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カレーやハンバーグで「乳腺炎」に? 妊娠中&産後に“要注意”の食べ物は? 産婦人科医に聞く

妊娠中や産後は食事に気を使うもの。中には、胎児や母乳に影響を及ぼす食べ物や飲み物もあります。どんなことに注意すればいいのか、産婦人科医が解説します。

妊娠中や産後の食生活、注意点は?
妊娠中や産後の食生活、注意点は?

 妊娠中のみならず、産後も食事に気を使う女性は多いと思います。中には産後、カレーやハンバーグなどを食べた後に、乳腺の詰まりや痛み、胸の張りを起こした経験のある人もいるようで、「私はわりと何を食べても平気だったけど、人によるのかな」「産後は甘い物を控えていました」「乳腺のトラブルを起こしやすい食べ物もあるの?」など、さまざまな体験談が聞かれます。

 妊娠中や産後、食生活においてどのようなことに注意が必要なのでしょうか。産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

「生ハム」「チーズ」が流早産の原因に

Q.妊娠中に注意すべき食べ物は何でしょうか。

尾西さん「まず、火の通っていない肉類です。レアのステーキなどは分かりやすいのですが、意外とうっかり食べてしまうのが生ハムです。『トキソプラズマ』という寄生虫が付着していることがあり、流早産や、『先天性トキソプラズマ症』といって胎児の心臓や頭、目などの異常の原因になることがあります。

加熱していないチーズにも注意してください。国産のチーズ、または『プロセスチーズ』と書いてあるものはそのまま食べても問題ありませんが、輸入物で『ナチュラルチーズ』と書いてあるものはしっかり加熱してから食べましょう。『リステリア』という細菌が付着していることがあり、流早産の原因になります。

また、生の魚を使ったすしも『妊娠中は我慢…』と思っている人が多いかもしれません。確かに、妊娠中は免疫が低下するため、腸炎ビブリオや病原性大腸菌、ノロウイルスなどの食中毒になりやすく、食中毒によって子宮が収縮し、早産になる危険性があります。そのため、生魚は避けた方が無難ではありますが、生肉のように胎児異常につながる細菌や寄生虫がいるということではありません。

もう一つ、すしが要注意といわれるのは、魚に含まれる水銀が胎児に異常を及ぼす可能性があるとして、食べる種類や量について厚生労働省から注意喚起がなされているからです。ただし、こちらに関しては、大きな回遊魚(マグロやキンメダイなど)を毎日食べなければ問題ありません。

また、生魚に付着している寄生虫の『アニサキス』で食中毒が起きるケースもあります。アニサキスは生のサバやイワシ、サンマ、サケ、イカに付着しており、酢漬けにしても生きていることから、すしのイカや締めサバなどは注意が必要です。

一方で、魚には、赤ちゃんの脳神経の発達に重要なDHA(ドコサヘキサエン酸)も豊富に含まれているので、小形の青魚を中心に食べることには、意味があります。『どうしてもすしを』という場合は、体調のよいときに、たまに食べる程度にしましょう」

Q.飲み物についても教えてください。

尾西さん「『妊娠中はカフェインNG』とよくいわれますが、その理由として(1)カフェインの血管収縮作用により、子宮への血行が悪くなる(2)神経を興奮させる作用が、胎盤を通じて赤ちゃんにも影響してしまう(3)妊娠中に必要なカルシウムの排せつが増えたり、鉄分の吸収が阻害されたりする―などが分かっているためです。赤ちゃんの成長や出産後の健康に及ぼす影響は、まだ具体的には分かっていませんが、子宮への血行が悪くなることで発育を妨げることがあるといわれています。

カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶や緑茶、ココア、エナジードリンクにも含まれています。特に、エナジードリンクにはかなりの量が入っていることもあるので注意しましょう。もっとも、カフェインは摂取量が問題になるので、1日あたりコーヒー1~2杯であれば問題ありません。過度に制限したり、心配したりする必要はないでしょう」

Q.産後、甘い食べ物を控える人もいますが、妊娠中のみならず、産後の食事にも気を使った方がよいのですか。

尾西さん「一般的に摂取を避けた方がよいものは先述の通りなので、妊娠中も甘い食べ物を過度に制限する必要はありませんが、妊娠糖尿病や肥満、妊娠中の急激な体重増加がある人は食事制限が必要になることもあります。妊娠中は、ホルモンの影響で血糖値の変動が大きく、また脂肪が付きやすくなっているためです。

産後は、授乳をしているとカロリーを消費するので、通常の食事に加えて『+350キロカロリー』の摂取が推奨されています。ただし、授乳中は食欲が増加したり、妊娠中に増加した分を減らしていかなくてはいけなかったりします。食欲に任せて食べていては元に戻らないので、要注意です」

Q.産後、「絶対に食べてはいけないもの」はありますか。

尾西さん「産後は妊娠中とは違い、ママが食べたものが直接、赤ちゃんにいくわけではないので、医薬品を除いて『絶対に食べてはいけないもの』はありません。

ただし、アルコールは母乳に入り、赤ちゃんの発達に影響を与える危険性があることや、授乳のためのホルモンに影響を与えて母乳の分泌量が減ってしまったり、授乳可能期間が短くなったりすることがあるのでやめましょう。母乳中のアルコール濃度は、ママのアルコール血中濃度とほぼ同じになるといわれています。どうしてもという場合、アルコールの血中濃度は飲酒後2時間がピークとされているため、飲酒後に可能な限り時間を空けてから授乳しましょう」

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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