コロナで一日葬増加も…「通夜」は本当に必要なのか 費用以外のメリットも?
「送り出し」の準備
親族があまりいない、高齢者が多いなど、さまざまな事情を抱える人がいるので、筆者は一概に「通夜を行うべきだ」と押し付けるつもりも、一日葬を否定するつもりもありません。ただ、通夜の意味を伝えていく必要はあると思っています。通夜は、元々は葬儀前夜に遺族らが故人の霊を守り、最後の夜を過ごす趣旨のものですが、「大切な送り出しの日に向けて、皆でその準備をしている」と思えば理解しやすいと思います。現在も、旅立ちの日である告別式の日が葬儀で最も大切にされている日には変わりありませんが、昔と比べると、通夜にだけ出席することにも大切な意味があるという運用に変わってきています。
「手軽に、短期間に、安く」というのが現代の日常生活におけるニーズです。しかし一方で、時間をかけ、安心してゆっくりと行うことが「非常に丁寧」と感じられる世界があります。儀式の世界はあえて時間をかけ、丁寧に行われる非日常の世界です。時間をかけて焼香し、礼拝して、死というものを収めていくのが葬式です。「できる範囲で、できるだけ行う」のが弔いというものであり、先人たちの試行錯誤の中で決まってきたスタンダードなので、通夜を行うことにもやはり、それなりに意味があることだと思います。ご遺族にとって、どんな形の葬儀が一番よいのかを考えていくのも葬儀社の使命ではないかと筆者は思うのです。
(佐藤葬祭社長 佐藤信顕)
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