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「糖尿病の治療は一生です」 1型糖尿病歴30年の専門医が「一生治らない病気」と断言する理由

一度発症すると「一生治らない」「完治しない」…そういわれているのが糖尿病です。本当に一生完治はないのか、自身も1型糖尿病歴30年の専門医が伝えます。

糖尿病は本当に「一生治らない」のか…
糖尿病は本当に「一生治らない」のか…

 一度発症すると「一生治らない」「完治しない」と言われている糖尿病。自身も30年の1型糖尿病歴がある、eatLIFEクリニック(横浜市旭区)院長で内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんも「糖尿病は完治しません」と断言します。なぜ、糖尿病は“一生治らない”病気なのか、そしてもし発症したら、どう治療と向き合っていけばいいのか――。市原さんにご解説いただきます。

「寛解」はしても「完治」はしない

 糖尿病という病気に対して、「一生治らないのか」「完治のない病気なのか」という疑問を持っている人は少なくないでしょう。結論から言いますと、一部の糖尿病を除いて、糖尿病は完治しません。

 代表的な糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。1型糖尿病は自己免疫疾患であり、膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌がなくなるために生涯インスリンの注射をしなければならず、完治はありません。

 例えば、「膵島(すいとう)移植」のように、インスリンを出す細胞を移植する方法があり、完治することもありますが、徐々に糖尿病の状態に戻ることが多く、今後の再生医療が期待されるところです。

 一方、遺伝的因子と生活習慣が原因で引き起こされる2型糖尿病は、肥満や脂肪肝によりインスリンの効き目が悪くなること(インスリン抵抗性)や、インスリンの分泌が弱くなることで発症します。

 俗に言う“糖尿病予備軍”である「境界型糖尿病」のように、血糖値が少し高くなってきた段階で、インスリンを分泌する臓器である膵臓は既にかなりの負担がかかっており、この段階で「生活習慣を改善する」といった努力をしなければ、その後どんどん血糖値は悪化して糖尿病の状態になります。つまり、境界型糖尿病であっても、糖尿病に進展すればなおさら完治することは難しいのです。

 生活習慣の改善や薬などによって、血糖値が健常者の数値とほぼ同じ状態になり落ち着く「寛解」の状態になることはできます。しかし、これは「完治」とは違います。暴飲暴食をしたり体重増加をしたりすると、すぐに血糖値が悪化し、糖尿病の状態も悪化していくからです。

 完治について「一部の糖尿病を除いて」と先述しましたが、完治する糖尿病もあります。「妊娠糖尿病」や「ステロイド糖尿病」です。

 妊娠糖尿病は、その後の糖尿病発症リスクが約7倍にも上がるものの、出産が終われば糖尿病状態は解除されます。一方、ステロイド糖尿病は「ステロイド」という薬を使用することで発症する糖尿病ですが、ステロイドの使用が一時的であれば、糖尿病はその後完治する場合もあります。

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市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

eatLIFEクリニック院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。eatLIFEクリニック(https://eatlife-cl.com/)。

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