GW明けに子どもが「学校に行きたくない」と訴えた…親はどう対処すべきか 教育アドバイザーに聞く
ゴールデンウイーク明けに子どもが「学校に行きたくない」と言い出した場合、親はどのように対処したらよいのでしょうか。教育アドバイザーに聞きました。
例年、ゴールデンウイーク(GW)明けになると、「学校に行きたくない」と訴える子どもが増えるようです。そもそも、GW明けに子どもが学校に行きたがらなくなるのはなぜでしょうか。子どもが「学校に行きたくない」と言い出した場合、親はどのように対処したらよいのでしょうか。教育アドバイザーの清水章弘さんに聞きました。
進学、進級の疲れが出る時期
Q.例年、GW明けに「学校に行きたくない」と訴える子どもが増えるようですが、なぜでしょうか。考えられる理由について、教えてください。
清水さん「子どもによって、さまざまな原因があります。ただ、多くの子どもたちに当てはまるのは、『4月に大きなストレスを抱えた』という点です。
4月に進学や進級をすると、先生や仲間が変わるだけでなく、教室や教科書も変わります。また、運動会や体育祭の準備が始まる学校もあるので、4月は、子どもたちが気付かぬうちにストレスを抱えがちな時期です。1カ月は何とか乗り切ることができた子も、GWでふと息をついたときに、疲れが一気に出てしまうのです。
ストレスに自覚的になること自体は、良いことといえます。しかし、気付いたときにそのストレスが大きくなり過ぎてしまうと、押しつぶされそうになり、逃げたい気持ちが強く芽生えてしまいます」
Q.「学校に行きたくない」と感じやすい学年について、教えてください。
清水さん「不登校の児童や生徒は、学年が上がるごとに増えていきます。文部科学省が公表した『2021年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について』によると、2021年度の不登校の児童・生徒の割合は、小学校では1.30%(77人に1人)、中学校では5.0%(20人に1人)です。
不登校の児童・生徒数を学年別に見ると、小学1年は4534人ですが、小学6年になると2万5004人です。中学1年になると一気に増えて4万5778人、中学3年は5万8924人もいます」
Q.GW明けに子どもが「学校に行きたくない」と訴えた場合、親はどのように対処したらよいのでしょうか。
清水さん「子どもは、大人が思っているよりずっと合理的です。『行きたくない』という気持ちには必ず理由があり、それは子どもにとって理にかなっていることが多いのです。そのため、まずは行きたくない理由を丁寧に聞いてあげることが大切です。理由は、『人間関係』『疲れ』『授業についていけない』など、子どもによって異なります。お子さん自身が気付いていない場合もあるので、じっくりと話を聞いて向き合ってください」
Q.子どもが「学校に行きたくない」と訴えた場合に親がやってはいけない行為について、教えてください。
清水さん「子どもが学校に行きたくないと訴えた場合、最初に子どもに接するときが非常に重要です。気になる言動があったら、手を止めて、きちんと向き合うようにしてください。その際、大人は、『それは良くないよ』『我慢もしなきゃいけないんだよ』といった形ですぐに評価やアドバイスをしがちですが、それは絶対にやめてください。
最初に子どもが欲しいのは、評価やアドバイスではなく、『受容・共感』です。それがあって初めて、親が言うことに耳を傾けてくれます。何か伝えたいことがあったら、傾聴に傾聴を重ねて、最後に『1つだけ提案していい?』と言うようにしてみてください。
また、『何がなんでも休んではいけない』という態度を取るのは、お勧めできません。『行けば何とかなる』と思いがちですが、そんなケースばかりではありません。話を聞いてもお子さんの気持ちが晴れない場合、『じゃあ1日だけ休んでみる?』と聞いてみるのもよいでしょう。実際に、気持ちの整理をする時間ができることで、前向きになれる子どももいます。
また、『家にいたい』と思うことは、家を『安心・安全の場』と捉えている証拠です。1日くらい学校を休んだところで、学力にそれほど影響しません。ただ、学校に行きたくない状態が続く場合は、学校側やカウンセリングの先生への相談をお勧めします」
Q.子どもは、「学校に行きたくない」と言い出す前にどのような言動を取ることが多いのでしょうか。また、親は子どものどのような言動について、特に注意深く見ていく必要があるのでしょうか。
清水さん「『食欲がなくなる』『体調不良など、体調面の変化』『会話が減る』『ネガティブな発言が増える』などの変化が見られるようになりますが、親が特に見落としがちなのが、『睡眠不足』です。
米カリフォルニア大学バークレー校で行われた研究によると、睡眠時間を1時間削るだけで、人を助けようとする気持ちが著しく低下するそうです。論文の著者の一人である、同校のマシュー・ウォーカー教授(神経科学・心理学)は「睡眠不足が非社交的な行動の引き金として作動する」と述べ、睡眠が短いと自己中心的になりがちだと指摘しています。
せっかく新しい環境に適応しようとしているのに、自己中心的になってしまうと、仲間と摩擦が生じてしまい、余計にストレスを抱える原因をつくってしまいます。眠い目をこすって登校するのに見慣れていたとしても、この時期は、もう1時間長く睡眠を取らせてあげるようにしてください」
子どもが学校に行かないと言い出した場合、親は不安になるとは思いますが、まずは子どもの話をしっかりと聞いてあげましょう。
(オトナンサー編集部)
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