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ブラザー・コーン公表で話題「男性の乳がん」…割合どれくらい? 女性との違いはある? 医師に聞く

男性デュオ「バブルガムブラザーズ」のブラザー・コーンさんが公表した「乳がん」。男性の乳がんに関する疑問について、医師に聞いてみました。

「女性のがん」のイメージが強いけど…
「女性のがん」のイメージが強いけど…

 8月29日、男性デュオ「バブルガムブラザーズ」のブラザー・コーンさん(67)が、自身のSNSで、ステージ2の乳がんであることを公表し、話題となりました。コーンさんは「寝耳に水」と驚いたことを明かし、早期発見であったことも報告。「なんとか命には別状ないと主治医から告げられております」とつづりました。また、9月14日には、11月中旬ごろに手術を受ける予定であることを明かしています。

 乳がんは「女性のがん」というイメージが強いことから、SNSなどでも「びっくり」「早期発見でよかった」など驚きの声が相次いだ一方で、「男性の乳がんって見つかりにくいの?」「男性も健康診断で見つかるのかな」など疑問の声も聞かれます。男性の乳がんに関するさまざまな疑問について、新見正則医院(東京都千代田区)で、がんや難病・難症の治療を行う新見正則院長に聞きました。

男性の乳がんは「希少がん」に分類

Q.そもそも「乳がん」とはどんな病気ですか。

新見さん「乳がんは世界でも日本でも、女性の中で最も罹患(りかん)数が多いがんです。しかし死亡率は、日本では第5位であり、これは予後が悪くないことを示しています。女性が生きている間に乳がんになる割合は、50年前には50人に1人でしたが、最近では8人に1人が罹患するほど、乳がん患者さんは急増しています。1年間で約10万人が乳がんと診断され、死亡数は約1万5000人です。

乳がんは、乳汁を作る『乳腺』に発生するがんで、栄養状態や女性ホルモンが関与する病気です。生理の回数が多いほどリスクは高くなります。つまり、『初経が早いほど』『閉経が遅いほど』『出産回数が少ないほど』『授乳期間が短いほど』などが該当します。乳がん患者数は30代後半から増え始め、40代後半にピークを迎えた後は減少しますが、また加齢とともに増加し、60代に再びピークを迎えます。

乳がんの治療は、この四半世紀に格段の進歩を遂げました。乳がんに『ホルモン感受性』があるか、『HER2(ハーツー)受容体』があるかで、治療方法が変わります。ホルモン感受性がなく、かつHER2受容体が陰性の乳がんは『トリプルネガティブ乳がん』と呼ばれ、この場合は従来型の抗がん剤が使用されます。従来型の抗がん剤はどのタイプのがんにも有効ですが、ホルモン感受性乳がんでは抗ホルモン薬での加療が優先され、HER2受容体が陽性の乳がんでは、抗HER2薬という分子標的薬の使用が優先されます。

手術は第1選択で薬物療法や放射線療法が併用されていましたが、最近は手術を行わずに薬物療法(従来型の抗がん剤、抗ホルモン薬、抗HER2薬)だけで腫瘍が消失することも少なくありません」

Q.男性の乳がんは、どのような病気なのでしょうか。

新見さん「男性にも乳首や乳輪があります。そして実は、乳腺の“痕跡”が存在します。女性のように乳腺が膨らんでいるわけではありませんが、肝硬変や甲状腺疾患、薬物服用、加齢などにより、“痕跡”となっている乳腺が発育すると『女性化乳房』という疾患になります。そんな男性の乳腺に発症するがんが、男性乳がんです。

女性の新たな乳がん患者数は年間約10万人であるのに対し、男性乳がんは約600人です。つまり乳がん患者のうち、0.5%から1%が男性ということになります。

先述したように、女性の乳がんの罹患数は世界でも、日本でも1位ですが、男性の乳がんは女性乳がんの1%以下のため、『希少がん』に分類されます。希少がんでは症例数が少なく、原因や治療に関してまだまだ不明なこと、不明瞭なことが多いのが現状です」

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新見正則(にいみ・まさのり)

医師

新見正則医院院長。1985年慶應義塾大学医学部卒業。1998年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研さんを積む。現在は新見正則医院、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。新刊「フローチャート整形外科漢方薬」はAmazonで三冠(臨床外科、整形外科、東洋医学)に輝く。最新刊は「しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通」。新見正則医院(https://niimimasanori.com/)。

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