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子ども狙った犯罪は減少も、誘拐は横ばい…自分を守る力が身につく「防犯教育」とは?

下校途中の連れ去り事件が後を絶ちません。子どもが自分を守る力をつけるために、親はどのような「防犯教育」をすべきなのでしょうか。

子どもの防犯意識、どう育てる?
子どもの防犯意識、どう育てる?

 警察庁によると、全国で昨年1年間に13歳未満の子どもが略取誘拐された事件は72件でした。子どもが狙われた犯罪の件数は減少する一方、略取誘拐に関しては、2007年の82件以降、60件台から100件台の間をほぼ横ばいで推移しています。子どもの被害は、下校時や帰宅後、1人で外出する時間(午後3~6時)に集中しており、子どもが自分の身を守るための教育が求められています。

 新学期が始まったばかりのこの時期、親が子どもに対して取り組むべき「防犯教育」とは、どのようなものでしょうか。20年間にわたって学習塾を経営し、著書に「1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ」(日本実業出版社)などがある、子育て本著者・講演家の立石美津子さんが解説します。

「知らない人」はあいまい

 下校中の子どもの連れ去り事件が後を絶ちません。既存の防犯ボランティアの高齢化や共働き家庭の増加などにより、今の親世代が育った時代より、「子どもを見守る地域の目」が少なくなっています。子どもが犯罪に巻き込まれないためには、子ども自身で身を守ることができるような「危機回避能力」を育てる必要があります。

 子ども自身に防犯意識を持たせるため、よく聞かれるのが「知らない人に付いていってはいけません」というフレーズです。実際、日頃からそのように子どもに教えている保護者の方は多いのではないでしょうか。しかし、この教えは防犯教育として十分とは言えません。子どもにとって、どこまでが「知っている人」でどこからが「知らない人」なのか、一人でとっさに判断するのは容易ではないからです。

 例えば、親にとっては「見知らぬ男性」でも、子どもにとっては「通学路でよく見かけるおじさん」であるケースは少なくありません。「ちょっと待っていてね」の「ちょっと」が1分なのか5分なのか子どもには判断がつかないのと同様、「知らない人に付いていくな」という教えも、子どもにとっては非常にあいまいな指示なのです。

 また、連れ去り事件は顔見知りの間柄で発生することもあります。どんなに親から注意を受けていても、近所でよく顔を合わせるおじさんやおばさんなどに「車に乗りなさい」「道を教えて」「君のママがケガをしたから、一緒に病院に行こう」などと言われたら、ついて行ってしまう可能性もあるでしょう。2017年3月に千葉県で小学3年生の女児が誘拐・殺害された事件で、元保護者会会長の男性が逮捕されたのは記憶に新しいところです。

 子どもには、「○○ちゃんのママ、幼稚園の○○先生、おじいちゃん、おばあちゃんではない人から『車に乗りなさい』と言われても絶対に乗ってはいけないよ」などと、できるだけ具体的に説明してください。親が日頃から親しくしている人でない限り、「知っている人」には入らないこと、あいさつを交わす程度の間柄では「親しい人」とは言えないことなど、大人にとっては当然と思うようなことも、細かく教えることが重要です。

 できることなら「親しくない人はまず疑いなさい」というしつけはしたくないものですが、最悪の事態を招かないためにも、こうした危機意識は不可欠だと思います。

親子で「実践練習」を

 大切なのは、言って聞かせるだけではなく、実際に予行演習を行うこと。避難訓練と同様、日頃から練習をしておかなければ、いざ危険な場面に遭遇した際、大人でさえ恐怖や緊張で思うように体が動かないものです。実際に大声を出したり、防犯ブザーを鳴らしたりと、親子で“実践”する機会を定期的に持ち、いざという時に備えておくとよいでしょう。

 また、通学路に危険な場所がないか、危険な時に助けてくれる場所(交番、コンビニ、「こども110番」の家など)がどこにあるか確認してください。新学期が始まったばかりの今、改めて親子で一緒に通学路を歩いて、確認するとよいでしょう。

 子どもが成長していくにつれ、親の目を常に行き届かせるのは難しくなっていくものです。だからこそ、成長に応じた防犯意識や危機意識を身に付けさせるのは非常に重要です。いざという時、子どもが自身を守る行動ができるよう、日頃から家庭内でしっかりとコミュニケーションを取り、防犯意識の重要性を伝えていくことが求められます。

(文/構成・ライフスタイルチーム)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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