海外旅行で「時差ボケ」に…どうやって治す? 実は「朝型」の人がなりやすいって本当? 医師に聞いてみた
海外旅行の際に悩む「時差ボケ」。症状の度合いによっては、楽しい旅行に悪影響が出てしまうことも……。時差ボケをなるべく早く治す方法を、医師に聞いてみました。

この夏、海外旅行に行く計画を立てている人も多いのではないでしょうか。楽しみな海外旅行の中で、多くの人を悩ませるのが「時差ボケ」。時差がある国に行った際、多くの人に時差ボケの症状が現れますが、その度合いによっては旅行にも悪影響を及ぼしかねません。そのため、「時差ボケを早く治す方法が知りたい」「なりやすい人っているの?」といった疑問の声も聞かれます。
海外旅行先で「時差ボケ」を早く治すためのポイントについて、循環器内科専門医で、医療法人社団正恵会(東京都豊島区)理事長の藤井崇博さんに聞きました。
「夜型の生活」をする人は時差ボケになりにくい
Q.そもそも「時差ボケ」とは何ですか。
藤井さん「いわゆる『時差ボケ』とは正式な病名ではありませんが、医学分野では『時差症候群』『時差障害』などと呼ばれることがあります。
時差ボケは、4〜5時間以上の時差がある地域に航空機で移動すると、到着後、現地の生活時間と体内時計がずれて、さまざまな一過性の心身の不調が出現することをいいます。具体的な症状としては、不眠や日中の眠気、頭痛、疲労感、頭重感、食欲不振、吐き気、イライラ感などがあります。その不調の原因は、体内時計がコントロールしている睡眠と覚醒のリズム、体温、ホルモンの分泌などがバラバラになってしまうことだと考えられています。
時差ボケによる症状は個人差が大きく、通常は渡航直後や帰国後から症状が現れて数日間で落ち着くことが多いですが、1週間程度続く人もいれば、症状がほとんど現れない人もいるといわれています。日常的に航空機移動に慣れている国際線のパイロットでも、7割近くが睡眠障害を訴えているという報告もあるほどです」
Q.時差ボケになりやすいのはどんな人ですか。
藤井さん「大きく『朝型の生活をしている人』『内向的な性格の人』『高齢の人』ほど、時差ボケになりやすいといわれています。それぞれの理由は次の通りです。
【朝型の生活をしている人】
早寝早起きが習慣化していて、活動のピークが午前中にある朝型の規則正しい生活をしている人は、体内時計が規則正しいがゆえに、生活リズムの変化に弱くなり、時差ボケになりやすいです。一方で、夜型の生活の体内時計は柔軟性が高いため、時差ボケになりにくいといわれています。
【内向的な性格の人】
体内時計の調整には人と会話をすることが大切ですが、あまり社交的でない内向的な性格の人は、この機会が少なくなるため、時差ボケが治りにくい傾向があります。
【高齢の人】
高齢の人は、長年の生活で体内時計がしっかりと染みついており、時差への適応が難しいため、時差ボケになりやすいといわれています。
その他、旅に慣れていない人や基礎疾患がある人も、時差ボケになる傾向があるとされています。また、時差ボケの程度は渡航する方角によっても異なります。日本からヨーロッパへ向かう“西向き”の移動では、体内時計を遅らせればよいので調整しやすいのですが、日本からアメリカ方面へ向かう“東向き”の移動では、体内時計の調整に時間がかかってしまうため、時差ボケになりやすいです」
Q.時差ボケをなるべく早く治すために、どんなことをすればよいですか。
藤井さん「時差ボケを治す基本は、なるべく早く体内時計を現地時間に合わせることです。ただ、2〜3日程度の短期滞在であれば、日本時間のまま現地でも行動した方が、帰国後に生活リズムを早く取り戻せます」
【出発前】
出発の1週間ほど前から、東行きフライトでは「早寝早起き」を、西行きフライトでは「遅寝遅起き」を心がけ、体内時計を現地時間に近づけるようにしましょう。
【フライト中】
飛行機内では現地時間に合わせ、現地が夜なら機内で睡眠を取るようにしてください。周りの音や光が気になる人は、機内に耳栓やアイマスクを持ち込むことも良質な睡眠を取るために必要なので、忘れずに持参しましょう。逆に、起きていたいときは、コーヒーや紅茶でカフェインを摂取したり、他の人の迷惑にならない程度に足を動かしたり、機内を歩いたりしてみましょう。足を動かすことは、エコノミー症候群の予防の観点からも大切です。
機内食は現地時間に合わせて提供されるので、少量でも食べることで胃腸のリズムが調節されやすくなり、胃腸関連の不調を予防することが可能です。また、脱水状態だと時差ボケの症状が強く出ることがあるので、機内での水分補給を忘れないようにしてください。なお、少量のアルコール摂取は寝つきをよくしてくれますが、機内での飲酒は地上に比べて酔いが早く回るので注意が必要です。
【到着後/帰国後】
夕方〜夜間に到着した場合は、現地の時間に合わせ、できるだけ早く就寝するようにしましょう。眠れないときはお風呂に入ってリラックスしたり、夕食に適量のアルコールを摂取したりすることをお勧めします。
朝方や昼間に到着した場合は、数時間程度であれば仮眠を取っても構いませんが、少々の眠気は我慢し、屋外で太陽の光を浴びるようにしてください。日光浴には、渡航によってずれた体内時計を調整して元に戻す働きがあるので、時差ボケからの回復が早くなります。
(オトナンサー編集部)
コメント