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若さへの嫉妬?「最近の若者は」と思ったら、年を取った証拠なのか 実体験を聞く

部下の仕事の物足りなさがきっかけ

 Cさん(36歳女性)は、「初めて老いを実感した」きっかけが、「最近の若者は…」と思ったことだったと話します。

「30歳になったとき、『三十路(みそじ)だよ、やばいよー』と騒いでいましたが、内心では『まだ自分は、全然若い』と考えていました。おそらく、周りの同世代もみんなそうだろうと思います。今の30代は昔に比べて若くなっているので」(Cさん)

 若いと見られる年齢は地域によっても差がありますが、一昔前に比べると、確かに「若い」とされる年代は全国的に上がってきている印象です。

「あるプロジェクトで、会社の入社3年目の若手社員とチームを組むことになりました。彼は私より一回り年下で、私は彼を引っ張って盛り立てていこうと張り切っていました。でも、彼の取り組む姿勢が物足りなくて、節々で『最近の若者は…』と思うようになり、やがて『私って、もしかして歳を取った?』と気付きました。

彼への不満は、今思うとただの私の押し付けに過ぎなかったのですが、当時はプロジェクトを成功させたい気持ちも強く、『もっと頑張ってほしい』といったことを彼に話していました。しかし、彼はなかなか思うように動いてくれませんでした。

ある時、彼も自分が興味を持ったことについてなら、そこそこの熱意で取り組んでくれることを発見しました。そこで私は、彼を引っ張るのではなく、彼の自主性をこちらでサポートする態勢に切り替えました。するとプロジェクトをいい具合に進められるようになり、そこそこ成功させることができました。

私としては、後進の指導がうまくいった手応えに満足しています。こうした機会を積み重ねていくうちに、『自分は年を取った』が自然に受け入れられるようになっていく気がします」

 相手への理解が自分自身への理解につながることもあります。Cさんの場合は、まだ「年を取った」を完全に受け入れることはできていないようですが、Cさんなりのペースで前向きに進められている様子は、見ていて安心できます。

「最近の若者は……」は、いつの時代も年長者が若者に対して抱きがちな自然な感情です。そして、ここから一歩考えを進め「自分も年を取った?」「昔、自分も年長者にそう思われていたのかな」などの気付きが得られると、「自分は年を取った」という事実をポジティブな形でそしゃくすることができそうです。

(フリーライター 武藤弘樹)

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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