食感、カロリー…分かれる好み? 「白米」「玄米」は健康上、どちらを主食にすべき?
主食として日常的に食べられている「白米」と「玄米」。さまざまな違いがあることで知られる両者ですが、健康を意識して、毎日食べるならどちらがよいのでしょうか。管理栄養士に聞きました。

日本人の食事に欠かせないお米。最もポピュラーなのは「白米」ですが、健康志向の一環からか、「玄米」を日常的に食べる人もいるようです。この両者はカロリーや糖質、栄養素、食感に至るまで、さまざまな違いがあるイメージが強いだけに「毎日、主食として食べるならどちらがいいんだろう」と迷う人も少なくないようです。
ネット上では「食べ慣れた白米がやっぱり一番」「食感は玄米の方が好き」など好みが分かれていますが、「カロリーが気になる」「玄米の方が体によさそうなイメージだけど本当かな」など、疑問の声もあります。健康を意識して、毎日食べるなら、白米と玄米のどちらを主食に選ぶとよいのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
栄養価は玄米の圧勝だが…
Q.まず、白米と玄米について、栄養素以外の特徴を教えてください。
岸さん「ぬか層と胚芽があるのが玄米、精米したことで、それらがなくなっているのが白米です。玄米が白米と違い、茶色っぽい色をしているのはこの『ぬか』が付いているからです。ぬかの香りや味に癖があるため、白米と違って粘りが少なく、少しぼそぼそとした食感をしています。
白米と玄米は炊飯にかかる手間が少し異なります。白米を水に浸す時間は20〜30分程度、炊き上がるまでにかかる時間は60分程度であるのに対し、玄米はぬかに包まれているため、浸水時間は5〜6時間、炊き上がりまでの時間も90〜120分と長くかかります。玄米は水を吸収しにくいので、洗米時、表面に傷がつくように少しもみ洗いすると水の吸収がよくなります。玄米を炊くときは水の量を白米の1.2~1.5倍にし、浸水を十分に行って、炊飯器で設定できるようであれば、『玄米モード』で炊飯しましょう。
価格にも違いがあります。ぬかごと摂取する玄米は有機栽培であったり、無農薬、または農薬をなるべく使わないように配慮されていたりと手間がかかるため、値段は1キロあたり600〜1000円と高めになります。一方で、ぬかを取り除く白米は農薬を使っても問題ないため、値段は比較的安く、1キロあたり400〜500円程度です。もちろん、白米でも無農薬栽培のものはあります」
Q.次に両者のカロリーや糖質の違い、含まれる栄養素について教えてください。
岸さん「同じ量を食べるのであれば、白米よりも玄米の方がカロリーも糖質もやや低めですが大差はありません。玄米の食物繊維は白米の約6倍、ビタミンEは約12倍、ビタミンB1は約5倍、ミネラル分のマグネシウムは約5倍、鉄と葉酸も倍以上含まれているので、栄養価的には玄米の方が断然優れています。次に、いずれも水田栽培の米を炊いた状態で比較した値(文部科学省『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』より)を挙げます」
【米100グラム当たりのカロリー】
・白米…168キロカロリー
・玄米…165キロカロリー
【お茶わん1杯分(約150グラム)当たりのカロリー】
・白米…252キロカロリー
・玄米…248キロカロリー
【米100グラム当たりの糖質量】
・白米…36.8グラム
・玄米…34.2グラム
【お茶わん1杯分(150グラム)当たりの糖質量】
・白米…55.2グラム
・玄米…51.3グラム
Q.毎日の主食として「白米」を選んだ場合、考えられる体へのメリット/デメリット、注意点は何でしょうか。
岸さん「白米は玄米に比べて消化・吸収がよく、体調や胃腸の調子がよくない人や歯が弱い人にも適しています。味・食感も好まれやすく、さまざまな調理に適し、料理に合うことも玄米より需要が高い部分につながります。ただ、玄米と比較すると栄養価が低く、糖質が主となってしまって血糖値が急激に上がるため、昨今では『太りやすい』と敬遠されがちです。
しかし、糖質もエネルギーのもとになる大切な栄養素です。それぞれに見合った適量を摂取することと、体調を考慮すること、そして、食事全体のバランスを意識して楽しむことが大切です」
Q.一方、毎日の主食として「玄米」を選んだ場合ではどうでしょうか。
岸さん「先述の通り、白米と比較するとビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養成分量は玄米の圧勝です。かみ応えがあり、腹持ちもよいです。豊富な食物繊維が血糖値の急激な上昇を抑えるとともに腸内環境を整えるので、デトックス効果も期待できます。
しかし、玄米はよくかまないと消化不良を起こしてしまいます。高齢者や、胃腸や体調がよくない人は注意が必要です。また、玄米の場合、農薬を使っているとどうしても、ぬかの部分に農薬が残ってしまいやすいので、気になる人はなるべく、無農薬のものを選びましょう」
Q.「体によい」「健康によい」ことを考えた場合、毎日の主食として特におすすめなのは白米・玄米のどちらでしょうか。
岸さん「おのおのにとっての健康の意味が違ってくるので、一概にどちらがよいということはいえませんが、やはり、栄養価を考えると玄米の方が圧倒的に優位なので、一般的には玄米の方が健康によいといえそうです。しかし、栄養価だけにとらわれない視点も大切であることを念頭に置きましょう」
Q.白米と玄米は、それぞれどのような人におすすめできますか。
岸さん「消化機能の未熟な小さい子どもや、素早いエネルギー補給が必要なアスリートは消化・吸収の早い白米が向いています。主食以外からのビタミン、ミネラル、食物繊維の過不足がないように注意しましょう。一方で、ダイエット中の人や糖尿病などの生活習慣病がある人は、栄養価が高く、血糖値を上げにくい玄米がおすすめです。外食や、ダイエット中の少ない食事の中で補い切れない栄養素を主食から摂取できるため効率的でしょう」
(オトナンサー編集部)
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