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御霊前か御仏前か、迷う必要なし 香典の「表書き」に“正しい”マナーはない

画一的な「絶対正しい」はない

「浄土真宗は『御仏前』。では、他の宗派のときは『御仏前』ではいけないのか?」。そんな疑問を持つ人もいるかもしれません。答えは「いいえ、全く問題ありません」です。というよりも、他宗では「一般弔問客の香典の表書きに言及していない」というのが実際のところです。知り合いのお坊さん数人に聞いてみましたが「仏式のお葬式なんだから、『御仏前』でもいいんじゃないの」と“御仏前肯定派”の方が多かったのです。

 浄土真宗側からすると、考え方の説明はさまざまにあるようですが、「霊」という言葉を使わないというのが作法です。そのため、ちょうちんを飾るときも「御霊灯」という表記は禁止です。「“霊”の使用禁止」という作法は葬祭業に携わっている人なら皆知っている「浄土真宗さんのドレスコード」的なもの。そのため、表書きには「御霊前」と書かないのが原則ですが、実際に香典を受け取るのは遺族ですから、そこまで厳密な運用をしていないのが実情です。

 また、中には、緩やかに運用している浄土真宗の住職もいます。それは香典のやりとりが葬儀本体ではなく、「みんなが行っている風習の部分だから、僕らがとやかく言うことではない」とする考えからのようです。

「正しい表書き」とはとても難しいもので、何が正しいのかは構成集団や先例、論理性の中で決まります。一概に「正しいマナーはこれ」と教える人はマナーそのものが分かっていないといえます。正しさの定義は変化するものであり、「どの集団で、どのようにやってきたか、今どうしているか」がマナーの本質だと思うからです。

 表書きに限らず、マナーとは歴史であり、文化そのものです。その土地、その集団においての「正しさ」ですから、画一的な「絶対正しいもの」はあり得ないのです。

(佐藤葬祭社長 佐藤信顕)

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佐藤信顕(さとう・のぶあき)

葬祭ディレクター1級・葬祭ディレクター試験官・佐藤葬祭代表取締役・日本一の葬祭系YouTuber

1976年、東京都世田谷区で70年余り続く葬儀店に生まれる。大学在学中、父親が腎不全で倒れ療養となり、家業を継ぐために中退。20歳で3代目となり、以後、葬儀現場で苦労をしながら仕事を教わり、現在、「天職に恵まれ、仕事も趣味も葬式」に至る。年間200~250件の葬儀を執り行い、テレビや週刊誌の取材多数。YouTubeチャンネル「葬儀葬式ch」(https://www.youtube.com/channel/UCuLJbkrnVw6_a35M0rk8Emw)。

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コメント

1件のコメント

  1. 火葬前が【御霊前】火葬後が【ご仏前】という人もいるが、「臨終→仮通夜→火葬→通夜→告別式」で
    行う事が普通の函館の場合はどういうのだろう。