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コンビニ各社が「駅ナカ」出店を強化 鉄道会社はなぜ“商売敵”を後押しするのか

コンビニ各社が鉄道会社と提携し、「駅ナカ」への出店を強化しています。元々は「商売敵」のはずなのに、なぜなのでしょうか。

駅ナカに進出するコンビニ(2015年8月、時事通信フォト)
駅ナカに進出するコンビニ(2015年8月、時事通信フォト)

 通勤・通学時に立ち寄る駅の売店が、いつの間にかコンビニに入れ替わっていたことに気付いた人も多いかと思います。近年、大手コンビニ各社は鉄道会社と提携し、駅構内の商業スペース、いわゆる「駅ナカ」への出店を強化しています。一方、自社グループで以前から自前の売店を運営してきた鉄道会社にとって、コンビニはいわば商売敵とも言える存在ですが、なぜか売店を閉店し、コンビニの出店を後押ししています。

 コンビニが「駅ナカ」への出店を強化する理由について、流通アナリストの渡辺広明さんに聞きました。

人が定期的に集まり、売り上げが見込める

Q.首都圏などの駅ナカで、コンビニの出店が増えています。なぜ、大手コンビニは駅ナカに進出しているのでしょうか。

渡辺さん「理由が2つあります。まず、コンビニは立地産業といわれており、立地条件で売り上げが決まるといっても過言ではありません。駅ナカは、もともと人が集まりやすく、多少品ぞろえが悪くても売り上げは高くなる傾向にあります。

JR東日本グループは自前でコンビニ『NewDays』を運営していますが、その2018年度の全店平均日販は56万8000円と、業界最大手のセブン-イレブンの65万6000円に次ぐ2位です(ローソン53万1000円、ファミリーマート53万円)。駅は人が定期的に集まるため、来店客数もある程度予想できます。食品ロスが問題となっていますが、客数が読めることで、廃棄商品の減少にもつながります。

もう一つの理由ですが、通常、近隣に競合他社の店舗がオープンすると、売り上げが落ちることも珍しくありません。ところが、駅ナカは1社コンビニがオープンすると、他社のコンビニは進出しません。その結果、客がたくさん集まるだけでなく、ライバルもいないため、売り上げが確実に伸びます。もちろん、乗降客数が少ない駅の店舗は必ずしも売り上げが伸びるわけではありません」

Q.駅ナカコンビニの商品数はどれぐらいなのでしょうか。

渡辺さん「売店から転換した駅ナカコンビニは、恐らく1000~2000点ほどです。通常のコンビニに比べると、品ぞろえは少ないのですが、宅配便の受け付けなど手間のかかるサービスには対応していません。そのため、最少の人数で店を運営することが可能です」

Q.鉄道会社はなぜ、コンビニと提携するようになったのでしょうか。

渡辺さん「自社のノウハウに限界があり、客が満足する品ぞろえを売店で提供できなくなったからではないでしょうか。そのため、コンビニと組んで、フランチャイズのような形で、店舗で働く従業員だけ雇って店舗運営の仕組みを導入したのだと思います。コンビニ側は売り上げが見込めますし、鉄道会社側は労力を軽減できるので、お互いにとってプラスとなります。

そもそも、自前で本格的なビジネスを展開しようとすると、商品仕入れや商品開発担当、店舗スーパーバイザーなど、さまざまな人材が必要となります。大手コンビニに比べると、鉄道会社が運営する売店は店舗数が少ないため、ビジネスモデルを構築するのは困難です」

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渡辺広明(わたなべ・ひろあき)

流通アナリスト、マーケティングアナリスト、コンビニジャーナリスト

1967年4月24日生まれ。浜松市出身。東洋大学法学部経営法学科卒業後、ローソン入社。22年勤務し、店長、スーパーバイザーを経てコンビニバイヤーを16年経験、約700品の商品開発を行う。同社退社後、pdc、TBCグループを経て、2019年3月、やらまいかマーケティング(https://www.yaramaikahw.com/)を設立。同時期に芸能事務所オスカープロモーションに移籍し、オフラインサロン「流通未来研究所」を開設。テレビ、ラジオなどで幅広く活動する。著書に「コンビニの傘はなぜ大きくなったのか」(グーテンブック)「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ)

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