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暴力を使う「凶悪強盗犯」…どうやって身を守る? 被害遭遇率を下げる「3つの壁」、ボディーガードが解説

第3の壁「もしも侵入されたら…」

 強盗犯が在宅中を狙うのは、金品の場所を聞き出し、探す手間を省くため。顔を合わせるリスクよりも、隠し場所の情報というリターンを重視した結果です。そして、情報を得る手段として暴力を使います。

 凶悪犯に侵入されてしまうと、基本的にアウトです。とはいえ、諦めるわけにはいきません。この場合、選択肢は次の4つです。

【(1)無抵抗】

基本的に、強盗の目的は金品です。つまり、重い量刑は望まないはずです。そのため、結果的に“無抵抗”が被害を最小限に抑えるケースもあります。しかし一方で、1995年に発生した「八王子スーパー強盗殺人事件」のように、無抵抗の相手を手にかける事件も少なからず存在します。「目の前の相手がどちらのタイプか」を見極めるのは容易ではありません。

暴力には「衝動的なケース」と「計画的なケース」があります。どちらの場合も、犯人が口にするのは「おとなしくすれば何もしない」という言葉。しかし目的が異なれば、その行動にも微妙な違いが出ます。

では、ここで質問です。家に押し入った強盗が、次に挙げる3つの行動を取りました。3つそれぞれの目的を想像してみてください。

1.犯行を終えた後、台所に向かった
2.急にテレビのボリュームを上げた
3.引き上げる前に、窓を閉め始めた

これらは全て、これから立ち去る者には必要のない行動です。つまり、次のような目的が考えられます。

1.台所に包丁を探しに行ったのではないか
2.物音が聞こえないように、テレビの音を上げたのではないか
3.悲鳴が漏れ聞こえないないように、窓を閉めたのではないか

実際の目的は何なのか、本当の答えは分かりません。しかし、相手の行動や言動は何らかのヒントを含んでいます。違和感と“内なる声”は、自分を守る最大の武器です。

【(2)逃げる】

もちろん最優先するべきは、その場から遠くに離れることです。ただし、よほどの豪邸でない限り、逃げる前に捕まります。基本的に、家の中は袋小路です。こちらが玄関の外で、家に背を向けていない限り、逃げ切ることは難しいでしょう。

逃げ切るには、「相手との距離」「地形」「脚力の差」など、条件がそろわなければ不可能であり、むしろそろうケースはまれです。よって、「逃げる」はベストな選択ではあるものの、あくまで“理想”であり、選択肢にないケースが少なくありません。

【(3)隠れる】

映画のように、ベッドの下やクローゼットに身を潜めることなど、現実ではできません。ただし、トイレや納戸といった内鍵がある部屋に逃げ込むのは有効です。

とはいえ、逃げ込むまでの時間と、助けが来るまで持ちこたえる時間は必要です。万が一のときにシェルターとして使う部屋を決め、助けを呼ぶための電話(子機)や緊急通報ボタンを常備するか、家でも常にスマホを携帯する必要があります。

どんなに丈夫なドアでも、破壊は可能です。外部にSOSを発信しなければ、突破されるのは時間の問題です。もしも通信手段がなければ、110番通報をしている振りをしましょう。

【(4)戦う】

本来は避けるべき最悪の選択肢です。しかし現実には、他に方法がないケースも多く、その場合は行動するしかないでしょう。とはいえ、押し入った暴漢を撃退することは至難の業です。どう転んでも、こちらの不利は覆りません。ただし、わずかながら有利に近づけることは可能です。

戦いは強い武器を持つ方が有利であり、自分よりも強い相手に対抗するには「道具」が必要です。身の回りにはモップ、ペン、はさみ、椅子など、武器に転用できるものが多くあり、それらを使うのは悪い方法ではありません。

しかし最も効果的なのは、身を守るために作られた「護身用品」です。身を守る目的でデザインされた物の方がよりよいのは当然です。護身用品は持ち歩くと、職務質問でとがめられる恐れがありますが、家庭内に置いておくのは問題ありません。暴力犯罪の約3割が住宅で起きている事実を鑑みると、護身用品の常備は当然といえます。

 報道されている連続強盗事件の手口から、現代の犯罪傾向が垣間見えます。犯罪に抵抗感の低い若者が一定数存在すること、そしてSNSを使えば、そうした者を簡単にリクルートできること…非常に恐ろしい現実です。しかし、安易な犯行を好む連中にとって、防犯意識の高い人はターゲットに選びにくいともいえます。

 犯罪は決して撲滅されません。残念ながら、誰かが被害者になります。しかし、「狙われにくい人」や「狙われにくい家」となり、被害に遭う確率を下げることは難しくありません。

(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)

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加藤一統(かとう・たかのり)

一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事

1995年より身辺警備(ボディーガード)に従事し、これまで900件以上の警護依頼を請け負う。業界歴26年。現在は、優良なボディーガード会社や探偵会社を探すユーザーに向けた無料紹介所「ボデタンナビ」を主宰。紹介だけでなく、企業のセキュリティーから家庭の防犯まで、網羅的な質問にも答えている。護身・防犯用品の設計企画を行う「タカディフェンスデザイン」も運営。ボデタンナビ(https://bhsc.or.jp/)、タカディフェンスデザイン(https://www.t-d-design.com)、公式ツイッター(https://twitter.com/bodetan)。

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