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8月もすでに後半…子どもの「夏休みの宿題」、親が手伝ってもよい? 専門家が対処法を解説

教育上、親が子どもの夏休みの宿題を手伝っても問題ないのでしょうか。教育アドバイザーに聞きました。

子どもの夏休みの宿題がほとんど終わってない… どうする?
子どもの夏休みの宿題がほとんど終わってない… どうする?

 8月も半分以上が過ぎましたが、この時期に多くの小学生が悩むのが「夏休みの宿題」ではないでしょうか。中には、子どもの宿題がなかなか進まず、見かねた親が手伝うケースもあるようです。教育上、親が子どもの夏休みの宿題を手伝ってもよいのでしょうか。教育アドバイザーの清水章弘さんに聞きました。

まずは計画作りから手伝うこと

Q.そもそも、「夏休みの宿題は無意味」「嫌々やらせても身に付かない」という意見をよく聞きますが、本当なのでしょうか。小学生に夏休みの宿題をやらせるメリット、デメリットも含めて、教えてください。

清水さん「どちらの意見も『完全に本当』とまでは言い切れませんが、『かなり本当』です。宿題は、学校で一斉に出されるケースがほとんどですが、やらされる勉強ほど退屈なものはありません。夏休みの宿題を嫌々やっても知識がなかなか身に付かないのは、小学生の頃を思い出せば、大人こそ理解できるはずです。

しかし、当時を思い出したときに、果たして『完全に意味がなかった』と言い切れるでしょうか。これが先ほど、『完全に本当』と言えなかったことの理由です。『自由研究でカブトムシを観察したこと』や『読書感想文を書くために本を読んだこと』をきっかけに、何か得るものがあったかもしれないのです。教育とは、目に見えて効果が分かるものだけではありません。今の人生に直結していないと感じることでも、経験として積み重なっていることもあるのです。

そもそも宿題の目的は、大きく分けて2つあります。1つ目は、学習を定着させることで、2つ目は、興味、関心を広げることです。普段の宿題は1つ目がメインですが、夏休みの宿題は、どちらも該当します。夏休みは時間があるので、これら2つを身に付ける、良いきっかけとなります。これが夏休みの宿題のメリットです。

一方で、先述の通り、一斉に出されて『これ、僕(私)がやる意味があるの?』と疑問を持ちながらやったとしても、目的を2つとも達成できません。時間だけが過ぎる『我慢大会』となる可能性があります。例えば、読書感想文で、読書嫌いが増す子は一定数います。これが夏休みの宿題のデメリットと言えます」

Q.夏休みの宿題は「学習を定着させる」「興味、関心を広げる」といったメリットがあるとのことですが、一方で子どもの夏休みの宿題を手伝う親もいるようです。教育上、問題はないのでしょうか。親が宿題を手伝う際の注意点も含めて、教えてください。

清水さん「親が宿題を手伝うのは、問題ありません。むしろ、できる限り手伝ってほしいものがあります。それは、『計画作り』です。そもそも、夏休みの計画を上手に立てられる子なんて、ほんの一握りです。そこで、『夏休みを、計画作りを学ぶきっかけにしてほしい』と私は願っています。では、計画作りの方法を紹介します。

まず、子どもがやるべき宿題をリストアップし、『宿題にかかる時間』を計算します。次に、夏休みの残り日数、つまり『残された時間』を計算しましょう。それぞれの時間を比較し、『宿題にかかる時間』より『残された時間』が長ければ、計画に落とし込みます。

一方、『宿題にかかる時間』の方が長く、残り時間が足りない場合は、かかる時間の点検が必要です。例えば、『読書感想文は6時間ではなく4時間でできないか』と帳尻を合わせてから、毎日の計画に落とし込みます。計画通りには進まないので、調整日や途中で計画を見直す日を入れるとよいでしょう。

このプロセスは、中学校に進んでからの定期テストや、受験の計画を立てるときに使えます。今回の夏休みが終わっても、次の冬休みや春休みに宿題を出されたときに続けていきながら、少しずつ自分でできるようにしていきましょう。

勉強の中身も、手伝って構いません。例えば、自由研究でどんな問いを立てればよいのか、読書感想文であらすじをどうまとめるのかなど、子どもたちが行き詰まるポイントはいくつもあります。普段の宿題と違い、慣れていないからです。困っていたら声を掛け、ヒントを出すつもりで、アドバイスしてあげてください」

Q.毎年、夏になると、民間企業などが自由研究向けの講座を実施しています。子どもが自由研究を終えていない場合、こうした講座を利用させてもよいのでしょうか。

清水さん「まったく問題ありません。自由研究が進まずに親子げんかが起こるより、ずっと良いと私は考えます。そもそも、日常的に研究をしていない子に対して、いきなり研究を求める方が無理です。その講座を受けて、自由研究が進められそうならやればいいし、やれそうにないのであれば別の講座を探せばいいのです。

ただ、講座の中には費用がかかってしまうものもあります。できるだけ無料で済ませたい場合、動画サイトで検索したり、図書館で指南本を探したりする方法もあります」

Q.「夏休み終了直前にもかかわらず、子どもが宿題をほとんど終えていない」というケースを毎年聞きます。現在、そのようなケースに該当する場合、来年以降、夏休みの宿題は、子どもにコツコツとやらせるべきなのでしょうか。それとも、夏休みの終了直前に一気に済ませる方法でも問題ないのでしょうか。

清水さん「先述の計画の立て方にのっとって、一緒に計画を立てるところから始めてください。もちろん、毎回計画通りにはいきません。前回の反省から始めましょう。そのために、今年の宿題それぞれが、いつ終わったのか記録しておいてください。それを見ながら『今回はどう進めようか』と対話をするのです。

その結果として、夏休みの終了直前に一気に済ませることになっても、構いません。大切なのは『本人が決めて、失敗をしながら、毎回少しずつ修正する』という成長プロセスそのものだからです」

(オトナンサー編集部)

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清水章弘(しみず・あきひろ)

教育アドバイザー、プラスティー教育研究所代表

1987年、千葉県船橋市生まれ。東京大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修士課程修了。自身の時間の使い方や、効率的な勉強法を体系化し、東大在学中の20歳で起業。勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を経営し、現在も毎年200回の教育面談を続ける。また、公教育の支援を続けており、教育委員会や学校、企業などからの教育改革の依頼も多く、全国で教育アドバイザーを務めている。「PTAで最も呼びたい講演講師」とも言われ、講演内容は、生徒・保護者向けから教員・教育委員会向けまで、多岐にわたる。「現役東大生がこっそりやっている、頭がよくなる勉強法」など、学習法に関する著書も多数あり、累計40万部以上発行。中国・韓国・台湾・タイ・ベトナム等で翻訳、出版もされている。

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