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「ヘルパンギーナ」流行 乳幼児→大人にうつる? 主な症状&対処法を医師が解説

子どもがヘルパンギーナに感染した場合、どのような症状が出るのでしょうか。また、大人が感染することはあるのでしょうか。医師に聞きました。

ヘルパンギーナに感染すると、どんな症状が出る?
ヘルパンギーナに感染すると、どんな症状が出る?

 子どもの間で「ヘルパンギーナ」と呼ばれる感染症が流行しています。SNS上では、「保育園で猛威を振るっている」「子どもがヘルパンギーナに感染した」「娘のヘルパンギーナが治らない」など、悲鳴のような意見が多く上がっています。

 子どもがヘルパンギーナに感染した場合、どのような症状が出るのでしょうか。大人が感染することはあるのでしょうか。子どもが感染した場合の対処法などについて、医療法人社団三橋医院理事長で、循環器内科専門医の藤井崇博さんに聞きました。

免疫力の低下で感染する可能性

Q.「ヘルパンギーナ」とは、どのような感染症なのでしょうか。主な症状について、教えてください。

藤井さん「ヘルパンギーナとは、発熱と口の粘膜に現れる水疱(すいほう)性の発疹を特徴とした急性のウイルス性咽頭炎で、エンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA群に感染することで発症するケースが大半です。

日本では、毎年5月頃より患者が増加し始め、7月頃に流行のピークを迎えるため、ヘルパンギーナは“夏風邪”と呼ばれることがあります。5歳以下の子どもが感染するケースが多く、1歳代の子どもの感染が最も多いとされています。2〜4日間の潜伏期間があり、突然の発熱に続き喉の痛みが現れ、その後、喉に赤みや小さな水ぶくれが出現します。やがてこの水ぶくれが破れ、痛みを伴うようになるのです。

症状ですが、2〜4日間ほどで解熱し、やや遅れて喉の痛みも改善します。発熱時に子どもが熱性けいれんを伴うほか、口の中の痛みのため不機嫌になったり、食事や水分を取らなくなったりする症例があり、それにより脱水症などに陥ることがあります。感染しても後遺症などがなく回復するケースがほとんどです」

Q.ヘルパンギーナは、どのような方法で治療するのでしょうか。

藤井さん「ヘルパンギーナに関しては特効薬というものはなく、感染後の症状に合わせて、その症状を緩和する『対症療法』で対処します。対症療法として発熱や頭痛などに対してアセトアミノフェンなどを用いることもあります。脱水が疑われる場合は点滴などの治療が必要な症例もあります。

ヘルパンギーナの予防法に関しては、特別なものはありません。基本的な感染対策である感染者との密接な接触を避けることや流行時にうがいや手指の消毒を行うことなどが感染を予防する上で大切になってきます」

Q.子どもがヘルパンギーナに感染した時の注意点について、教えてください。

藤井さん「まれに、ウイルスによって脳や脊髄の周囲にある髄膜が炎症を起こす『無菌性髄膜炎』や心臓の筋肉に炎症が生じる『急性心筋炎』などを併発するケースがあります。無菌性髄膜炎の場合、発熱以外に頭痛や嘔吐(おうと)などの髄膜炎の症状が出現した時に注意をすべきです。

急性心筋炎に関しては、心不全の兆候に十分注意することが必要です。乳幼児の心不全の兆候は、『ミルクを飲む量が減る』『機嫌が悪く、ぐずりがちになる』『元気がないことが続く』など、意識をしていないと気付きにくいため、注意が必要です。無菌性髄膜炎、急性心筋炎ともに入院治療が必要となります。

先天性の心疾患やその他基礎疾患がある患者は重症になりやすいため、医療機関を受診するタイミングを適切に検討するためにも、症状の変化に注意が必要です」

Q.ヘルパンギーナの感染力は強いのでしょうか。感染した場合、何日程度、自宅療養するのが望ましいのでしょうか。

藤井さん「ヘルパンギーナの感染力自体は、他の夏風邪のウイルスや冬風邪のウイルス、新型コロナウイルスに比べて特別に強いわけではありませんが、症状が回復した後も、ウイルスが2〜4週間程度、便とともに排せつされ続けることがあり、感染者の便を通じてうつることがあります。

先述のように、ヘルパンギーナにかかっても軽症であるケースがほとんどで、登校、登園の可否については、流行の予防の目的というよりも、患者本人の状態によって判断されるべきと考えられます」

Q.大人がヘルパンギーナに感染する可能性はあるのでしょうか。

藤井さん「ヘルパンギーナは基本的に子どもが感染する病気ですが、睡眠不足などで体のコンディションが崩れている場合のほか、病気や治療で免疫力が低下している場合、大人でも発症する可能性があります。

大人が感染すると、乳幼児よりも症状が重くなるほか、症状が長引く傾向にあります。例えば、39〜40度の高熱が生じるほか、頭痛や倦怠(けんたい)感、関節痛、筋肉痛を伴います。

ヘルパンギーナに感染した子どもを看病しているうちに家族で感染してしまうことも多く、子どもがヘルパンギーナに感染した場合は、基本的な感染予防対策を徹底するとともに、看病している大人も免疫力が低下しないように、睡眠不足に陥ったり、疲れをためたりしないように注意しましょう」

Q.ヘルパンギーナと新型コロナウイルスは症状が似ているのでしょうか。見分けることは可能なのでしょうか。

藤井さん「ヘルパンギーナと新型コロナウイルスは、症状が共通しているケースが少なくないため、見分けるのは難しいと思います。両者とも基本的に対症療法で対処しますが、症状が長引くケースや新たな症状が出てくるケース、症状が悪化するケースなどがあるため、医療機関を受診し、医師の指示を受ける必要があります」

(オトナンサー編集部)

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藤井崇博(ふじい・たかひろ)

医師、医療法人社団三橋医院理事長

2012年に東邦大学医学部医学科卒業後、東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)で約10年にわたり臨床、研究、教育に従事。病気の原因の排除や病気のリスクの低減を図る「一次予防」を広めるために、2020年に医療法人社団正恵会 ディオクリニックを開設。2021年に東邦大学大学院医学研究科博士課程修了。同年、医療法人社団正恵会理事長就任。2023年、医療法人社団三橋医院理事長就任。

専門領域は循環器内科。保有資格は医学博士(循環器内科学)、循環器内科専門医、内科認定医。日本循環器内科学会、日本内科学会所属。医療法人社団正恵会 ディオクリニック(https://dioclinic.jp/)。「藤井先生@ダイエット豆知識チャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCwhtmWTYHIjO4mZklz4foyw)。

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