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下着の色指定、”黒髪”統一…「ブラック校則」ようやく都立高で全廃、なぜ時間かかった?

東京都立高校で、いわゆる「ブラック校則」5項目が、4月から全廃になりました。そもそも、なぜブラック校則が問題で、なぜ見直しに時間がかかったのでしょうか。

ブラック校則、何が問題?
ブラック校則、何が問題?

 下着の色を指定、髪の色を黒に統一…。東京都立高校で、いわゆる「ブラック校則」5項目が、今年4月から全廃になったことが話題となっています。都教育委員会が3月10日、2021年4月から12月に実施された、都立高校などでの校則見直しの取り組み状況を公表。その中で、「生来の髪を一律に黒色に染色」「『ツーブロック』を禁止する指導」「下着の色の指定に関する指導」など5項目がすべての学校で廃止となったことが明らかになりました。

 廃止自体は歓迎すべきことかもしれませんが、下着の色指定や髪の色の統一など、人権侵害につながりかねないような校則が、なぜ令和の時代まで続いてしまったのでしょうか。ここで改めて、なぜブラック校則が問題なのか、なぜ見直しに時間がかかってきたのかを、法的な観点から検討してみたいと思います。

ブラック校則の法的問題

 いわゆる「ブラック校則」が問題視されているのは、生徒の「自己決定権」を不当に制約する可能性があるためです。自己決定権とは、自分の生き方や行動を自分で決める権利を意味します。日本国憲法13条が定める「幸福追求権」の一環として、国民に保障されているとの見解が有力です。

 校則による自己決定権(またはそれに準ずる人格的利益)の制限は、国公立学校の場合と私立学校の場合で異なるものの、必要性と合理性の観点から、合憲性(適法性)がチェックされます。

(1)国公立学校の場合
 国公立学校の校則は、公権力で国民(校則の場合は生徒)の権利を制限するもののため、日本国憲法が直接適用されます。制限の「必要性」と「合理性」が認められなければ、その制限は違憲です。必要性とは「制限の目的が正当」であること、合理性とは「制限の手段が目的と関連しており、かつ過度でないこと」と言い換えてもよいでしょう。目的と手段の両面を考慮して、合理的な範囲を超えた校則による権利の制限は、認められないのです。

(2)私立学校の場合
 私立学校の校則は、公権力によって制定されたものではないため、日本国憲法が直接適用されることはありません。しかし国民の人権保障の観点から、公序良俗(民法90条)など私法上の一般規定に、日本国憲法の趣旨を読み込んで解釈・適用すべきと解されています。従って、私立学校の校則についても、必要性と合理性の観点から問題がないかをチェックする点は、国公立学校の校則と基本的に同じです。ただし、私立学校と生徒の関係性については「私的自治」に委ねるべき部分もあるため、私立の方が国公立よりも、やや緩やかに校則の適法性が認められる傾向にあります。

 では、ブラック校則に「必要性」と「合理性」はあるのでしょうか。一般に、校則を定める目的は、生徒の「非行防止」や「安全の確保」などと説明されます。これらの目的自体には、学校教育上の必要性が認められるケースが多いでしょう。

 しかし、ブラック校則は、上記の目的を達成する手段として「合理性」がないと評価される可能性があります。つまり、ブラック校則には、「目的達成につながらない」または「あまりにも過度な制限を課している」という問題点があるのです。

 例えば、都立高校で全廃に至った「生来の髪を一律に黒色に染色」という校則には、おそらく非行防止の目的が背景にあると考えられます。しかし、髪の色を黒にそろえたとしても、生徒の非行が減るという合理的な根拠はありません。また、元々黒髪でない生徒にも髪の染色を強いるのは、明らかにやり過ぎでしょう。「下着の色指定」に至っては、「非行防止」や「安全の確保」などと目的との関連性がないと考えられるうえに、教員などによる検査が人権侵害ではないか、と長年批判されてきました。

 このようにブラック校則は、その目的はともかく、生徒の権利を制限する手段としての合理性を欠くことを理由に、違憲または違法と判断される可能性があります。

ブラック校則の見直しには時間がかかりがち、なぜ?

 ブラック校則の見直しの動きが遅れている理由の一つには、裁判所が校則の違憲性・違法性の指摘に消極的であった経緯があると考えられます。

 例えば1996年7月18日の最高裁判決では、私立学校におけるパーマ禁止の校則は公序良俗に反せず、校則に違反した女子生徒に対する自主退学の勧告を適法と判示しました。熊本地裁が1983年11月3日の判決で、丸刈りを強制する公立中学校の校則を適法と判示した例もあります。

 このように、裁判所によって「承認」されてきた経緯を頼りに、ブラック校則の正当性を主張する学校関係者が、これまで一定数存在したものと推測されます。しかし近年、ブラック校則に対する社会的な認識は大きく変わりました。そのため、今の時代の裁判所が、先ほど挙げた判決と同様に、ブラック校則を「承認」するような判断を行うかは未知数です。

 東京都の例のように、ブラック校則を見直す動きが、社会全体で徐々に広がっています。今後はいっそう、見直しの動きが加速していく可能性が高いでしょう。

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阿部由羅(あべ・ゆら)

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種ウェブメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。ホームページ(https://abeyura.com/)、ツイッター(https://twitter.com/abeyuralaw)。

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