ウサギは「飼育が難しい」って本当? 獣医師に聞いて分かった“必要な心構え”
神奈川県の山中で「ウサギ」が遺棄されたニュースを受け、SNSでは「ウサギの飼育」に関するコメントも上がっています。飼育の難易度について、獣医師に聞いてみました。
2月下旬、神奈川県逗子市の山中で、ウサギ約30羽が保護されたという報道がありました。警察は、何者かがウサギを遺棄したものとみて捜査を進めているということです。保護されたウサギについては、種類が「ネザーランドドワーフ」の雑種とみられること、また「野ウサギではなく、飼われていたウサギである可能性が高い」ことも報じられ、SNSではウサギの今後を案じる声が上がっていましたが、3月15日、神奈川県動物愛護センター(平塚市)がホームページへの掲載などを通じ、一般への無償譲渡の受付を開始したと報道されています。
SNSでは「繁殖力がすごいんだよね」「ウサギは予想以上に手がかかるって聞いた」など、ウサギの飼育に関するコメントも見受けられますが、実際のところ、ウサギの飼育における“難易度”はどのくらいといえるのでしょうか。ますだ動物クリニック(静岡県島田市)院長で獣医師の増田国充さんに聞きました。
寿命はおよそ7~8年
Q.まず、ウサギについて教えてください。
増田さん「ウサギは、兎形目(とけいもく)ウサギ科ウサギ亜科に属します。ウサギといえば、その大きな耳が特徴的です。広い範囲の聞き分けや、その大きな耳を通じて体温調節にも関与しているといわれます。草食動物で、牧草の『チモシー』をはじめとした草を主食としています。
草から栄養を得るために、身体に独自の特徴を持っていますが、代表的なものは歯です。ウサギは『門歯(もんし)』と呼ばれる前歯が時折、顔からのぞきます。犬や猫に存在する『犬歯(けんし)』(いわゆる牙)がありません。『臼歯(きゅうし)』(奥歯)で草をしっかりすりつぶすため、石臼のような機能を持ちます。歯は生涯伸び続けますが、食事によって適切に摩耗します。
また、犬や猫と比べて消化器の全長が長く、コロコロとした丸いウンチを排せつします。一般に、早朝に『食ふん』する特徴があり、『盲腸便』という形のない便を摂取して栄養バランスを整えています。足の裏には肉球がなく、毛がたくさん生えているのが特徴です。
日本では『ネザーランドドワーフ』(約1キロ)や『ロップイヤー』(約2キロ)、『日本白色種』(4キロ)、大きい品種だと『フレミッシュジャイアント』(10キロ)になるものもいます。
なお、ウサギの寿命はおよそ7~8年とされています。猫と同様、交尾による刺激によって排卵します」
Q.ウサギは「飼育するのが難しい」「かなり手がかかる」という声が多いようですが、実際のところはどうなのでしょうか。
増田さん「ウサギの特性をきちんと理解することが重要だと思います。ウサギは『寂しいと死んでしまう』といわれますが、実際にはそうではありません。ウサギはそもそも、自然界では草食動物で“捕食される側”の立場です。そのため、外部の強い刺激を嫌い、巣穴に隠れることもあります。
また、体調不良を起こしても目に見える変化が起こりづらいという特徴があります。これに気付くのが難しいことがあり、その結果、命を落としてしまった……ということが転じて、このような風説が立ったのではないかと思います。
犬や猫とは解剖学的な構造や食性、行動など異なるところが多いため、それと同じ感覚で家に迎え入れると手がかかると思うところがあるかもしれませんが、散歩の負担や鳴き声のトラブルなどは生じないため、それが飼いやすさとして感じる人もいるでしょう。一方で人間に、ウサギそのものや、チモシーなどのアレルギーが生じることがあります」
Q.「ウサギを飼いたい」と考えている人に、獣医師の立場から伝えたいこととは。
増田さん「先述したように、ウサギは比較的飼いやすいとはいわれているものの、病気の早期発見が難しい一面を持っています。ウサギの診療で多く見かけるものは、消化器のトラブル、歯のトラブル、皮膚のトラブル、泌尿器のトラブル、骨折などです。
ウサギの食欲が低下、あるいは全く食べない場合は、何日も様子を見ることは避けましょう。ウサギは『毛球症』や、胃内にガスがたまることによって食欲が減退するケースがよくみられます。電気コードなどをかじるトラブルも時折みられます。また、歯のかみ合わせが悪くなることもよくあるため、食事の量が減っていたり、食べ方に変化があったりした場合は、歯の問題が生じている可能性があるかもしれません。
ウサギは跳躍力がありますが、それを支える骨は少々もろいため、骨折のリスクが高めです。落としたり、不適切な抱っこをしたりしないように注意しましょう。
不調が現れにくいため、日頃の健康チェックをして、ウサギを診療対象としている動物病院で検診を受けることをおすすめします」
(オトナンサー編集部)
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