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マイクロチップ義務化、虐待罰則強化…「改正動物愛護法」成立、獣医師の見方は?

販売用犬猫へのマイクロチップ装着義務化などを盛り込んだ改正動物愛護法が成立。現場の獣医師は、改正をどのように捉えているのでしょうか。

販売用犬猫のマイクロチップ装着が義務に
販売用犬猫のマイクロチップ装着が義務に

 販売用犬猫へのマイクロチップ装着を義務化する改正動物愛護法が6月に成立しました。販売業者は、マイクロチップの装着と所有者情報の、環境大臣への登録を義務付けられます。すでに犬や猫を飼っている一般の飼い主については装着は努力義務ですが、マイクロチップにより、迷子になった犬猫の特定が可能となったり、遺棄抑制につながったりするといわれています。ほかに、生後56日以内の犬猫の販売禁止(一部例外あり)や動物虐待に対する罰則強化も行われます。

 現場の獣医師は、法改正をどのように捉えているのでしょうか。成城こばやし動物病院院長で東京都獣医師会副会長の小林元郎さんに聞きました。

動物の体に与える影響はない

Q.マイクロチップの義務化をどう捉えていますか。

小林さん「とてもよいことだと思います。社会で人と動物が共生していく上で、マイクロチップによる個体識別は必要不可欠だからです。人と動物の共生の先にあるのは動物の福祉で、特に家庭で飼われている動物には福祉という概念が非常に大切です。福祉を実践していくには法的な根拠が必要で、そのためには動物の識別が欠かせません。

日本獣医師会、日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会でつくる組織『AIPO』(アイポ、動物ID普及推進会議)は、2002年度からマイクロチップを活用したペットの個体識別の普及・推進を行ってきました」

Q.マイクロチップが動物の体内に与える影響は。

小林さん「基本的にはありません。マイクロチップは、体内に入れても害のない種類のガラスで覆われているからです。インターネット上では『注入した部分が化膿(かのう)した』などの報告がありますが、マイクロチップを入れる際に手技が雑だったり、不潔な状態で入れたりしたために起きた化膿だと思います。適切な方法で装着すれば問題ありません」

Q.一般の飼い主については、マイクロチップ装着は努力義務となっています。動物の遺棄を減らす上では、完全に義務化した方がよいのでは。

小林さん「確かにそうです。その点では、動物を飼っていない人のことも考える必要があります。世間で動物を飼っている人は3割ほどで7割は飼っていない人です。社会でマイクロチップを装着していない動物が野放しにされていることについて、動物を飼っていない人はどう思うでしょうか。道で犬が散歩しているのを見て『怖い』と感じる人も安心できる社会でなければなりません。

マイクロチップ義務化は、飼い主だけの問題ではありません。社会全体が当事者です。一般の飼い主に関して努力義務にとどまったという課題はありますが、今回の法改正は、動物を飼っている人にとっては、動物の福祉に寄与するものであり、飼っていない人にとっては社会の安心安全に寄与するもので、両者にとってメリットがある内容だと思います。

なお、今回の改正法付則には、対象の拡大(販売業だけではなく一般の飼い主にも義務とすること)について国が検討し、必要な措置を講じることが明記されています。次回の改正の際には、完全義務化に向かうものと考えられます」

Q.他に、現時点で課題だと思うことはありますか。

小林さん「法律が形骸化しないか心配です。関係省庁はキャンペーンをするなど、国民に法律を周知させる必要があります。せっかく法律が改正されたのに、人々の意識が変わらず、国の指導も不十分で形骸化してしまってはもったいないし、意味がありません。国は責任を持ってこの法律を守らせていくべきです」

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小林元郎(こばやし・もとお)

獣医師

米ニューヨーク州マンハッタンのAnimal Medical Centerにて研修(1990~1991年)。1993年、成城こばやし動物病院を開業。公益社団法人東京都獣医師会副会長、先制動物医療研究会副会長、東京城南地域獣医療推進協会(TRVA)理事、アジア小動物獣医学会所属。

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