オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「事実婚」と法律婚は何が違うのか そのメリットや子どもの法的な扱いは? 弁護士に聞く

「事実婚」への関心が高まっています。事実婚の法的扱いや法律婚との違いについて、弁護士に聞きました。

事実婚と法律婚の違いとは?
事実婚と法律婚の違いとは?

「事実婚」について先日、ネット上などで話題になりました。晩婚化やライフスタイルの変化を背景に、事実婚への関心が高まっており、「子どもが生まれたらどうなるの?」「同棲とはどう違うんだろう」「もし別れてもバツはつかないのかな」「デメリットが知りたい」など、さまざまなコメントが寄せられています。

 オトナンサー編集部では、事実婚の法的扱いや法律婚との違いについて、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

財産の相続権や減税がない

Q.そもそも、事実婚とは何ですか。「内縁」や「同棲」とはどう違うのでしょうか。

牧野さん「当事者間の主体的・意図的な選択によって、婚姻届を出さないまま夫婦関係を成立させようとする合意の下、同居して共同生活を営む場合を指します。『内縁』は裁判所の判決文で用いられており、事実婚と同じ意味で使用されることが多いです。『同棲』は必ずしも夫婦として暮らすとは限らないため、事実婚とは異なります」

Q.事実婚と、婚姻届を出す法律婚は何が違うのでしょうか。

牧野さん「事実婚の場合、お互いに死亡した際に財産の相続権がありません。相手に財産を残したい場合は、遺言を残す必要があります。夫婦間の相続で享受できる減税のメリット(例えば基礎控除)がありません。

また、配偶者との家族関係を証明しにくいので、▽家族の手術のサインができない▽生命保険の受取人や住宅ローンの連帯保証人になりにくい▽事故時などの保険金の請求は法律上の親族に限られるため事実婚では難しい▽法律婚では取得できる配偶者の戸籍抄本の取り寄せができないなど、法律婚と比べて日常生活に支障をきたす場合があります」

Q.事実婚の夫婦に子どもが生まれた場合、法的にはどのように扱われますか。

牧野さん「2人の間に子どもがいる場合、法律婚では当然に与えられる共同親権が持てず、どちらかしか親権を持てません。また、子を認知すれば親子関係が戸籍上記載されますが、子の立場として『非嫡出子』と記載されることになります」

Q.事実婚を解消する場合はどうなるのでしょうか。

牧野さん「事実婚の解消に特定の手続きは必要ありませんが、事実上、その関係(同居・共同生活など)を解消することが必要です。

判例上、内縁は『婚姻関係に準ずる関係』と認められているので、内縁関係を解消する時は、婚姻を解消する場合と同じように、夫婦として共同生活していた期間に一緒に築いた共同財産を清算する財産分与が認められています。内縁の一方的解消についても、離婚の場合に準じて考えられ、財産分与や慰謝料請求などが認められます。養育費も父親として認知して親子関係が認められれば支払い義務があります。

ただし、内縁関係解消の際の財産分与や慰謝料の支払いに対しては、法律婚では課されない贈与税が発生します」

Q.その他、事実婚のメリット/デメリットはありますか。

牧野さん「婚姻届を出すと夫婦のどちらかが世帯主となり、他方が相手の戸籍に入らなければなりませんが、事実婚の場合はそれがありません。戸籍はそのままなので、もし事実婚を解消しても戸籍上は離婚の記録がされないなどのメリットがあります。

他方、日本の制度は法律婚を前提としているので、事実婚の場合には、税金の配偶者控除が受けられなかったり、医療費控除の夫婦合算ができなかったり、厚生年金で配偶者の扱いが受けられないなどのデメリットがあります」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント