親もしんどい「夏休みの宿題」 計画的にやらせないとダメ? 終了直前にまとめてやらせてもOK? コツを教育アドバイザーが解説
夏休みの宿題は、子どもに計画を立てさせてから取り組ませた方がよいのでしょうか。それとも、夏休みの終了直前にまとめてやらせてもよいのでしょうか。教育アドバイザーに聞きました。

多くの小学校で夏休みが始まりましたが、子どもたちにとって悩みの種なのが宿題です。夏休みを楽しむために、早めに宿題を終わらせる子もいれば、夏休みの終了直前にまとめて取りかかる子もいます。また、宿題の進捗(しんちょく)状況や宿題の内容によっては、親が手伝わなければならないことがあり、親子で苦労するケースもあります。
夏休みの宿題は、子どもに計画を立てさせてから取り組ませた方がよいのでしょうか。それとも、夏休みの終了直前にまとめてやらせてもよいのでしょうか。教育アドバイザーで、「勉強のやり方」を教える塾「プラスティー」(東京都新宿区)の代表、清水章弘さんに聞きました。
“ざっくり”と計画を立てるのがポイント
Q.夏休みの宿題は、子どもにしっかりと計画を立てさせてから取り組ませた方がよいのでしょうか。それとも、終了直前にまとめて取り組ませても問題ないのでしょうか。適切な計画の立て方も含めて、教えてください。
清水さん「そもそも、夏休みの宿題は、何のために出されているのでしょうか。私は主に3つあると考えています。1つ目は、それまで習ったことを忘れないようにするためで、習った単元の復習のために出されるドリルや問題集が該当します。2つ目は、自由研究や読書感想文などのように普段やらない学習を通して、子どもの興味、関心を広げるためです。
そして3つ目が、学習習慣をある程度維持するためです。これが『計画』に関係します。もちろん、夏休みは、普段のルーティンから離れて、ゆとりのある生活を送ることができるので大切です。ただ、何週間も学習から離れてしまうと、日々の学習習慣が崩れやすくなってしまいます。毎日少しずつ、それが難しくても、週に数日は子どもに何らかの学習をさせることをお勧めします。
これらの3つのことから、宿題を『夏休みの終了直前にまとめてさせる』のは避けた方がよいでしょう。そこで、私が子どもに試してほしいと思う勉強のやり方は、『夏休みを3ブロックに分けて計画を立てる』というものです。子どもに計画を立てさせる時は、親ができる限りサポートしてあげましょう。
例えば、1つ目は『終業式の日もしくは夏休み初日から7月31日まで』、2つ目は『8月1日から8月15日まで』、3つ目は『8月16日から夏休み最終日まで』です。それぞれのブロックで、やることをざっくりと決め、そこから逆算的に、1日ごとまたは週ごとにやるべきことを落とし込んでいきましょう。ブロックごとに終わらせようとすると、『終了直前にまとめて』にならずに済みます」
Q.では、中学受験の勉強などで忙しい子の場合、夏休みの宿題はどのように取り組ませた方がよいのでしょうか。
清水さん「中学受験の勉強をしている子どもたちの多くは、先取り学習をしています。そのため、一律で出される宿題が、各々のレベルに合っていない場合があります。しかし、『簡単だな』と思っても、無意味なわけではありません。平易な問題であっても、速く正確に解ける能力は、中学受験でも必要です。
そこで、タイマーを使って時間を区切り、短時間で終わらせるようにしましょう。先述の3ブロックで言えば、最初の1ブロック目で、ドリル・問題集系の宿題をすべて終わらせるのもよいでしょう」
Q.「自由研究」「絵画制作」など、子どもによって得意な分野と苦手な分野があると思います。宿題は苦手な分野から先に取り組ませた方がよいのでしょうか。それとも、得意な分野から先に取り組ませた方がよいのでしょうか。
清水さん「どちらでも構いません。大切なのは、納得感です。お子さんが『この方が始めやすい』と感じるものを優先させてください。ただ、子どもたちが苦手なのは『時間の見積もり』です。『この順番で、これくらい時間をかけていて、実際に終わるかどうか』に関しては、親子の対話の中で一緒に計算してあげることも、時には必要でしょう。夏休みは、計画の立て方を習得させるチャンスだと捉えてください」
Q.子どもに宿題を取り組ませる際の注意点について、教えてください。親の言動で子どもがやる気をなくしてしまうケースはありますか。
清水さん「お子さんに“完璧さ”を求めないことです。毎日やることを決めたとしても、それを完璧にできる子なんて、ほとんどいません。その1日にできなかったとしても、すぐに怒らず、『今日の分はいつに回すのがいいだろう』と、考えさせてください。夏休みの宿題の計画をブロックごとに、ざっくりと決める意味は、ここにあります。計画通りに進まなかった時に修正できるのです。
ただ、ブロックごとの最終日には、可能な限り、そのブロックの宿題をやり切るようにしましょう。ブロックを決める際に、約束として子どもと先に話し合っておくのが肝要です」
Q.家族で旅行などを計画している場合、夏休みの宿題がある程度終わってから行くべきなのでしょうか。
清水さん「新型コロナウイルスの影響で、旅行などの体験活動を控えていた人もいるはずです。私は、そのような体験活動は学習と同じくらい、時には学習よりも大切だと考えています。宿題と関係なく楽しんでいただきたいと思います。
ただ、先ほどのブロックの分け方を『終業式の日もしくは夏休み初日から7月31日まで』『8月1日から旅行前まで』『旅行後から夏休み最終日まで』のようにすると、旅行をご褒美に頑張れる子も多いはずです。子どものモチベーションが上がるようであれば、そのような分け方をしてみてください。
旅行などの体験活動時には、写真や動画を撮影して思い出しやすくするとよいでしょう。それが対話のきっかけや、思考の整理につながります。
先述のように、計画はブロックごとにざっくりと立てた上で、やるべきことをしっかり終わらせるのが大切です。ただ、せっかくの夏休みですから、子どもたちには、たまには宿題の存在を忘れつつ、思いっきり楽しんでほしいと願います」
(オトナンサー編集部)
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