ストーカーから女性、どう守る? ボディーガードが語る緊迫の現場
ストーカーの執念は「やかんのお湯」
結果的に、話し合いは30分程度で終わりました。念のため自宅までお送りして、警備は無事終了です。今回はわれわれの出番はなく、相手もボディーガードがいたとは気付いていないはずです。多くのケースはこのように何事もなく終了し、大抵は平和的に解決しますが、そうでないケースも3割ほど発生します。そもそもが、紳士的な行動を期待できる相手ではありませんので。
そうした場合でも、相手が怒鳴るなど、言葉による脅しだけの場合、われわれはなるべく介入しません。後に、その場での相手の言動や凶暴性が、依頼人にとって有利な証拠となるためです。ただし、その大声すら耐えられないほどおびえている依頼人も多くいらっしゃいます。一度話し合いが始まると、介入のタイミングはわれわれに一任されるので、「どのタイミングで立ち入るか」は最初に決めておきます。当然、暴力の気配を感じたら立ちふさがりますが、「善意の第三者のふり」が通じる限りは、それを通します。
また、基本的には、「ストーカーと会う」のはよい判断ではありません。被害者にとって「ストーカー」とは、二度と会う必要のない人間だからです。向こうは会いたい理由があるのかもしれませんが、こちら側には、会う理由は一つもありません。しかも、1度会えば2度、2度会えば3度と、際限なく“次回”を要求してきます。ただし今回のように、約束をしたために1度は会わざるを得ないケースがあります。その場合、伝えるべきことは一度で全て伝えましょう。基本的に、「ストーカーとの話し合い」は水掛け論であり、時間の無駄だからです。
ストーカーの執念は「やかんのお湯」に似ています。内容はどうであれ、被害者のリアクションは「火」です。反応がある限り、相手の熱は冷めません。解決には、ある程度の時間が必要なのです。ゆえに、ストーカー対策の理想は、被害者と加害者は一切会うことなく、交渉を第三者(弁護士など)に任せること。費用は発生しますが、これが最も安全で、ストレスの少ない方法なのです。
(一般社団法人暴犯被害相談センター代表理事 加藤一統)
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