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「子どもの小学校入学が不安」 悩める保護者に自閉症児の母が出した“処方箋”

知的障害がある自閉症の息子を育てる女性ライターが、来年に小学校入学を控える子どもがいる家庭に向け、準備すべきことをアドバイスしています。

息子が小学校でやっていけるか不安に感じている母親(べっこうあめアマミさん作)
息子が小学校でやっていけるか不安に感じている母親(べっこうあめアマミさん作)

 ライター、イラストレーターとして活動するべっこうあめアマミさんは、知的障害を伴う自閉症がある9歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の5歳の娘を育てながら、発達障害や障害児育児に関する記事を執筆しています。

 新学期を迎えてから2カ月が過ぎ、進級によるバタバタも落ち着いてきた頃合いだと思います。来年度や再来年度、小学生になるお子さんを育てている人の中には、わが子の就学後の生活について、不安を感じている人も多いのではないでしょうか。アマミさんによると、その場合は学校見学がお勧めだといいます。

 今回は、来年に小学校入学を控える子どもがいる家庭に向け、アマミさんが準備すべきことをアドバイスします。

「幼児期」から「学齢期」への移行に不安

「小学校への入学」というのは、子どもにとっても親にとっても、非常に大きな区切りのタイミングです。「幼児期」と呼ばれていた幼稚園、保育園時代から、「学齢期」に入るのです。少しずつ親の手を離れ、求められることも一気に多くなるでしょう。

 そんな、幼児期と学齢期のはざまにいる年長のお子さんを持つ親御さんは、「来年からうちの子、ちゃんとやっていけるのだろうか」という不安を多く抱えているのではないでしょうか。

 私も年長の娘を育てていますが、不安でいっぱいです。小学校入学に向けて、タブレット学習でひらがなや数字を学ばせてみたり、水泳教室に通わせてみたり、娘と一緒に学区の小学校の近くを通ってみたりなど、今のうちにできる準備はないかと、あれこれ考えています。

入学前に支援の必要性を考えてみよう

 さて、多くの親御さんは、小学校への入学というと、自分もそうだったように「普通級」への入学と考える場合が多いでしょう。

 しかし、発達に何らかの不安を抱えているお子さんの場合は、普通級以外にも「支援級」「通級」といった特別支援教育のほか、特別支援学校という選択肢もあります。

 私の息子は自閉症と知的障害があり、特別支援学校に通っていますが、やはり入学前は進路について非常に悩みました。結局、息子は特別支援学校に通っていますが、手厚い支援の中で満足した学校生活を送っています。

 しかし、特別支援学校はもちろんのこと、支援級、通級といった特別な支援を受けるためには、入学前に市区町村の教育委員会が行う「就学相談」を受けなくてはなりません。就学相談では、各分野の専門家がそれぞれの子どもに最も適した就学先を検討してくれます。

 就学相談の結果、必要があれば、支援級といって、特別な支援を受けながら学べる少人数のクラスに所属することができたり、通級といって、普通級に在籍しながら、ときどき授業を抜けて個別に指導を受ける支援を受けられたりするようになるかもしれません。今は昔に比べ、このような特別な支援を受けながら学ぶ子どもが多くなっています。

 何の支援もなく普通級に入ってしまうと、発達に特に問題のない子どもたちとまったく同じ土俵で学んでいかなければなりません。そのため、発達に課題がある子にとっては、想像以上に厳しい状況に陥ってしまう可能性があります。

 少しでも子どもの発達に不安があるようであれば、このような支援も検討してみてもよいのではないでしょうか。

学校見学で不安を解消

「普通級以外の選択肢」といっても、自分が経験してきた普通級以外の学びの場がどんなものか、なかなかピンとこない親御さんも多いと思います。

 そして、「普通」を外れてしまうことに何となく抵抗がある人も多いでしょう。そもそも、今の学校の「普通級」がどのくらいのレベルなのか、よく分からない場合もありますよね。私もよく分かりませんでした。

 そんな親御さんには、ぜひ「学校見学」に行ってみることをお勧めします。私も息子の就学前に、小学校の支援級と普通級で計4校のほか、特別支援学校1校を見学しました。すると、学校見学に行く前と行った後とで、子どもの学びの場についての印象が驚くほど変わったのです。

 私がまず見て思ったのは、普通級と支援級の予想以上のレベルの高さです。普通級は1年生であっても、基本的に子どもたちは自分で何でもできる様子でしたし、支援級といっても、先生が手取り足取り教えているわけではなく、そのクラスに在籍する子たちは、ある程度、集団活動ができるレベルだと思いました。特に支援級においては、学校によってレベルや雰囲気の差が大きかったのも印象的でした。

 ちなみに特別支援学校は、一般的な小学校とは大きく異なります。非常に手厚く、それぞれのお子さんの障害特性に合わせて個別に指導している様子でした。

 私もそうだったのですが、実際にそれぞれのクラスに属している子どもたちを見ることで、自分の子どもがどの場にいるのが最もしっくりくるか、実感できると思います。

「普通級では難しそう…支援級かな?」という場合だけでなく、「普通級のレベルがこのくらいなら、うちの子も大丈夫そう!」と思えるかもしれません。学校見学に行くことで、不安が解消されることは多いのではないでしょうか。

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べっこうあめアマミ(べっこうあめあまみ)

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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