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格安スーツも登場 「オーダーメード」や「パーソナライズ」が広がっている背景は?

個人の趣向に合わせた商品を製造する「オーダーメード」や、個人情報を元に最適な商品を提供する「パーソナライズ」サービスが拡大しています。その背景とは。

「オーダーメード」「パーソナライズ」の例
「オーダーメード」「パーソナライズ」の例

 個人の趣向に合わせた商品を製造する「オーダーメード」や、個人情報を元に最適な商品を提供する「パーソナライズ」サービスが拡大しています。例えば、これまでハードルが高いとみられていたスーツのオーダーメードですが、近年はネット通販事業者を筆頭に、大手紳士服店の既製品よりも安い金額で受注する事業者が進出しています。「オーダーメード」「パーソナライズ」拡大の背景などについて、流通アナリストの渡辺広明さんに聞きました。

ZOZOのオーダーメードスーツも話題に

 本来「オーダーメード」は、事前に購入者本人が希望したデザインや素材などに沿って製造する手法を指します。高級スーツの仕立てが有名です。また、「パーソナライズ」とは、一人一人の属性や購買、行動履歴に基づいて最適な情報を提供する手法です。現在、化粧品やシャンプーといった美容品分野などで応用されており、個人データをもとに肌質や髪質に合った化粧品やシャンプーを提供する事業者が現れています。

Q.昨年、ネット通販事業者のZOZOが全身採寸スーツ「ゾゾスーツ」を使ったオーダーメードスーツのサービスを開始し、話題となりました。画期的なサービスでしたが、「サイズが合わなかった」といった声もネット上に寄せられていました。

渡辺さん「紳士服の量販店で毎回計測するのがおっくうだったため、私もZOZOにビジネススーツを作ってもらいました。生地は良かったのですが、実際に着てみるとサイズが合っていませんでした。首回りや肩がきつかったのと、すその丈が短く、納得がいきませんでした。確かに、ビジネススーツのサービスは大失敗だと思いますが、このサービスは『オーダーメード』という、金持ちにしかできなかったものを一般向けに提供しようというチャレンジだったのだと思います」

Q.「オーダーメード」「パーソナライズ」が拡大している背景は。

渡辺さん「若者を中心に『自分らしさ』を出そうとする人が増え、消費が多様化しているためです。『自分らしく生きなさい』、少し古い表現では、『世界に一つだけの花』といったイメージですね。教育などで『自分らしさを出そう』と教えられており、こだわりや嗜好(しこう)性を反映しやすいファッションを中心にパーソナライズサービスが求められるようになっています。ある意味、究極の差別化商品はパーソナライズ商品です。

先日、家族でファミレスに行った際、子どもから『料理の種類が少なく、食べたい物がない。たこ焼きも焼肉もない』と言われました。僕らが若い頃は、何でもあるからファミレスに行くという感覚だったので驚きました。後日、外食する際はフードコートに行こうということになりました。各自が好きなものを食べられるからです。ちなみに、回転ずしや焼き肉に家族で行っても、子どもたちは各自好きなものだけを食べています。それはある意味、『パーソナライズ』です」

Q.「ファミレスに何もない」とは驚きました。

渡辺さん「これはうちの子どもに限らず、若い人の一般的な考えです。今の大学生が居酒屋に行かなくなっているのも、『居酒屋には何もない』と捉えていて、『それだったら本当においしい物が食べられる店に行った方がいいよね』と考えているからだそうです。食の分野から消費の個人化が進んでいると思います。ファミレスや居酒屋は今後、専門化していくしかないでしょう。

また、これは若い人に限りませんが、リカちゃん人形やミニ四駆などのおもちゃに見られるように、人形の髪形や服装を替える、あるいはミニ四駆のパーツを自由に組み合わせて遊ぶといった、自分なりに良いものを作っていく遊び方に昔から慣れ親しんでいる人が多いのも、『パーソナライズ』が求められるようになった要因だと思います」

Q.消費者にとって、「オーダーメード」「パーソナライズ」のメリットは。

渡辺さん「自分のニーズにぴったりの商品を手に入れられることではないでしょうか。例えば、『APEX(アペックス)』というポーラの化粧品サービスがあります。店舗で肌診断を行い、その人に合わせたスキンケアを提案するサービスです。また、ウェブ上の簡単なカウンセリングを通じて、個人の悩みや髪質に応じたシャンプーを販売する通販会社も現れています。私はシャンプーやスキンケア商品にこだわりはありませんが、本人に合ったものを使うべきだと考えています。

値段は高いけれども、いい物をしっかり使っていくといった流れになれば、現在の使い捨ての文化と逆行していく可能性があります。革靴も自分の型を作ったら下のパーツだけ替えていくという形になるかもしれません。こうしたパーソナライズサービスは、これからの時代に必要とされると思います」

Q.「パーソナライズ」を行う際の企業側のコストは。

渡辺さん「コストは当然かかります。例えば、シャンプーを1時間に2000個作れる工場で、シャンプーを顧客の髪質に合わせて100種類作る場合、20本ずつしか作れなくなります。稼働率が低くなり、コストは高くならざるをえないでしょう。ただ今後は、AIやIoTの力で、もっと効率的に作れるようになるかもしれません。

現在、『パーソナライズ』サービスを行っている企業は投資を行っている段階で、事業としてはまだもうかっていないのではないでしょうか。まずは収益を獲得できる仕組みを作っていかないと伸びていかないでしょう。ただ、消費が『パーソナライズ』化していくことは間違いないので、いかに適正価格に近づけつつ、企業ももうかるようになるかというところがポイントだと思います」

Q.渡辺さんが利用したい「オーダーメード」「パーソナライズ」は。

渡辺さん「安いオーダーメードスーツのサービスを利用してみたいですね。実際に1着2万~5万円程度で作る事業者も登場しています。

また、寝具メーカーの西川による枕を作るサービス『オーダーメイドピロー』を使ってみたいです。首や頭の高さを計測するため、個人に合った枕が作れます。枕の素材を選択できるのもいいですね。価格は2万7000円(税込み)ですが、枕は毎日使うものなので安いと思います。人は、1日の約3分の1の時間を睡眠に充てています。フィットした枕が欲しいです。このサービスは、ギフトとしても喜ばれるかもしれないですね」

(オトナンサー編集部)

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)

流通アナリスト、マーケティングアナリスト、コンビニジャーナリスト

1967年4月24日生まれ。浜松市出身。東洋大学法学部経営法学科卒業後、ローソン入社。22年勤務し、店長、スーパーバイザーを経てコンビニバイヤーを16年経験、約700品の商品開発を行う。同社退社後、pdc、TBCグループを経て、2019年3月、やらまいかマーケティング(https://www.yaramaikahw.com/)を設立。同時期に芸能事務所オスカープロモーションに移籍し、オフラインサロン「流通未来研究所」を開設。テレビ、ラジオなどで幅広く活動する。著書に「コンビニの傘はなぜ大きくなったのか」(グーテンブック)「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ、12月27日発売予定)

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