きょう「防災の日」 ペットと安全に避難するために、飼い主が心がけておくべきこと
きょうは「防災の日」。東日本大震災などの教訓から人々の防災意識が高まっていますが、ことペットに関しては、対策は十分とは言えないようです。飼い主に求められることとは――。

きょう9月1日は「防災の日」。毎年、全国各地で防災訓練が実施されます。東日本大震災や西日本豪雨といった大規模な自然災害を踏まえ、防災意識が高まりつつありますが、災害時の「ペット」の扱いについては、衛生上の問題や避難者とのトラブルの懸念から避難所への入所を断られるケースもあるなど、対策が十分とはまだ言えないようです。
災害に備えて、ペットの飼い主は普段から、どんなことを心がけるべきなのでしょうか。東京都獣医師会副会長の小林元郎さんに聞きました。
地域の自治会に参加し、積極的に議論を
Q.自然災害に備え、飼い主が意識すべきことは。
小林さん「普段から最寄りの避難所を確認したり、防災グッズを用意したりすることは、最低限のことです。実は災害時に一番大切なことは、まずは飼い主自身が無事で安全であるということです。当然、ペットは自分で身の回りのことができません。飼い主がいなければどうにもならないことを強く意識してください。まずはご自身の安全、これが最優先です」
Q.飼っている犬や猫に関して、どのような備えが必要ですか。
小林さん「基本的に、災害発生時から3日間は救助は来ないものと考えてください。つまり、その間は誰も助けてくれず、ペットの世話はすべて飼い主が自力で行うことになると想定してください。飲み水、ペットフードを備蓄しておくことはもちろんですが、ペットが持病を抱えている場合は、薬に加えて、その子のプロフィル、現在受けている医療に関連する情報を、スマホなどを活用してすぐに取り出せるようにしておきましょう。
猫は犬と違い、おにぎりやパンのような、避難所でよく配給される食べ物は食べません。猫用の缶詰など普段食べている食事は必ず用意してください。また、猫は環境の変化に弱く、慣れない避難所の環境ではトイレに排便・排尿ができなくなることも多々あります。普段から使い慣れている用具を備えてください。最近、ケージとしても使用可能なリュック型のキャリーが販売されています。避難所でも役立つと思いますので、使用を検討するのもよいかもしれません」
Q.ペットが避難所への出入りを断られることがあると聞きますが、なぜでしょうか。
小林さん「避難所にペットを連れて行く(同行避難)というコンセンサスが社会に浸透していないことが大きな原因ではないでしょうか。意外と知られていないことですが、避難所の運営責任者は、避難所となる小中学校の校長か地域の自治会長です。ただ、災害時に校長が学校の近くに住んでいるとは限りませんので、校長が責任者であっても、実質的な責任者は自治会長となります。そうなると、事前に自治会などで同行避難に対する取り決めがないと、いざというときに現場はかなり混乱します」
Q.ペットの飼い主は、何をすべきでしょうか。
小林さん「まず、自分のペットが、避難所のように大勢の人に開放された場所できちんと生活できるか自問してみてください。もちろん上手に適応できる子もたくさんいますが、どれほどの人が自信を持って手を挙げられるでしょうか。一方、ペットを飼っていない人は、避難所生活の中にペットが存在することをなかなかイメージできません。
そういう意味でも、避難所におけるペットの存在について、日頃から地域の中で話し合いの場を持ってもらいたいです。ペットを飼育している人とそうでない人の意識のギャップを埋める、この作業はペット自身ができることではなく、人間同士の作業になります。
そのためには、普段から自治会などの地元のミュニティーに参加し、ペットがどのように捉えられているか確認する必要があります。集まりがあったときに『うちの自治会では、災害時にペットはどう扱われるのですか』『避難所でペットを受け入れるのですか』と質問してみてください。そうすると、参加している人たちの間から、『そういえばペットもいたよな』『全然想定していなかった』『他の地域ではどうなっているんだろう』という会話がごく自然に始まり、そこがスタート地点になります」
Q.ゼロからのスタートなのですね。
小林さん「ペット飼育者としてはとても残念な話ですが、ほとんどの地方自治体の地域防災計画の中にペットの記述が盛り込まれていないことを考えると、これも厳しい現実として受け入れなければなりません。
ペットを守りたいのであれば、普段から、地域のコミュニティーの中で積極的にコミュニケーションを図り、いざというときに自分とペットのことを気にかけてくれるような人間関係をつくっておく必要があります。災害時に自分の力だけで生き残るのは至難の技です。本当に必要なのは、地域のコミュニティーとのつながりともいえます」
Q.人間関係をつくるにも、若い人を中心に、地域に自治会があるとは知らない人も多いかと思います。
小林さん「賃貸住宅に住んでいるのであれば、管理組合か、担当している不動産業者に聞いてみるのがいいと思います。ペットを飼っているのであれば、自治会にすぐに参加しましょう。災害時のペットの扱いについて、地域の中で合意を得ておくことは、本当に大切です」
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