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「あだ名禁止」「さん付け奨励」意味はある? 教育アドバイザーの見解

小学校で友達を「あだ名」で呼ぶことを禁止し、「さん付け」で呼ぶよう奨励するケースが増えているようです。意味はあるのでしょうか。教育アドバイザーの見解を聞きました。

「あだ名禁止」「さん付け奨励」意味はある?
「あだ名禁止」「さん付け奨励」意味はある?

 小学校で友達を「あだ名」で呼ぶことを禁止し、「さん付け」で呼ぶよう奨励するケースが増えているようです。心ないあだ名で子どもが傷つくことを防ぐためだそうですが、「さん付け」にするだけで、子どもたちの関係づくりはうまくいくのでしょうか。教育アドバイザーの清水章弘さんに聞きました。

ルールよりも「対話」が重要

Q.まず、「あだ名」のメリット、デメリットを教えてください。

清水さん「メリットは、いい『あだ名』であれば、相手との精神的な距離が縮まること。デメリットは、心ないあだ名によって、子どもが傷つく可能性があることです」

Q.では、「さん付け」のメリット、デメリットを教えてください。

清水さん「『あだ名』のメリット、デメリットと逆になります。メリットは、相手を傷つける可能性が小さくなること。デメリットは、相手との精神的な距離を感じやすくなる可能性があることです」

Q. 友達を「あだ名」で呼ぶことを禁止し、「さん付け」で呼ぶよう奨励する小学校があるようですが、どのような効果が期待されているのでしょうか。

清水さん「そもそも、あだ名の作り方は大きく3種類に分かれます。

1つ目は、名前に由来する作り方。たとえば、私の名字『清水』で言えば『しみ』『しみちゃん』などがありました。

2つ目は、容姿に由来する作り方。似ているキャラクターや有名人、動物の名前を付けたり、体形から連想する言葉であだ名を付けたりすることがあります。

3つ目は、行動に由来する作り方です。知識豊富な人に『博士』と付けたり、サッカーでドリブルがうまい人を『メッシ』と呼んだりといった感じです。でも、その人の過去の失敗や恥ずかしい行動から、心ないあだ名がつけられることもあります。

この中で、特に2つ目と3つ目が問題となりやすいです。容姿や行動をばかにするような心ない呼び方であれば、本人のコンプレックスや、忘れたい記憶と結びついてしまうからです。

もちろん、1つ目が問題とならないわけではありません。私も小学3年の頃、先生が『清水』を黒板に片仮名で書いたとき、『シミズ』ではなく、『ミミズ』と読めてしまいました。しばらく、『ミミズ』と呼ばれ、当時は少なからず傷ついたのを覚えています。

『さん付け』に統一することで、あだ名に起因するこのような問題が起こりにくくなります。『あだ名』を禁止し、『さん付け』を奨励する小学校は、そういった効果を期待していると思われます」

Q.実際に効果はあるのでしょうか。

清水さん「一定の効果はあります。ただ、『さん付け』が良くて、『あだ名』が悪い、という単純な話ではありません。実際に、あだ名で呼び合うことで、子ども同士が仲良くなれることも多いわけですから。

『あだ名禁止』にした後、いじめが減っている学校は、『どうしてあだ名が禁止なのか』という説明や、話し合いの場を持ったことが、功を奏しているのではないでしょうか。

呼び方のルールができるだけで、いじめがなくなるわけではありません。お互いに人間ですから、意図せず相手を傷つけてしまうことは、あるものです。『あだ名禁止』であっても『あだ名OK』であっても、そのルールを出発点として、『どういう時に人は喜び、傷つくのか』を考える対話の場をつくり、相互に安心して心を開きあえるように大人が導くことが、よい人間関係づくりのカギではないでしょうか」

Q.子ども同士がよい関係を築くための、相手の呼び方についての考えをお聞かせください。

清水さん「呼ばれ方は、本人のアイデンティティーと結びつきやすいので、とりわけ子ども時代は慎重であるべきです。あだ名で呼ぶ場合、相手がどう感じるのかを想像した上で、呼ぶことが必要です」

(オトナンサー編集部)

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清水章弘(しみず・あきひろ)

教育アドバイザー、プラスティー教育研究所代表

1987年、千葉県船橋市生まれ。東京大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修士課程修了。自身の時間の使い方や、効率的な勉強法を体系化し、東大在学中の20歳で起業。勉強のやり方を教える塾「プラスティー」を経営し、現在も毎年200回の教育面談を続ける。また、公教育の支援を続けており、教育委員会や学校、企業などからの教育改革の依頼も多く、全国で教育アドバイザーを務めている。「PTAで最も呼びたい講演講師」とも言われ、講演内容は、生徒・保護者向けから教員・教育委員会向けまで、多岐にわたる。「現役東大生がこっそりやっている、頭がよくなる勉強法」など、学習法に関する著書も多数あり、累計40万部以上発行。中国・韓国・台湾・タイ・ベトナム等で翻訳、出版もされている。

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