オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

コロナで一日葬増加も…「通夜」は本当に必要なのか 費用以外のメリットも?

「送り出し」の準備

 親族があまりいない、高齢者が多いなど、さまざまな事情を抱える人がいるので、筆者は一概に「通夜を行うべきだ」と押し付けるつもりも、一日葬を否定するつもりもありません。ただ、通夜の意味を伝えていく必要はあると思っています。通夜は、元々は葬儀前夜に遺族らが故人の霊を守り、最後の夜を過ごす趣旨のものですが、「大切な送り出しの日に向けて、皆でその準備をしている」と思えば理解しやすいと思います。現在も、旅立ちの日である告別式の日が葬儀で最も大切にされている日には変わりありませんが、昔と比べると、通夜にだけ出席することにも大切な意味があるという運用に変わってきています。

「手軽に、短期間に、安く」というのが現代の日常生活におけるニーズです。しかし一方で、時間をかけ、安心してゆっくりと行うことが「非常に丁寧」と感じられる世界があります。儀式の世界はあえて時間をかけ、丁寧に行われる非日常の世界です。時間をかけて焼香し、礼拝して、死というものを収めていくのが葬式です。「できる範囲で、できるだけ行う」のが弔いというものであり、先人たちの試行錯誤の中で決まってきたスタンダードなので、通夜を行うことにもやはり、それなりに意味があることだと思います。ご遺族にとって、どんな形の葬儀が一番よいのかを考えていくのも葬儀社の使命ではないかと筆者は思うのです。

(佐藤葬祭社長 佐藤信顕)

1 2

佐藤信顕(さとう・のぶあき)

葬祭ディレクター1級・葬祭ディレクター試験官・佐藤葬祭代表取締役・日本一の葬祭系YouTuber

1976年、東京都世田谷区で70年余り続く葬儀店に生まれる。大学在学中、父親が腎不全で倒れ療養となり、家業を継ぐために中退。20歳で3代目となり、以後、葬儀現場で苦労をしながら仕事を教わり、現在、「天職に恵まれ、仕事も趣味も葬式」に至る。年間200~250件の葬儀を執り行い、テレビや週刊誌の取材多数。YouTubeチャンネル「葬儀葬式ch」(https://www.youtube.com/channel/UCuLJbkrnVw6_a35M0rk8Emw)。

コメント