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中毒症状も? 「猫にミカンを与えてはいけない」のは本当か 受診の目安は?

よく、「猫にミカンを与えてはいけない」と聞きますが、本当なのでしょうか。獣医師に聞きました。

「猫にミカン」は危険?
「猫にミカン」は危険?

 毎年、冬になると「ミカン」を大量に購入し、冷蔵庫や段ボールの中に保管する人もいると思います。一方で「猫にミカンを与えてはいけない」という話を聞くので、猫を飼っている人の中にはミカンの購入をためらったり、置き場所に困ったりするケースも考えられます。「猫にミカンを与えてはいけない」のは本当でしょうか。猫がミカンを食べたり触ったりした場合、どのような影響があるのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。

皮に含まれるリモネンで中毒に

Q.ミカンが猫にどのような影響を与えるのかについて教えてください。「猫にミカンを与えてはいけない」と聞きますが、事実なのでしょうか。

増田さん「まず、ミカンが猫にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを説明します。普段、私たちが食べている果肉部分は猫にとって大きな有害性はありませんが、そもそも、猫は酸味を嫌う傾向があるため、ミカンを食べる猫はまれだと思います。また、ミカンの果肉にはビタミンCが多く含まれていて、人間は好んで食べますが、こちらも猫は体内でビタミンCを合成できるため、積極的に摂取する必要はありません。

果肉は猫に必要ないものの、特に問題はないのですが、問題は皮の部分に含まれる『リモネン』という成分で、猫にとって有害とされています。少量の摂取であれば、大きな問題に至ることは少ないと想定されますが、中毒になった場合、吐き気や手足のけいれんといった症状を引き起こすことが知られています。なぜ、このような中毒症状が起きるかというと、猫はリモネンを代謝し、無毒化する機能を持っていないからです。

リモネンはミカンを含むかんきつ類の皮に含まれており、猫がこれらの果物を摂取することは推奨できません。従って、ミカンは猫にとって、絶対に摂取してはいけない果物ではないものの、積極的に食べるべき果物ではなく、また、猫もミカンが基本的に好きでないことが多いということになります」

Q.体の上にミカンをのせた猫の写真がSNS上に投稿され、問題となったケースもあるようです。皮に中毒症状を引き起こす成分が含まれているということであれば、ミカンの皮にも、できるだけ触れさせない方がよいのでしょうか。

増田さん「ミカンに直接触れた程度であれば、すぐに中毒症状を起こすようなことは極めて少ないと考えられます。もっとも、皮が付いた状態であっても、かんきつ類独特の匂いを発することがあり、その匂い自体を猫が好まない傾向にあるので、単純にミカンを頭などにのせられるのを嫌がることがあるかもしれません。無理強いは避けましょう」

Q.リモネンをどの程度摂取すると、中毒を引き起こすのでしょうか。

増田さん「リモネンの具体的な中毒量、つまり、体重1キログラム当たり何グラムのリモネンを摂取すると中毒に至るのかははっきりしていません」

Q.猫がミカンの果肉や皮を食べた場合、すぐに動物病院に連れて行くべきでしょうか。

増田さん「ごくわずかな量を摂取した場合、すぐに中毒による体調不良を起こすと断言はできませんが、何らかの原因で口にしてしまった後、元気がなくなり、吐き気や下痢などの症状が現れた際は、すぐに動物病院で診察を受けましょう。その際、いつ、どれくらいの量を食べてしまったのかを獣医師に伝えてください。また、ミカンの薄皮や房は猫にとって、消化しにくい可能性があるので、皮だけでなく果肉にも注意してください。

一見症状がない場合でも、心配な場合はかかりつけの動物病院に相談し、診察の必要があるかを判断してもらいましょう」

(オトナンサー編集部)

増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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