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「無性にコーヒーが飲みたい…」 実は鉄分不足が原因? 疲労増&集中力低下も

コーヒーを無性に飲みたくなるのはなぜなのでしょうか。考えられる原因について、消化器外科医に聞きました。

コーヒーを無性に飲みたくなる原因は?
コーヒーを無性に飲みたくなる原因は?

 起床時や仕事中などにコーヒーを飲みたくなることはありませんか。適度に飲む分には問題ありませんが、1日に何杯も飲むとカフェインの過剰摂取につながり、体にさまざまな影響を及ぼすといわれています。

 そもそも、コーヒーを無性に飲みたくなることがあるのはなぜなのでしょうか。体内の栄養素が不足している可能性はあるのでしょうか。大阪うめだ鼠径(そけい)ヘルニアMIDSクリニック(大阪市北区)院長で、消化器外科医の田村卓也さんに聞きました。

鉄分不足で疲労の原因に

Q.起床時や仕事中にコーヒーが無性に飲みたくなることがありますが、どのような原因が考えられるのでしょうか。

田村さん「主な要因として、次の3点が考えられます」

(1)カフェインの離脱症状
コーヒーの習慣的な摂取により、体がカフェインに依存している可能性があります。この場合、血中カフェイン濃度が低下すると、頭痛やだるさを感じるようになり、これらの症状を解消するために無意識のうちにコーヒーを求めるのです。

(2)生理的・心理的なストレス反応
疲労やストレスが原因で、ストレスホルモンの一種である「コルチゾール」が上昇することがあるほか、エネルギーが低下することがあります。その際にエネルギー低下を補うための生理的な欲求でコーヒーが飲みたくなると考えられます。また、仕事のプレッシャーが上昇したときや集中力が低下したときにコーヒーを求めることがあります。

(3)習慣化された行動パターン
起床時や仕事の区切りなど、特定の状況になったときにコーヒーを飲むことが習慣化されている可能性があります。この場合、心理的な依存が形成されている可能性が考えられます。

コーヒーが飲みたくなる現象は生理的な要因や心理的な要因、習慣的な要因が複雑に絡み合っています。特に注目すべきは、単なるカフェイン依存だけでなく、ストレスへの対処や習慣化された行動パターンが大きく影響している点です。これは現代社会特有の働き方や生活リズムとも密接に関連しています。

Q.コーヒーが無性に飲みたくなる場合、体の栄養素が不足している可能性はあるのでしょうか。

田村さん「カフェインと栄養素の不足は強い関連性が考えられます。注目すべきは、コーヒーの摂取が栄養素不足を補うのではなく、むしろ悪化させる可能性があるという点です。カフェインには鉄分の吸収を阻害する働きがあるほか、利尿作用により体内のマグネシウムを減少させてしまうことがあります。

コーヒーによる鉄分の吸収阻害は、主にコーヒーに含まれるポリフェノール類、特にタンニン酸とクロロゲン酸によって引き起こされます。これらの成分は、体内で複数のメカニズムを通じて鉄分の吸収を妨げます。

最も重要なのは、タンニン酸やクロロゲン酸が鉄イオンと結合し、不溶性の複合体を形成する、いわゆる「キレート作用」による阻害です。この複合体は、腸での吸収が困難となります。

また、カフェインの摂取後、消化管内では小腸粘膜での鉄吸収タンパク質の機能抑制や、pH変化による鉄の形態変化なども起こります。特に注目すべきなのは、植物性食品に含まれる非ヘム鉄への影響です。非ヘム鉄はカフェインの影響で吸収率が通常時の40~50%に低下する可能性があり、普段、肉や魚介類を食べない人は特に注意が必要です。

摂取のタイミングも重要な要因となります。食事と同時もしくは食事直後のコーヒーの摂取は特に影響が大きく、食事の1時間前後の摂取でも影響が見られます。また、コーヒーの成分が濃いほど阻害効果は強くなり、1日3杯以上の摂取で顕著な影響が現れます。

鉄分が不足すると疲労感が出たり、集中力が低下したりするようになります。その際、カフェインによる一時的な覚醒効果でこれらの症状を解消しようとし、コーヒーをつい飲み過ぎてしまいます。その結果、鉄分の吸収がさらに阻害されるという悪循環が生じます。

先述のように、カフェインの利尿作用が原因で、マグネシウムが不足することがあります。カフェインは腎臓でのマグネシウムの再吸収を抑制し、1杯のコーヒーで約4~5ミリグラムのマグネシウムが失われる可能性があります。さらに、コーヒーに含まれるポリフェノール類が消化管でのマグネシウムの吸収を阻害します。

マグネシウムが不足すると、体にさまざまな影響を及ぼします。例えば、エネルギー代謝の低下や神経伝達物質の機能低下、筋肉の調節障害などが起こり、慢性的な疲労感やイライラ、睡眠障害といった症状につながります。疲労感が原因でコーヒーを飲んでしまい、さらに悪化するという悪循環につながるのです。これらの症状を防ぐには、次のような方法が推奨されます」

・鉄分を含む食事の2時間前後はコーヒーの摂取を避ける。

・1日のコーヒーの摂取を2~3杯までに制限する。

・ビタミンCや動物性タンパク質を摂取し、鉄分の吸収を促進。

・ナッツ類や緑黄色野菜、全粒穀物、豆類といったマグネシウムが豊富な食品を積極的に摂取する。

特に注意が必要なのは、妊婦や授乳中の女性、月経のある女性、貧血傾向にある人、ベジタリアン・ビーガン、高齢者、激しい運動をする人、ストレス過多の環境にいる人です。これらの知識を生かし、コーヒーと栄養素の適切なバランスを取ることで、より健康的な生活を送ることができます。

【画像】「えっ…!」これがコーヒーが無性に飲みたくなる“原因”です

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田村卓也(たむら・たくや)

大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック院長、消化器外科医

医師である父の影響を受け、幼少期から医療の道を志す。特に外科医として直接、人命を救うことに強い憧れを持ち、医学の道を歩む。現在は大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック(大阪市北区)の院長として、最新の腹腔鏡手術技術を駆使し、従来は入院が必要だった手術を日帰りで提供している。「患者様のニーズに応えること」をスローガンに、特に働く世代の方々の時間的負担を軽減する医療サービスを心掛け、地域医療に貢献。患者からの「ありがとう」の言葉を励みに、日々信頼される医療の提供に尽力している。日本外科学会認定外科専門医、JATEC(日本外傷診療研究機構)コース修了、日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸)。大阪うめだ鼠径ヘルニアMIDSクリニック(https://misc-sokei.com/)。

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