公務員男性から性的被害を受けた29歳女性、泣き寝入りせず「慰謝料」を手にした行動力(下)
公務員の不祥事、とりわけ「性犯罪」が頻発していますが、筆者の元にも、公務員男性による被害に遭った女性の相談者が多く訪れるそうです。
公務員の男性から性的被害を受け、筆者の元へ相談に来た29歳女性のケース。後編では、こうしたケースで泣き寝入りするケースが多い中、女性がどのようにして慰謝料を勝ち取ったのか、その経緯をご紹介します。
カメラ映像、DNA、診断書を要求され…
現在も毎日のように悪夢でうなされているのに、現実の世界で同じ男に犯されることを心配しながら暮らしていかなければならないのです。不動産屋に鍵の交換を頼もうにも、理由を聞かれたら答えようがありません。玄関につっかえ棒を設置したものの、在宅中に男がインターフォンを鳴らさず鍵を開けて中に入ってくることを恐れ、外出するのは食料の調達だけでした。
街中で他の男性とすれ違うだけで強姦(ごうかん)の記憶がフラッシュバックするので、例の男だけでなく、すべての男性に対して恐怖心を抱くようになり、結局、3週間もの長きにわたり、唯さんはほとんど外出することもままならず、仕事も休まざるをえませんでした。
「ホームで電車に飛び降りそうになったことは何度もありました」
唯さんは心理的に危険な状態に追い詰められていたのですが、何か行動を起こさなければ何も変わらないのも確かです。そこで、唯さんは勇気を振り絞って、公務員として働く男の仕事現場へ連絡したのです。
受話器の向こうにいたのは男の上司を名乗る人物。「あなたと山口(男の名前)の言っていることが違う。山口はあなたに襲われたと言っている。きちんと根拠を示してもらえますか」とまくし立て、さらに「例えば、防犯カメラの映像とか衣服のDNAとか、病院の診断書とか。証明できるものを持っていますか」と畳みかけてきたのです。
防犯カメラを室内に設置する一般家庭があるでしょうか。そして、男のDNAを採取できないのに、どうやって唯さんの衣服やベッドのシーツ、玄関のドアノブに付着したDNAと照合するのでしょうか。
さらに言えば、婦人科医師が診断書に書くことができるのは症状だけ。事件の現場に居合わせたわけではないので、誰のせいなのか、「原因」にまで言及することは困難です。つまり、男の上司はそうしたことを証明できないことを知りつつ、「証明してみろ!」と詰め寄り、唯さんを諦めさせようと画策したのです。
公務員の組織の多くは、厳しい上下関係で成り立っています。上司と部下はいわば一蓮托生。部下の不祥事は上司の責任にもなりうるので、上司が部下の「レイプ事件」を揉み消そうとするのは当然といえば当然です。結局、唯さんは慰謝料の「慰」の字も言えないまま「もういいです!」と電話を切ってしまったそうです。唯さんの気持ちを考えれば、再度、駐屯地へ電話をかけるよう促すのは難しいでしょう。
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