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「かさぶた」がかゆいから剥がしちゃおう→形成外科医「ダメです」 理由も詳しく聞いてみた

気付けばできている「かさぶた」。徐々にかゆみを感じてくることがありますが、「もう剥がしてもいい」サインと捉える人もいる模様。実際はどうなのか、形成外科医に聞いてみると……。

かさぶたがかゆい…剥がしてもいい?
かさぶたがかゆい…剥がしてもいい?

 擦り傷や切り傷をそのままにしていると、いつの間にかできている「かさぶた」。自然に剥がれるまでは触らない方がいいといわれますが、かさぶたの部分にかゆみを感じて、つい剥がそうとしてしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。中には「かゆくなったら、もう剥がしてもいい」と考えている人もいるようです。

 実際のところ、かさぶたが「かゆい!」と感じたら、剥がしてしまってもよいものなのでしょうか。にっしん皮フ科・形成外科(さいたま市北区)院長で、皮膚科・形成外科臨床医の平岩亮一さんに聞きました。

かゆみは“かさぶたの完成”を知らせるサイン

Q.そもそも「かさぶた」とは何ですか。

平岩さん「かさぶたは、医学用語で『痂皮(かひ)』といいます。血液内の血球成分(主に赤血球)と、出血により生じる『フィブリン』という血液凝固因子(糖たんぱく質)の最終産物が結合したもので、外傷面を被覆し、浅いケガや傷の回復過程で皮膚の表皮を完成させるための前段階となる『創傷治癒過程』の一つです。

かさぶたを作ることで、傷の回復期に細菌の繁殖や異物が混入して創傷治癒が長引くのを防ぐ、いわば防御システムです」

Q.かさぶたや、その周辺がかゆくなることがあるのはなぜですか。

平岩さん「かさぶたができた直後は揺さぶると痛みが出ますが、できてから日がたち、安定すると、傷の炎症反応が軽減します。これにより、皮膚の感覚受容器の刺激が減少して、『痛み』から『かゆみ』に変わります。つまり、“かさぶたの完成”をお知らせするサインが『かゆみ』なのです」

Q.「かさぶたがかゆくてたまらない=もう自力でかさぶたを剥がしてもいいサイン」と捉える人もいるようです。これは正しいといえますか。

平岩さん「正しいとはいえないので、剥がしてはダメです。これをやってしまうと、多くは『痛み』刺激と再出血により再度炎症が起こり、傷跡やケロイド、細菌感染の確率を上げてしまうと思っていただくとよいでしょう。分かりやすい言葉で言うと、『かさぶたを剥がしてもよい』サインではなく、『皮膚が完成するから、もう少しだけ待ってね』のサインです」

Q.かさぶたのかゆみをどうしても我慢できないとき、どうすればいいですか。

平岩さん「かゆみは止められませんが、かゆみが出た場合は、かさぶたの上を軽く押してあげましょう。痛覚の神経刺激が増強し、かゆみが和らぐ場合があります。かさぶたのかゆみの出現期間は、約3~4日間です。ちゃんとゴールがあるのでご安心ください。剥がしたり、爪でえぐったりしてしまうと、傷跡、ケロイド、患部の腫れと細菌感染による化膿のほか、脂漏性角化症(老人性いぼ)や尋常性疣贅(ウイルス性いぼ)、スキンタッグ(皮膚の出っ張り)といった『いぼ』などの引き金となる場合があるので、注意が必要です」

(オトナンサー編集部)

【閲覧注意】「えっ…無理やり剥がすとこんなことに…!?」 これが“自力で”剥がしてしまった「かさぶた」と「傷口」です(画像12枚)

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平岩亮一(ひらいわ・りょういち)

医師(皮膚科、形成外科、美容皮膚科)

医療法人社団日進会院長・理事長。1995年、埼玉医科大学医学部卒業。埼玉医科大学病院、東京医科歯科大学病院、佐久国保浅間総合病院、東京医療生活協同組合新渡戸記念中野総合病院、池袋サンシャイン美容外科勤務を経て、2017年、医療法人社団日進会開設、にっしん皮フ科・形成外科開業。「患者さまが今お困りのことは何か?」を第一に、「早くきれいに治り、時間を割いてでも来院して良かった」と思っていただけるよう努めている。専門分野は創傷治癒・未病治療(病気の発症にいたる過程をいかに治せるか)。にっしん皮フ科・形成外科(https://nishicli.jp/)、YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@user-wi1br1su5t/featured)。

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