トランプ大統領就任でどうなる!? 米中の“貿易戦争”
中国には強力な「武器」がある
ところで、中国が人民元安誘導を行っているかといえば、実際はその逆です。中国の外貨準備は2014年夏をピークに減少傾向にあります。2014年夏といえば、人民元が対ドルで下落し始めた頃です。中国は外貨を売って人民元を買うことで、人民元の下落スピードを抑制してきたと考えることができます。
もちろん、あくまでこれは管理通貨という中国の現行制度を前提としたものであり、米国が求めるような為替取引の完全自由化が実現した場合に、人民元が上昇する可能性を否定するものではありません。
これに関連して、中国には強力な「武器」があリます。中国の外貨準備の一部は米国債(いわゆる財務省証券)で運用されています。昨年10月に1位の座を日本に譲りましたが、それでも中国は11月末時点で1兆ドルを超える米国債を保有しています。9月末時点で米国債の発行残高は15.6兆ドルで、その4割に相当する6.2兆ドルが外国による保有分です。さらに、そのうちの2割弱を中国が保有していた計算です。
中国が米国債を大量に売却すれば、あるいはその観測が広がるだけでも、米国債の価格は大きく下落し、利回り(市場金利)は急騰しかねません。そして、それは米国の景気に冷や水を浴びせることになるでしょう。
今から約20年前、日米貿易摩擦に辟易(へきえき)した橋本龍太郎首相(当時)が、米国での講演後に「米国債を売りたい誘惑に駆られることがある」と発言して物議を醸したことがありました。当時の金融市場の反応は比較的穏やかでしたが、それは同盟国の日本がそんなことをするわけがないという安心感があったからかもしれません。習主席が同様の発言をしたとして、金融市場は安穏としていられるでしょうか。大いに疑問です。
(株式会社マネースクウェア・ジャパンチーフエコノミスト 西田明弘)

コメント