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授業参観で「挙手して発表しなさい!」 親がプレッシャーをかける是非

授業参観の授業で、「挙手して発表しなさい!」と親からプレッシャーをかけられることから、授業参観を嫌がる子どもがいます。挙手のプレッシャーをかける是非を教育の専門家に聞きました。

親が「挙手して発表しなさい」と言ってはいけない?
親が「挙手して発表しなさい」と言ってはいけない?

 小学校や中学校では、多い場合毎月1回、授業参観が行われます。特に、小学校の児童の中には、親から授業で挙手して発表するようにプレッシャーをかけられることから、授業参観を嫌うケースもあるようです。授業参観のとき、親がわが子に挙手するように言うのは、やめた方がよいのでしょうか。それとも、言ってもよいのでしょうか。教育アドバイザーの清水章弘さんに聞きました。

「普段通り」にさせるのが一番

Q.授業参観のとき、親がわが子に「授業中には必ず手を挙げて」と事前に伝えるケースがあります。やめた方がよいのでしょうか。それとも、言ってもよいのでしょうか。

清水さん「子どもたちが手を挙げる姿は、見ていて気持ちがよいですよね。でも、授業参観前に親がわが子に促すのは、お勧めできません。

そもそも、授業参観の目的は、3つあります。1つ目は、親が先生を知るため。授業している場面を見ることで、習っている先生がどのような人なのかを知ることができます。『子どもたちの前では、こういう雰囲気なんだな』と理解ができると、家で子どもと先生について話すとき、イメージが湧くようになります。

2つ目は、授業を知るため。実際の授業内容を見ることで、形式(話し合いが多いのか、1人で考えることが多いのかなど)やレベル、進度といった授業内容を知ることができます。子どもが授業についていけているのかどうかを、把握しやすくなります。

3つ目は、学校生活における子どもの様子を知るため。周りの友達の中で学ぶわが子を観察することで、授業に集中できているか、クラスになじめているかなどが分かりやすくなります。

この3つの目的に照らし合わせてみると、『普段通り』が一番です。その姿を通して、先生・授業・子どもを知りやすくなります。逆に、いつもと違う様子を演じさせてしまうと、友達ともぎこちない空気になり、日常を垣間見ることが難しくなってしまいます」

Q.授業で「挙手しないといけない」というプレッシャーを子どもに与えることに、メリットはあるのでしょうか。あるいは、デメリットしかないのでしょうか。

清水さん「先述したようにデメリットが多いと思いますが、メリットも多少はあります。大好きな親の前だから安心して『一歩踏み出せる』という可能性もあるからです。普段の授業では手を挙げにくいと思っていても、親に教室の後ろから見守ってもらえているという心強さで、手を挙げることができる場合があります。

ただし、『手を挙げなさい!』とプレッシャーを与えると、うまくいかない可能性が高いので、『手を挙げる姿も見てみたいなぁ…』と優しく語りかける程度にとどめるのがよいでしょう」

Q.親がわが子に、授業参観で挙手をするように言うのは、親の見えでしょうか。

清水さん「『自分の子どもだけ手を挙げていない』と、周囲の親御さんに思われるのが嫌という気持ちから、挙手するように言うケースはあるでしょう。しかし、こうした親の見えだけとは言い切れません。

子どもが授業で手を挙げるのは、『理解ができている』『意見を持てている』『場に心を開けている』という証拠でもあります。親としては、そうした子どもの姿を見て、安心したいという気持ちもあるのではないでしょうか」

Q.授業参観で、わが子が挙手をしない、あるいは、できないとき、親はどのように対応すればよいでしょうか。

清水さん「『手を挙げればよい』というわけではありません。実際、中学校に進むと、挙手できる子の人数がグッと減ります。高校、大学、社会人と年を重ねていけば、手を挙げる人を探すほうが珍しくなります。

では、挙げない人は理解できていなかったり、積極性に欠けていたりするかといえば、そんなことはありません。『沈思黙考』という言葉がある通り、自分のペースで思考を深めている可能性もあります。

一方で、子どもが手を挙げているからといって、親が安心するのもおかしな話です。授業が終わった後、『今日の授業、どうだった?』と聞いたり、『ママ(パパ)も昔、習ったなあ。懐かしかったなあ』『ノートにきちんと書いていて、偉かったね』と褒めたりしながら対話をする方が、よほど大切です」

(オトナンサー編集部)

清水章弘(しみず・あきひろ)

教育アドバイザー、プラスティー教育研究所代表

1987年、千葉県船橋市生まれ。東京大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修士課程修了。自身の時間の使い方や、効率的な勉強法を体系化し、東大在学中の20歳で起業。勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を経営し、現在も毎年200回の教育面談を続ける。また、公教育の支援を続けており、教育委員会や学校、企業などからの教育改革の依頼も多く、全国で教育アドバイザーを務めている。「PTAで最も呼びたい講演講師」とも言われ、講演内容は、生徒・保護者向けから教員・教育委員会向けまで、多岐にわたる。「現役東大生がこっそりやっている、頭がよくなる勉強法」など、学習法に関する著書も多数あり、累計40万部以上発行。中国・韓国・台湾・タイ・ベトナム等で翻訳、出版もされている。

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