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特別支援学校の「PTA役員」になった自閉症児の母 大変な日々が始まると思ったら…不安が杞憂に終わったワケ

知的障害がある自閉症の息子を育てる女性ライターが、息子が通う特別支援学校でPTA役員を務めた経験について、紹介します。

押し付け合い、仕事と育児との両立が大変というPTAのイメージ(べっこうあめアマミさん作)
押し付け合い、仕事と育児との両立が大変というPTAのイメージ(べっこうあめアマミさん作)

 ライターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある息子と、きょうだい児である娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。

 学校に通う子どもがいる親にとって気になるのが「PTA」ではないでしょうか。一般的に、PTAは保護者と教職員が子どものために活動する団体といわれていますが、SNS上では「PTAの役員になると大変そう」「共働きなのに大変」「PTAは時代遅れ」など、さまざまな声が上がっています。特に子どもが特別支援学校に入学すると、「PTAってどうなるの?」と不安を抱える人は多いと思います。

 今回は、息子さんの特別支援学校でPTA役員を経験したアマミさんが、支え合いの空気に救われながら役員の仕事をしたエピソードについて紹介します。

世間のPTAに対するイメージと不安

 PTAと聞くと、どんなイメージが浮かびますか。「大変そう」「役員決めや仕事などが押し付け合いで憂鬱(ゆううつ)」「仕事や育児との両立がきつそう」などの声をよく聞きます。

 私の息子は知的障害を伴う自閉症があり、特別支援学校に通っていますが、息子が入学したときにふと頭をよぎったのが、「PTAもやっぱり大変なのかな…」「2人の子どもを育てながら働いているけど、PTA活動までできるのかな…」という不安でした。

 障害のある子の親は、日常のケアだけでも手いっぱい。さらに特別支援学校は家から遠く、子どもとは違ってスクールバスがない保護者は、学校に行くのも一苦労です。

 私はそう考えると、PTA役員に立候補するのをためらっていました。

PTA役員になろうと思った理由

 しかし、息子が小学4年生のとき、私は初めて息子の学校のPTA役員に立候補しました。

 私がPTA役員をやろうと思ったのは、「小学部と中学部で9年間お世話になる学校だから、一度くらいはやってみようかな」と思っていたからです。実はそのとき、仕事も育児も忙しくて、正直なところ「大丈夫かな…」という迷いもありました。

 ただ、下の子も地域の小学校に上がってからでは「きょうだいダブルで役員」となってしまう可能性もありましたし、そのリスクを考えたら下の子が保育園に行っている今かなと思い、立候補したのです。

 さらに、私は自分の育児経験の中で、「役員」に関する忘れられない思い出がありました。

 息子の幼稚園時代、私は息子に障害があることを負い目に感じ、「園にも皆さんにもご迷惑をおかけするかもしれないから、役員くらいはやらないと!」という思いから、一番大変そうな役員に立候補したことがありました。

 しかし、当時は息子の妹である娘が、まだ抱っこひもに入るくらい小さく、その地域にも引っ越したばかり。近くに親も親戚も知り合いもおらず、心身ともにいっぱいいっぱいの状態でした。

 そんな私を心配して、役員に立候補した私を、園長先生が止めてくれたのです。そして、「無理して役員をやらなくてもいいんですよ」と言って、役員になることを免除してくれたのです。

 他の保護者の皆さんも、快く園長先生の意向を受け入れてくださり、他の人が役員を引き受けてくれました。

 私はそのときの配慮に非常に恩義を感じており、下の子が成長し、自分にも余裕ができたら、今度は私が誰かを支える側になりたいと思っていたのです。

 特別支援学校ではみんなが「障害児の保護者」。大変な状況のお母さんがたくさんいます。だからこそ、今度こそは私も恩返しのつもりで、PTA活動に積極的に関わろうと思っていたのです。

不安でいっぱいだったが…

 いざ、息子の通う特別支援学校のPTA役員になってみた私。自分から立候補したとはいえ、どれくらい大変なのだろうという不安がいっぱいありました。

 しかし、私の不安は杞憂(きゆう)に終わりました。なぜなら、息子の学校のPTAには、「できる人が、できるときに、できることを」という考え方が、しっかりと根付いていたからです。「役員は一度は必ずやらないといけない」といったルールもなければ、「やらない=悪い」という空気もありません。

 そもそも、特別支援学校はその性質上、先生の人数も多いですし、保護者も子どもを1人にさせることはしません。

 そのため、「校庭解放の見守り」や「ラジオ体操当番」のようなものはありませんし、登下校もスクールバスなので、「登下校の見守り」や「旗振り当番」のようなものもありません。もしかしたらPTAの業務自体が、普通の学校よりも少ないかもしれません。

 そして、障害のある子どもを育てる親同士、お互いに事情があることを深く理解し合っています。だからこそ、「無理なときは、無理しなくていい」という、安心感がありました。

 初めての顔合わせは、今でもよく覚えています。ドキドキしながらPTAの部屋に入ると、そこには和気あいあいとした、アットホームな空気が流れていました。

 そして会長が折に触れて掛けてくれた「1人で背負い込まず、大変そうだったらみんなに相談して、協力してやっていきましょうね」という言葉に、私はスッと肩の力が抜けました。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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