コーヒーや時計レンタルも 「サブスクリプション」浸透の背景とメリット、そして今後
コーヒー飲み放題や高級時計のレンタルサービスなど、幅広い分野で「サブスクリプション」が導入されています。消費者にとって、メリットはあるのでしょうか。

消費者の志向が「所有」から「利用」へと変化するに従い、物やサービスを一定期間、定額で提供する「サブスクリプション」サービスを導入する企業が増えています。動画や音楽の配信サービスはもとより、最近では、コーヒーの飲み放題、高級時計やバッグのレンタルサービスなど、幅広い分野で登場しています。企業にとっては、顧客を囲い込むことで安定した収益が見込まれますが、消費者にとってメリットはあるのでしょうか。専門家に聞きました。
新聞の定期購読も「サブスクリプション」
「サブスクリプションビジネス」の振興に努める日本サブスクリプションビジネス振興会(東京都渋谷区)によると、2017年ごろから「サービスを売る」タイプのビジネスモデルが国内に浸透し、物を介さない定額制サービスを中心に「サブスクリプション」と呼ばれるようになりました。同振興会では、新聞・雑誌の定期購読、食品の定期配達、スポーツクラブの会員など、従来からある定額制サービスも「サブスクリプション」に分類しています。
流通アナリストの渡辺広明さんに聞きました。
Q.さまざまな分野で「サブスクリプション」サービスが導入されています。その背景は。
渡辺さん「以前から消費者が、新聞の定期購読、携帯電話の通信料の定額制など、従来からある定額制モデルに慣れ親しんでいたためではないでしょうか。その後、エンタメ分野で、音楽の聴き放題、動画の見放題、雑誌の読み放題などのサービスが相次いで登場し、定額制サービスがさらに社会に浸透していきました。これら『放題』ビジネスが浸透したことで、消費者の可処分所得のうち定額制サービスの支出が占める割合がかなり高まったと思います」
Q.最近では、高級バッグや高級時計の定額レンタルサービスも行われるようになりました。
渡辺さん「趣味趣向が多様化していることの現れだと思います。また、TPOに合わせ、しっかりとした服装で臨まなければならない際に定額のレンタルサービスは重宝するのではないでしょうか。さすがに服や時計を頻繁に買うわけにもいきませんから」
Q.「サブスクリプション」は企業にとって、もうかるビジネスモデルなのでしょうか。
渡辺さん「サービス内容によると思います。例えば、スポーツクラブでは会員の2~3割、高級スポーツクラブは半数近くが『幽霊会員』だと言われています。スポーツクラブは物を提供する場所ではないため、会員を多く獲得すればするほど収益が上がります。逆に、動画や音楽の定額配信サービスについては、コンテンツで他社と明確に差別化できている企業は少ないと思います。今後、淘汰(とうた)が進み、サービスから撤退する企業も出てくるかもしれません」
Q.消費者にとって、「サブスクリプション」はどのようなメリット、デメリットがあると思いますか。
渡辺さん「例えば、音楽をたくさん聴いたり、動画を頻繁に視聴したりする人は支出削減につながると思います。定額制なので使い倒すほど得で、使わなければ損です。生活スタイルが変化して使用頻度が下がることもあるので、半年に一度、契約中の定額制サービスを見直し、使用頻度が少ないサービスを解約したり、似通ったサービスを複数契約したりしている場合は本当に必要なサービスだけに絞るなど、棚卸しを行ってみてはいかがでしょうか」
Q.注目している「サブスクリプション」サービスはありますか。
渡辺さん「『アマゾンプライム』は秀逸です。音楽や動画が好きに楽しめますし、配送料も通常利用に比べて割引されます」
Q.登場してほしい「サブスクリプション」サービスは。
渡辺さん「コンビニコーヒーで『サブスクリプション』をやるべきだと思います。コーヒーは飲んでいるうちに飲むのが習慣化するので、定額制により固定客をつかむことで他の商品の『ついで買い』が期待できると思います」
Q.「サブスクリプション」サービスは今後、どのように変化すると思いますか。
渡辺さん「必要だと感じるサービスはほぼ出尽くしているので、今後はサービス内容がマニアックになっていくと思います。例えば、理髪店の利用し放題やホテルの泊まり放題などのサービスが登場するかもしれないですね」
(オトナンサー編集部)
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