合、たんこぶが硬くはなく、ブヨブヨします。

 もう一つは「陥没骨折」です。先日クリニックを受診したお子さんは、たんこぶの中央が小さくへこんでいました。そこで、脳外科に連絡を取って診察していただいたところ、やはり陥没骨折でした。陥没の範囲はごくわずかだったのですが、骨が脳を押すので将来、てんかんなどの神経症状が出る可能性も否定できません。骨折の修復手術をするかは、経過を見ながら慎重に考えるとのことでした。

 実は、子どもの脳を専門にしている医者はあまりいません。一般の脳外科医も成人が専門で子どもは苦手です。私も脳の手術はしたことがないので、受傷後に嘔吐する子の対応には苦慮します。ただ、お子さんの意識がもうろうとしているときは、救急車を呼んでください。それ以外なら、まず、かかりつけ医に相談してくださいね。

(小児外科医・作家 松永正訓)

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松永正訓(まつなが・ただし)

小児外科医、作家

1961年東京都生まれ。1987年千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」院長。「運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語」で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社)などがある。

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