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ずるい! 幹事が職場の送別会で「クレカ」払い&ポイント独り占め もしかして違法? 弁護士に聞いてみた

飲食店で職場の上司や同僚の送別会を開催したときに、幹事が自分のクレジットカードで飲食費を支払い、費用に対して付与されるポイントを得た場合、法的に問題となる可能性はあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

職場の送別会で自分のクレジットカードで飲食費を支払い、ポイントを独り占めにした場合、法的責任を問われる?
職場の送別会で自分のクレジットカードで飲食費を支払い、ポイントを独り占めにした場合、法的責任を問われる?

 3月は送別会のシーズンです。飲食店で職場の上司や同僚の送別会を開催したときは、幹事の人が参加者から費用を集めた上で店に料金を支払うのが一般的です。ただ、中には参加者から集めた現金ではなく、自分のクレジットカードで支払いを済ませ、飲食費に対して付与されるポイントをもらう人もいるようです。

 この場合、ポイントの独り占めに該当しますが、法的に問題となる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

他人に損失を与えなければ「不当利得」に該当せず

Q.飲食店で職場の上司や同僚の送別会を開催したときに、幹事の人が自分のクレジットカードで参加者全員の飲食費を支払い、支払い金額に対するポイントを独り占めした場合、法的に問題となる可能性はあるのでしょうか。

佐藤さん「法的に問題となることは考えにくく、少なくとも何らかの罪に問われ、刑事責任を追及されることはないと思います。ポイントは利用したクレジットカードごとに異なり、利用できる場面が限定されていることもあり、現金と同視することはできないでしょう。

そのようなポイントについて、代金を支払った参加者一人一人に、ポイント相当の価値を返還することは難しく、通常、参加者も返還を求めないように思います。

幹事は、店選びや出席者の確認、代金の収集など、それなりに負担のある係であることも考えると、幹事がクレジットカードで支払い、ポイントを独り占めしたとしても、参加者はそのことについて承諾したものと見なされるケースがほとんどでしょう。

ただし、参加者に黙ってクレジットカードで支払い、ポイントを独り占めにすると、後からばれたときに、『ずるい』などと周囲の人に思われ、自身の社会的評価を下げることもあり得ます。事前にクレジットカードで支払うことを伝えておくと安心でしょう」

Q.では、送別会の会計時にポイントを独り占めした幹事の人が、別の参加者から「自分が飲食した分のポイントを返せ」と言われたとします。この場合、ポイント分の現金を返さないといけないのでしょうか。

佐藤さん「返さなくてよいと思われます。幹事は、自分が飲食費全額について経済的負担をしていないにもかかわらず、クレジットカードで支払うことによって、ポイントという利益を得ているため、参加者からポイントの返還を要求された場合、『不当利得』として返還義務があるかどうかが問題となります(民法703条)。

しかし、不当利得の返還請求が認められるためには、他人に『損失』を及ぼすことが必要です。幹事がポイントという利益を得たとしても、参加者が直接的に損失を被ったと評価することは難しく、不当利得返還請求は認められない可能性が高いでしょう。そのため、参加者が返還を強制することは困難です。

クレジットカードのポイントとは、カードの名義人とカード会社との契約に基づくものであることも踏まえると、参加者にポイント分の価値が帰属すると考えるのは難しいように思います」

Q.職場の飲み会の幹事の人が、他の人の飲食費もまとめて支払うときに店員から「ポイントを付けますか?」と言われた場合、どう対応すれば問題が起きずに済むのでしょうか。

佐藤さん「幹事の人が自分のクレジットカードで支払いたい場合には、先述の通り、事前に参加者全員にクレジットカードで支払うことのほかに、幹事特権でポイントを得ることを伝えておけば、通常は問題にならないでしょう。

ポイントの独り占めに関して不公平感を訴える参加者がいる場合には、双方が納得のいくように話し合いましょう。その結果、現金払いにするか、『今回得たポイントを次の飲み会の際に使い、その分、参加者の会費を安くします』などと利益還元を約束することによって、納得感が生まれるように思います」

(オトナンサー編集部)

佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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