オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「ハイヒール」履くと脚が長く見える…理由は? 心理学者が明かす“トリック”

脚の長さを勘違いする仕組みとは?

図3:脚の長さを勘違いする仕組み
図3:脚の長さを勘違いする仕組み

 認知的なすねが延長されると、もう1つの勘違いが発生します。図3を見てください。私たちは経験から「すねとももの長さはだいたい同じ」ということを知っています(5)。この知識は、ももの上端(胴と脚の境目)がどのあたりかを推定する手がかりとして使われます。

 (5)に従って全身を見た人の脳は、長いと思い込んだすねと同じ長さのももが膝の上にあると思い込み、その上端あたりが胴と脚の境目だと認知するのです。

 すねの延長量は、個人の脚の大きさやヒールの高さ、ハイヒールのデザインなどによって異なりますが、仮にすねの長さを通常よりも10センチ長く認知させることができれば、相手はももの長さも10センチ長く認知するため、その結果、脚の長さを20センチも長く見せることができます(ついでに、ももの延長分だけ胴を短く見せることもできます)。身長の10%以上も脚を長く見せ、胴も短く見せられるわけですから、スタイルの印象が大きく変わります。

 つまりハイヒールを履いたらスタイルがよく見えるのは、私たちの脳が、経験や知識によって勘違いするからです。もし脳にこのような特性がなく、見たものをありのままに捉えていたら、ハイヒールを履いた人は「スタイルの良い人」ではなく「ちょっと変わった形の靴を履いた普通のスタイルの人」に見えてしまうのです。

 こういった脳のおっちょこちょいな特性は、エラーや情報伝達の失敗の原因になるため、安全やコミュニケーションの分野ではちょっとした厄介者として扱われています。しかし、ファッションの分野では、私たちを実態よりもすてきに見せてくれる、ありがたい特性なのかもしれません。

 このような脳の勘違いがおしゃれに利用されている例は、ハイヒールに限らず、衣類の形や色のほか、髪形やヘアカラー、メーク、ネイル、アクセサリー、写真を撮るときのアングル・背景など、周囲の至るところにあります。ぜひ日常生活の身の回りにあるものを観察し、脳の不思議な働きについて、考えてみましょう。

(近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢)

1 2

島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

島崎敢(しまざき・かん) 関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ライフ 最新記事

ライフの記事もっと見る

コメント