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高齢ひきこもり者を抱える家族は「お金」の不安にまず向き合おう

国民年金保険料は免除の可能性も

 次に、お子さんの収入について確認することにしました。将来の収入は主に公的年金です。老齢年金について確認すると、Aさんは視線を落とし申し訳なさそうに語り始めました。

「主人が亡くなるまでは、息子の国民年金の保険料は毎月支払っていました。しかし、1年前に主人が亡くなった後、毎月の保険料が負担になり、支払うのをやめてしまいました…」

「え? そうだったんですね…ですが、日本年金機構から督促状が何度か届きませんでしたか。中の手紙を見ると『一度相談に来てください』という内容もあったと思いますが」

「怖くて封を開けることもできませんでした。仮に相談に行っても『保険料を払ってください』と言われるだけだと思ったので、何もしませんでした…」

 確かに、ご主人亡き後のAさん家族の収入は厳しいものになってしまったことでしょう。国民年金の保険料は1カ月当たり1万6410円(2019年度)。決して安くはない金額です。しかし、このまま何もせず未納の状態にしておくのは好ましくありません。Aさんご家族の収入を確認したところ、Aさんの年金収入以外に収入はなく、遺族年金が150万円、老齢年金が70万円ということでした。

 そこで、私は次のようにアドバイスしました。

「Aさんご家族の場合、国民年金の免除申請の手続きをすることによって、全額免除になる可能性がかなり高いと思われます。仮に、全額免除に該当した場合、毎月の保険料は0円になり、将来もらえる老齢基礎年金は年額で約800円ずつ増えていきます。免除申請は現在から2年1カ月前までさかのぼって申請ができますから、まだ十分間に合いますよ。何なら私がお手伝いいたしましょうか」

「そうなんですね。全然知りませんでした。未納にしていることがずっと心にひっかかっていたので、安心しました」

 お母さまは、ホッとしたご様子でそう言いました。

「では、さらにお子さんの将来のお金の見通しを立てていくことにしましょう。次に生活費の見通しを立てていきますが、そこでもいろいろと課題が出てくると思います。どのようにしていけばよいのか、一緒に考えていくことにしましょう」

「はい。ぜひ、お願いします」

 このように、お金の見通しを立てていこうとすると、ご家族ごとにさまざまな課題が見えてきます。その課題に対して、時には専門家も交えて対策を考え、一つ一つ実行していく。お金の不安は完全にはなくならないかもしれませんが、漠然としたままの不安を抱えて日々を過ごすよりは、よほど気持ちが軽くなると思われます。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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