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作文1枚5000円…「宿題代行サービス」が人気を集める背景、そして子どもへの影響は?

代行利用の最も懸念すべき点とは?

 宿題代行のデメリットは、子ども本人が“人をだます”経験をしてしまうことです。

 宿題代行サービスは「大人が代わりに宿題をやった」ことを察知されないように、依頼主の子どもの筆跡にできるだけ近づけたり、あえて誤答を混ぜたりするなど「先生をだますためのあらゆる工夫」を凝らしています。

 しかし、代わりにやってもらった宿題について、子どもは「自分がやったものではない」意識を確実に持っています。新学期になり、自分でやっていない夏休みの宿題を提出する時、どんなに平然とした顔を繕っていたとしても、きっと心臓はバクバクしているでしょう。

 そして、先生が気付かずにそのまま宿題を受け取ったら、「うまくだませた」「バレなければいい」と思うようになります。こうした経験を幼い我が子にさせてよいのでしょうか。

 たとえ、先生をだますことができても、子どもの心をだますことはできません。宿題代行を利用している、または、利用しようとしている親には、始業式の日に学校へ宿題を提出する子どもがどのような気持ちでいるかを想像してほしいと思います。

子どもの計画性と責任感を養う機会

 では、夏休みの宿題にはどのように向き合い、取り組むべきなのでしょうか。

 結局のところは、計画的に進めるしかありません。子ども自身のスケジュール管理の力を養うことも、長期休暇に出される宿題の大切な目的の一つです。そのためには、日頃から親が過保護・過干渉にならず、片付けや身の回りのことなど「自分のことは自分でする」習慣を付けさせましょう。

 同時に「失敗体験」を通じて「自己責任」を意識させることも大切です。もし、子どもが夏休みの宿題を計画的に進めず、提出日までに終えることができなかった場合、その責任を親が取る必要はありません。夏休み最終日に徹夜で宿題をやって大変な思いをしたり、自由研究を提出できずクラスメイトの前で恥ずかしい思いをしたり……どんなに計画性のない子でも、こうした体験をすれば「次は失敗しないように気を付けよう」と反省します。

 まれに、計画的に取り組んでも終わらないくらい、大量の宿題を出す担任もいるようです。その場合、「宿題の量が多過ぎます。だから、できませんでした」とはっきり先生に伝え、後は子どもと先生に任せましょう。代行業者にお金を払って他人をだますよりもずっと良い解決法だと思います。

 子どもが困らないように親が先回りしたり、必要以上に手を貸したりすることは、自立の芽を摘むことにつながりかねません。「自分のことは自分で、計画性を持って行動する」ことの大切さを教え、習慣付けていくことが、子どもを成長させていくのだと思います。

(文/構成・ライフスタイルチーム)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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