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盗難被害相次ぐ…それでも飲食店が無人販売を続ける理由 メリット&デメリットを専門家が解説

盗難被害が相次ぐ中、飲食店が無人販売を続けるのはなぜでしょうか。専門家に聞きました。

ギョーザの無人販売に取り組む店が増加
ギョーザの無人販売に取り組む店が増加

 新型コロナウイルスの流行が始まった2020年以降、飲食店の中にはギョーザやケーキなどの無人販売に本格的に取り組む店も登場しています。基本的に店内のショーケースから商品を取り、現金やキャッシュレス決済で支払う仕組みですが、そうした店の中には商品の盗難被害に遭うケースもあり、ネット上では「無人販売はやめた方がよいと思う」「犯罪を助長させている」といった声も上がっています。

 盗難が相次ぐ中でも、なぜ飲食店は無人販売を続けるのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

低コストで一定の利益が見込める

Q.コロナ禍でギョーザやケーキなどの無人販売に取り組む飲食店が増えています。無人販売のメリット、デメリットについて、教えてください。

成田さん「新型コロナウイルスの流行による営業自粛などの影響で、消費者の外食離れが進み、多くの飲食店では、客数がコロナ前の70%程度しか回復していません。現在、政府の自粛要請は出ていませんが、依然として新型コロナウイルスの新規感染者は多く、消費者は人と接する可能性の高い飲食店を避ける傾向にあります。

しかし、無人販売は、非接触・非対面でかつ人件費をかけずに24時間販売ができるという非常に大きなメリットがあります。新型コロナウイルスの第7波に突入した2022年7月以降は政府による行動制限がなく、自治体から協力金が支給されなくなりました。そのため、倒産する飲食店も増えており、生き残りの手段として飲食店による無人販売が拡大している状況です。

無人販売のデメリットは、それなりの数の商品を製造する必要があるため、工場などの生産ラインの確保が必要なことや、無人であるために防犯対策が必要なことだと思います」

Q.無人販売所を狙った盗難が相次ぐ一方、無人販売を継続する店もあります。盗難リスクがある中、なぜ飲食店は無人販売を続けるのでしょうか。考えられる理由について、教えてください。

成田さん「多くの無人販売所では防犯対策が行われていますが、それでも月に1~2件の盗難被害が報告されています。ただ、飲食店の売り上げが新型コロナウイルスの流行以前の水準に戻らない中、無人販売は、人と接触せずに24時間好きなときに購入できる便利さが評判となったことで、一定の売り上げが見込めるようになりました。これは事業者にとって、大いに魅力的だと思います。

また、無人販売は、先述のように人件費があまりかからないので、盗難に遭った際の被害額を差し引いても、利益を確保できるのではないでしょうか」

Q.飲食店が無人販売を行う際に必要な設備や開業後のコストについて、教えてください。

成田さん「無人販売は、工場などの生産ラインや出店場所を確保する必要があります。無人販売の出店場所は『入り口の幅が広く、店舗内がよく見える』『看板が目立つように設置できる』といった条件を満たせば、賃料が安い物件でも構いません。最近では飲食店の倒産が増えて、手頃な空き物件が多く出回っていることもあり、条件を満たす安価な物件も増えています。

開業時に必要なのは、内装や外装の工事、冷蔵用・冷凍用のショーケース、防犯設備の設置などです。無人販売所の開業後の運営コストは、基本的に賃料や冷凍庫などの電気代が中心になりますが、人件費がない分、ローコストで運営できます」

Q.飲食店が無人販売で収益を上げるには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

成田さん「無人販売の増加に伴い、窃盗事件なども増えていると言われているので、セキュリティー対策を慎重に検討しなければならないと思います。また、異物混入があった際のクレーム対策を行う必要があります。通常の飲食店と同様、無人販売でも『食の安心安全』は不可欠でしょう」

Q.ギョーザやケーキ以外に、今後、無人販売で増えそうな商品はあるのでしょうか。

成田さん「すでにラーメンや中華料理、和牛、サラダなどを取り扱う無人販売所が全国各地で次々に登場しています。また、ブランド力と資金力を兼ねそろえた大手飲食チェーンは、冷凍自動販売機による無人販売の全国展開を始めています。

今後は、ブランド力と資金力のあるさまざまな業態の飲食チェーンが、無人販売に参入する可能性が大いにあると私は考えています」

(オトナンサー編集部)

【写真】無人販売で増えている商品は?

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成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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