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妹のおもちゃをかみつぶす兄…障害児ときょうだい児を同時に育てる難しさとは?

障害のある子ときょうだい児を同時に育てる大変さとは、どのようなものなのでしょうか。実際に、知的障害を伴う自閉症の息子とその妹を育てるライターが解説します。

おもちゃをかんだり、分解したりすることが多い息子(筆者作)
おもちゃをかんだり、分解したりすることが多い息子(筆者作)

 筆者には、障害がある7歳の息子と、きょうだい児(障害や病気を持つ兄弟姉妹がいる子ども)の3歳の娘がいます。2人を同時に育てていて、一番大変だと感じるのは、2人分の世話の忙しさやタスクの多さなどではありません。もちろんそれらも大変ですが、障害児ときょうだい児が一緒にいるからこその難しさを感じています。

2人の欲求を同時に満たす難しさ

 娘の2歳の誕生日、筆者と夫は、赤ちゃん人形のセットを娘に贈りました。娘はとても喜び、筆者はその愛らしさに目を細めました。ところが、少しして、夫の驚いた声が聞こえてきました。様子を見に行き、夫に話を聞くと、息子が人形のまつ毛を歯で引き抜こうとしていたというのです。数日後、付属品の哺乳瓶の飲み口が、息子にかみつぶされた状態で見つかりました。

 そこで、筆者は苦渋の決断をしました。人形と付属品のお世話道具を箱に戻し、納戸にしまったのです。そして、息子がいないときか筆者が付き添えるときだけ出して、一緒に遊ぶようにしました。

「娘にあげたプレゼントなのに、娘が自由に遊べないなんて…」

 葛藤はありましたが、娘の手が届く場所に置くと、息子が自由に触れてしまいます。自閉症で重い知的障害がある息子には、人形の正しい遊び方など理解できません。2人とも手が届かない場所に人形を保管する方法しか、思いつきませんでした。

 障害がある息子ときょうだい児の娘を育てていて一番苦悩するのは、娘と息子、双方の欲求を満たす難しさです。おもちゃの扱い方も、娘は人形類を寝かしつけるなどしてかわいがり、絵本はページをめくって絵やストーリーを楽しみます。食べ物や食器に近い形をした物は、おままごとやお店屋さんごっこに使います。

 しかし息子は、おもちゃを何でも分解し、極限までバラバラにしたいようなのです。そして特性上、何でも口に入れて感触を確かめようとします。やっていることは赤ちゃんと同じですが、かむ力は年齢相当の息子。プラスチック類はいくつもかみ砕かれ、娘の人形の塗料は、歯でこそぎ落されました。絵本は破られて、表紙と背表紙だけになっていたこともありました。

 筆者にとって、娘の私物を息子が壊してしまうことは、特につらいことです。娘はまだ幼いこともあって、息子がおもちゃや絵本を壊してしまっても、それほど気にしていないようにも見えました。しかし、娘の立場になって想像すると、息子の存在を理由に、娘が欲しいものを手に入れられないことや、手に入れてもすぐ壊される状況が当たり前になったら、すごく嫌だと思いました。

 おもちゃだけではなく、休日の過ごし方も、息子と娘とでは、求めることがそれぞれ異なります。息子は見慣れない場所や人が多い場所が苦手ですが、娘はその逆です。

 以前、車で娘と息子を連れて、屋外の子どもの遊び場に行ったときのことです。そこは大きな遊具がたくさんあって、大勢の子どもたちが遊んでいました。娘はすぐに車から降り、笑顔で走りだしました。

 しかし、息子は車から降りることを必死で拒否し、一度も外に出られなかったのです。そのときは大人が何人もいたので、娘と息子、それぞれに誰かが付く形で立ち回ることができました。

 このようなことはどこでも起きるので、タイミングや状況次第では難しい判断を迫られます。息子の気持ちも娘の気持ちも大事にしたい、どちらにも我慢をさせたくないのに、思うようにならず、いつも悩みます。

2人の欲求を同時に満たすには?

 この問題を解決する完璧な方法に、まだ出会えていません。それでも、いくつかの対応策は講じています。

 1つ目は、息子だけがいる時間、娘だけがいる時間を確保することです。現在、息子は特別支援学校と放課後等デイサービスに、娘は保育園にそれぞれ通っていますが、金曜日の放課後は、息子と筆者の2人だけで家でゆっくり過ごしています。

 反対に土曜日は、娘の保育園が休みですが、息子は放課後等デイサービスに行きます。そのため、「息子は苦手だけれど、娘がやりたい楽しみ」は、全て土曜日に計画し、娘が好きなレジャー施設や公園に行ったり、アニメ映画を見に行ったりしています。

 このように、息子にも娘にも、きょうだいの意思に左右されない自分だけの特別な時間をつくるようにしています。

 息子が娘のおもちゃを壊すことについては、3つの方法を心掛けています。1つ目は、「物は壊れたら元には戻らない」「自分の物と人の物との区別をつける」ことを息子に根気強く伝えることです。正直、この方法ではなかなか息子の行動を止めることはできませんが、時間がかかっても分かってもらえるように伝え続けることが、親として必要なことだと思っています。

 2つ目は、息子に娘の物を極力触らせないように、注意深く監視することです。息子が娘のおもちゃを触っていたら、できるだけ他の物に興味が移るように誘導します。しかし、息子の目には娘が大事にしている物ほど素晴らしく映るようで、娘のおもちゃを全く触らせないことはできませんし、家事をしながらずっと見張っていられるわけではないので、物理的な難しさもあります。

 それでも、息子の問題行動を事前にやめさせられれば一番よいので、日々かなり神経を使って見ています。

 3つ目は、娘と同じタイプのおもちゃを息子にも与えることです。昨年のクリスマスに、筆者の両親から娘に、ある有名な女の子の着せ替え人形が贈られましたが、その際、息子にも同じシリーズの人形を贈ってもらいました。

 ただ、女の子の着せ替え人形は髪が長いため、以前、息子が別の人形の髪をなめてカピカピにしてしまったことがありますし、装飾品が多いので、誤飲の恐れがありました。そこで、髪が短く装飾品も少ない、男の子の人形を選んでもらいました。娘の人形に手を出した場合を除いて、男の子の人形は、息子がどんな扱い方をしても極力取り上げないようにしました。

 その結果、男の子の人形の方は頭が抜かれるなど乱暴に扱われることがありますが、「自分の人形もある」という意識が働いたからか、娘の人形は今でも壊されることはありません。

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べっこうあめアマミ

ライター、イラストレーター

知的障害を伴う自閉症の息子と「きょうだい児」の娘を育てながら、ライター、電子書籍作家として活動。「ママがしんどくて無理をして、子どもが幸せになれるわけがない」という信念のもと、「障害のある子ども」ではなく「障害児のママ」に軸足をおいた発信をツイッター(https://twitter.com/ariorihaberi_im)などの各種SNSで続けている。障害児育児をテーマにした複数の電子書籍を出版し、Amazonランキング1位を獲得するなど多くの障害児家族に読まれている(https://www.amazon.co.jp/dp/B09BRGSY7M/)。「べっこうあめアマミ」というペンネームは、障害という重くなりがちなテーマについて、多くの人に気軽に触れてもらいたいと願い、夫と相談して、あえて軽めの言葉を選んで付けた。

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