オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「4630万円、ネットカジノで全部使った」男逮捕…賭博も違法行為では? 弁護士に聞く

山口県阿武町で起きた4630万円誤給付問題。男性は「海外のネットカジノで全部使った」と説明しているようですが、そもそも、日本でカジノに賭けることは違法行為ではないのでしょうか。

「日本でカジノ」は違法では?
「日本でカジノ」は違法では?

 1世帯10万円の新型コロナ関連の給付金について、山口県阿武町が誤って、町内対象全世帯分4630万円を1人の男性に振り込み、町が返還を求めている問題で、この男性が「金は海外のネットカジノで全部使った」と説明していると報道されました。町は5月12日、給付金と弁護士費用など計5100万円余りの支払いを求めて、男性を提訴。男性は同18日、不正送金で不法に利益を得たとして「電子計算機使用詐欺」容疑で逮捕されましたが、そもそも日本でカジノにお金を賭けることについても、違法行為ではないのでしょうか。

 ゆら総合法律事務所(東京都荒川区)の阿部由羅弁護士に聞きました。

逮捕・罰金刑を受けた例も

Q.日本でカジノが禁止されている法的根拠を教えてください。

阿部さん「日本国内でカジノを営業した場合、『賭博場開張図利罪』(刑法186条2項、法定刑は3月以上5年以下の懲役)が成立します。また、日本国内にいる人がカジノでお金を賭けた場合には『賭博罪』(刑法185条、法定刑は50万円以下の罰金または科料)、常習性が認められれば『常習賭博罪』(刑法186条1項、法定刑は3年以下の懲役)が成立します。

このように、日本においてカジノ営業やカジノ遊びは、犯罪として禁止されています。賭博に関する行為が犯罪とされているのは、次に挙げる弊害を防ぐためです(最高裁1950年11月22日判決)。

・怠惰浪費の弊風を生じさせる
・勤労の美風を害する
・暴行、強迫、殺傷、強盗、窃盗などの副次的犯罪を誘発する
・国民経済の機能に重大な障害を与える」

Q.海外のネットカジノに日本からお金を賭けた場合は、どうなるのでしょうか。

阿部さん「国内の(違法)カジノで賭けをした場合と同様に、賭博罪または常習賭博罪に該当する可能性があります。ネットカジノの運営者が海外の主体であり、サイトのサーバーが海外に設置されている場合でも、賭博行為自体は日本国内で行われていると判断され得るからです」

Q.海外のネットカジノにお金を賭けて逮捕された、という実例はあるのでしょうか。

阿部さん「国会の資料によると、逮捕・略式起訴され、罰金刑を科された例があります。2021年2月24日の衆議院内閣委員会の会議録などによると、海外の無店舗型オンラインカジノで賭博をした疑いで、京都府警が3人を逮捕したことと、その3人が賭博罪で略式起訴され、罰金20万円および罰金30万円の略式命令を受けたことが明らかにされています」

Q.山口県阿武町から提訴された男性について、ネットカジノへの賭けが事実だとしたら、賭博罪でも逮捕される可能性はあるのでしょうか。

阿部さん「ネットカジノで賭けをしていることが、スマートフォンの履歴などから証拠上明らかであれば、賭博罪で逮捕・起訴される可能性はあります。

ただ、本件の場合、『4630万円もの大金を、不当に返還していない(不正送金した)』ことが主要な問題となっているため、賭博罪が過剰にクローズアップされる事案ではないように思われます。実際に、本件では男性が電子計算機使用詐欺(刑法246条の2、法定刑は10年以下の懲役)の疑いで逮捕されました。今後賭博罪の被疑事実が追加されることはあり得るものの、詐欺行為の成否や悪質性の方が主要な争点となるでしょう」

(オトナンサー編集部)

1 2

阿部由羅(あべ・ゆら)

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種ウェブメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。ホームページ(https://abeyura.com/)、ツイッター(https://twitter.com/abeyuralaw)。

コメント