オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

月見うどんの「卵」、つぶすタイミングは人それぞれ 栄養に違い? 各メリットは?

十五夜が近くなり、「月見」と名前の付いたメニューをテレビCMやチラシでよく見かけます。月見の元祖といえる「月見うどん」の卵は、いつ、つぶして食べるのがベストなのでしょうか。

月見うどんの卵、いつつぶす?
月見うどんの卵、いつつぶす?

 9月21日の十五夜が近くなり、ファストフード店などの「月見」と名前の付いたメニューが、テレビCMやチラシで告知されています。その月見の元祖ともいえるのが、うどんの上に生卵をのせた「月見うどん」ですが、どのタイミングで生卵をつぶして食べるのかは人それぞれです。

 では、卵をつぶすタイミングによって、栄養は違ってくるのでしょうか。それぞれの食べ方のメリット、デメリットはあるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

うどんに黄身でまろやかに

Q.うどんに卵を入れるのと入れないのでは、栄養バランスの視点からどのような違いがありますか。

岸さん「『○○うどん』と呼ばれる料理は一般的に、具材よりも麺類の量の方が多く、栄養価が炭水化物に偏りがちになり、栄養のバランスを整えるのが難しいとされています。一方、卵は食物繊維とビタミンC以外のさまざまな栄養素が含まれており、とても栄養価が高い食品です。

うどんに卵をトッピングすることは、栄養のバランスを整えるためにとても有効な組み合わせだと思います。特に、肉類と比較して脂質が少なめなので、カロリーを抑えつつ、タンパク質を補給したいときにもよいですね」

Q.卵の黄身をうどんと絡めて食べると、味がまろやかになります。なぜ、黄身を絡めると、味がまろやかになるのでしょうか。

岸さん「体に必要なエネルギー源の一つである脂質には、口当たりを滑らかにする効果があります。卵の黄身には、コレステロールも含めたすべての脂質が含まれているため、うどんに黄身を絡めるとまろやかに感じるのです」

Q.代表的な月見うどんの食べ方に(1)卵をすぐにつぶして、汁と混ぜる(2)卵をすぐにつぶすけど混ぜない(3)最初に卵を汁に沈めて、後半になってからつぶす(4)卵はまったくつぶさず、最後につるっと飲み込む――があると思います。それぞれの食べ方のメリット、デメリットは何ですか。

岸さん「個人の好みであるため、それぞれの食べ方によしあしがあるわけではありません。ただ、それぞれの食べ方のメリットやデメリットは次のようなものが挙げられると思います」

【卵をすぐにつぶして汁と混ぜる】
うどんの汁が卵風味になって甘みが出るため、それを好む人には向いています。しかし、卵と汁が混ざり、汁が白濁してしまうため、見方によっては少し汚く見えることがあります。

【卵をすぐにつぶすけど混ぜない】
汁の風味を大きく変えずに味わうことができます。また、卵のとろけた部分にうどんを絡めて、まろやかな味で食べることもでき、一つの器で味の変化を楽しむことができます。

【最初に卵を汁に沈めて、後半になってからつぶす】
汁の熱によって卵が温められ、卵白がおぼろ状に変わります。月見の由来である「朧月(おぼろつき)」の風情が表れやすいですね。こちらも、汁の風味と卵のまろやかさの両方を味わうことのできる食べ方です。

【卵はまったくつぶさず、最後につるっと飲み込む】
他の食べ方よりも汁から熱が伝わる時間が長くなるため、卵白がおぼろ状になりやすく、最後まで、朧月の風情を器の中で楽しむことができます。一方、卵をつぶさないため、まろやかさなど味の変化を楽しむことはできません。

Q.栄養的に見ると、どの食べ方が最も効率よく栄養を吸収できるのでしょうか。

岸さん「卵は半熟の状態が最も消化されやすい特性があります。しかし、月見うどんくらいの温かさでは、白身部分がおぼろ状になっても半熟の状態にはならないため、先述したようないずれの食べ方であっても栄養的に差はありません」

Q.では、月見うどんと見た目は少し変わりますが、うどんに半熟卵をのせると最も効率よく、卵から栄養を吸収できるということでしょうか。

岸さん「その通りです。半熟卵をのせることが一番です。温泉卵もよいです。一般的には生卵を乗せるのが月見うどんですが、温泉卵をうどんにのせているお店もあります。体調が悪いときや胃腸が弱っているときに月見うどんを食べる際は、半熟卵や温泉卵の方がおすすめです」

Q.栄養的にもおいしさにも優れた、おすすめの月見うどんのトッピングを教えてください。

岸さん「月見うどんのトッピングとして、卵の他に、とろろ昆布やノリ、ワカメを入れることがあります。とろろ昆布はススキに見立てられ、ノリやワカメは漆黒の夜空を演出する意味があるそうです。栄養的にも、これらのトッピングをした方が、ミネラル類や卵には含まれない食物繊維を確保できるため、おすすめします」

(オトナンサー編集部)

岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

コメント