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女性の罹患数1位 「乳がん」の基礎知識と治療法

乳がんの進行度と治療

乳がんの進行度

 がんはどのくらいまで病変が広がっているかを基準に「病期(ステージ)」が決まります。乳がんは全病期でみると5年生存率が90%を超え、非常に治癒率の高いがんです。特に、初期に見つけることができればかなりの確率で治すことができます。

  治療法は発見時の進行度(病期)によって変わってきます。ステージ「0」~「Ⅱ」期は「早期がん」とされ、多くは乳房を温存できる可能性が高いです。「Ⅲ」期以降は原則、乳房全切除の対象となります。

5年生存率は全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2015年12月集計)。対象は2003~2005年の乳がん患者

乳がんの治療法

 乳がんの治療法には、大きく「手術(外科治療)」「薬物療法」「放射線療法」の3つがあります。単独で行うこともありますが、複数を組み合わせることもあり、ステージや患者の年齢、意思などを考慮した上で決定します。それぞれの治療法について紹介します。

・手術(外科治療)

 がんの部分を切除する治療。乳房の一部を残す(温存する)「乳房部分切除術」と、乳房すべてを切除する「乳房切除術」があります。がんの大きさや転移の有無によって決まり、ステージ「Ⅲ」を1つの境に判断されることが多いようです。乳房切除術となった際には、「乳房再建術」が行われます。これは、患者さん自身の他の部位から切り取られた組織や、人工のシリコンなどを使用して失った乳房を作るものです。これまで、自分の組織での再建術のみ保険が適用されていましたが、2013年から人工物による乳房再建術も保険の対象となりました。

 また、乳がんのがん細胞はリンパ液に乗って、周辺のリンパに入り込んで転移を起こしやすいのが特徴です。手術前にリンパ転移があるとわかった場合には、乳房と一緒に脇の下のリンパ節も取り除きます(腋窩リンパ節郭清=えきかりんぱせつかくせい)。

・放射線療法

 がん細胞に放射線を当てて、小さくしたり死滅させたりすることで、増殖を抑える治療。乳がんには効きやすいとされている療法です。原則、「0」~「Ⅱ」期の早期がんと乳房温存術後に必要とされます。術後に行うことで再発リスクは約3分の1になるとされ、術後の再発予防に有効です。そのほか、乳房切除術でも再発リスクが高い時や、再発時に痛みや神経症状がある時に行われます。1回当たりにかかる時間は数分程度ですが、週5回の照射を5~6週間ほど継続して行うのが一般的です。

 人によっては放射線療法による副作用があります。多くは照射部分に現れ、日焼けしたような赤みが出ますが、かいたりこすったりしないようにしましょう。治療終了後1~2週間で自然と治ることがほとんどです。

・薬物療法

 薬物療法には「内分泌(ホルモン)療法」「化学療法(抗がん剤)」「分子標的治療」があります。手術前にしこりを小さくする目的や、ほかの療法の補助的に使用される治療法です。「0」期の非浸潤がん以外ほとんどのがんで行われ、使用する薬剤はがん細胞の性質(サブタイプ)に合わせて選ばれます。がん細胞が何によって増殖するか、増えるスピードは速いか遅いかなどを基準に分けたものがサブタイプです。

薬物療法で使用する薬剤は、がん細胞の性質(サブタイプ)に合わせて選ばれる

・内分泌(ホルモン)療法

 乳がん細胞は女性ホルモンであるエストロゲンをエサにして増殖します。そのため、原因となるエストロゲンの産生を抑えたり、エストロゲンによる作用を阻害したりするのがこの内分泌(ホルモン)療法です。

 ホルモンが作られる場所は閉経の前か後かによって異なるため、閉経の前後を基準に使用する薬は変わります。月経のある期間は「抗エストロゲン剤」「LH-RHアゴニスト製剤」、閉経したら「アロマターゼ阻害薬」に切り替えるのが一般的です。エストロゲンの作用を阻害する「抗エストロゲン薬」は月経の有無を問わず使用できます。5年間(あるいは5年以上)の服用が必要となる、長期にわたる治療です。

 副作用として更年期のような症状や気分の落ち込み、骨や関節などの異常が現れることがあります。主なものは以下の通りです。

・ほてり(ホットフラッシュ)
・のぼせ
・多汗
・腟の乾燥
・イライラ
・頭痛
・不正出血
・こわばり
・骨密度の低下

・化学療法

 いわゆる「抗がん剤治療」のことです。がん細胞に直接働きかけ、がん細胞が増えるのを阻害し、死滅させます。術後だけでなく手術前にも検討され、ルミナルA以外のタイプでは必ず行われる治療法です。

 多くは複数の薬剤を組み合わせて服用する「多剤併用療法」となります。薬によって起こる副作用も違うため、希望があれば主治医に相談するとよいでしょう。薬の量や投与期間、タイミングは薬によって異なります。

 化学療法はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも作用するため、副作用が強く出ることがあります。よく知られている脱毛のほか、以下のような症状が現れます。

・吐き気
・食欲の減退
・貧血や出血
・発熱
・胃腸の不調(胃痛、胃もたれ、下痢、便秘など)
・味覚障害

・分子標的治療

 がん細胞を増殖させる原因となる「特定因子」に働きかけます。化学療法と異なり、狙った悪い物質のみを狙って作用するため、比較的副作用が少なく、高い効果が期待できる治療法です。がん細胞の増殖の指令を受け取る「HER2タンパク」を狙って、指令をブロックする「抗HER2療法」が主流となります。 副作用はあまりないとされますが、中には寒気や発熱などが出ることもあります。

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富永祐司(とみなが・ゆうじ)

ベルーガクリニック院長

医学博士。2006年に乳腺外科ベルーガクリニックを東京都板橋区に開設し、乳腺診断の専門家としてこの10年間に約1500件の乳がんを診断。乳腺診断では乳腺界でも有名で、テレビ等数々のメディアに出演。ベルーガクリニック(〒174-0046 東京都板橋区蓮根3-14-1 第2カネヨビル2F、03-5916-0114、http://www.beluga-cl.com/)。

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