災害から愛する「ペット」を守るのは、避難所頼みでない飼い主のサバイバル力
台風19号による豪雨で、各地で避難指示が出されましたが、ペットの飼い主の中には「ペットがいるので避難できない」と自宅に残った人もいて、災害時の対応に課題が残りました。
台風19号による豪雨で各地の川が氾濫し、広い範囲で避難指示が出されましたが、ペットの飼い主の中には「ペットがいるので避難できない」「避難所に行ってもペットを受け入れてくれない」などとして自宅に残った人もいました。そのため、ネット上では、「動物も家族」「避難所でペットを受け入れるべき」とペットの受け入れを求める声が上がる一方、「アレルギーが心配」「犬の鳴き声がうるさい」など受け入れに否定的な意見も見られます。
台風や地震などの大規模災害時にペットを守るため、飼い主はどのように対応すべきなのでしょうか。災害時の動物救護を担当する、東京都獣医師会事務局長の平井潤子さん、東京都獣医師会副会長で成城こばやし動物病院院長の小林元郎さんに聞きました。
台風19号時、外への係留を指示したケースも
Q.台風19号の上陸時、各地の避難所はどのような状況だったのでしょうか。
平井さん「地域や避難所によって、ペットの同行避難に対する対応に差がありました。
東京都獣医師会では自治体や防災関係組織と協力して、ペットの同行避難に関する啓発活動を進めてきました。発災時の避難先として、平時から広報されている指定避難所のほか、自主避難所も開設されましたが、避難所によっては『ペットの同行避難』という自治体の取り組みをご存じない人が対応して、ペットと避難してきた人の受け入れを拒否するケースや、悪天候の中、ペットを施設の外に係留するよう指示したケースもありました。
避難所での受け入れ拒否が飼い主の危険につながることを想像し、もう少し柔軟に対応できなかったものかと残念に感じました」
小林さん「私の近所の高台にある世田谷区設置の避難所では、地下の駐輪場をペット連れの人に開放していました。地下でも水が流れ込む心配がない場所で、ペット同伴の人とそうでない人の導線が完全に分かれ、ペットがいることに気付かない人もたくさんいました。大きな混乱もなく、トラブルも見受けられませんでした。素晴らしい判断だったと思います」
Q.著名人からも「ペットが避難所で受け入れられないのは理解できない」などの意見がネット上に寄せられました。
平井さん「気持ちはとてもよく分かります。ただ、飼い主とペットの命を守る手段は避難所だけではありません。
先ほど、避難所について『もう少し柔軟に対応できなかったのか』と申し上げましたが、それはあくまで避難所まで来た人についての、その場での対応に関してです。自分のいる場所が危険だと感じたら、避難所に頼るだけでなく、台風の上陸前に親戚や知り合いの家に避難する、避難所が危険だと感じたり、ペットの受け入れが拒否されたりした場合は、とにかく水が来ない高い場所に避難するなどの判断力と行動力が必要だったと思います」
Q.では、飼い主側の危機感が足りなかったということでしょうか。
平井さん「飼い主さんが、自分で危険性を判断して迅速に行動する『サバイバル力』を強化してほしいです。自分が住んでいる地域で災害が起こったとき、獣医師や自治体職員も被災するというイメージを持ってほしいのです。災害時に、自治体の職員が常に地域にいるとは限りませんし、自分の命を守ることに精いっぱいで駆け付けられないかもしれません。
台風19号の通過後、長野県の被災地域に行きましたが、普段から同行避難訓練を行っている地域とそうでない地域で『同行避難』に対する理解に差があったと感じています。当然『こんな大変なときになぜペットのこと?』といった状況も見られました。もちろん、地域社会に対し同行避難の理解を働きかけることは必要ですが、飼い主さん自身が動ける力も重要です。今後、南海トラフ三連動地震や首都直下型地震も起こり得ますから、個人のサバイバル力を磨いておく必要があります」
小林さん「ある日突然起こる地震と、今回のような台風災害は分けて考えなくてはいけません。今回は、少なくとも台風上陸の3日前には、危険な状態になるとメディアで報道されていました。ただ、私自身もここまでの事態になるとは想像していませんでした。今後、事前にペットと一緒に首都圏を離れるなど自身とペットを守るためのアクションを各自が想定しておく必要があるでしょう」
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