「何度も聞くのが悪い」vs「心が折れる」…上司が部下に言う「前にも言ったよね」はアリかナシか
会社の上司が部下によく言う「前にも言ったよね」についてSNS上で議論に。怖くてミスする」「心が折れる」という意見と、「覚えない場合は言うしかない」「何度も聞く方が悪い」という意見が衝突しています。あなたの見解は。

会社などで、指導する側(上司)が指導される側(部下)に言う「前にも言ったよね」についてSNS上で白熱した議論が交わされています。特に「新人に対しては禁句」という意見を巡って「これを言われるのが怖くなってミスする」「本当に心が折れるし、わからないことを聞きづらくなる」など“言われる側”の論理と、「何回言っても覚えない場合は言うしかない」「メモも取らずに何度も聞く方が悪い」など“言う側”の論理が激しくぶつかり合っています。
これについて「マナーのプロ」の見解はどのようなものでしょうか。企業や大学などで人財育成やマナーコンサルティングを行い、上司と部下のコミュニケーションやリーダー育成、新人教育、営業接客マナー、接遇などのマナー本が国内外で70冊以上(累計100万部超)のマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。
お互いの立場を想像し、置き換えてみる
Q.会社などの、指導する側とされる側の関係においては「前にも言ったよね」を使ってもよいのでしょうか。
西出さん「『前にも言ったよね』という言葉を使うこと自体は問題ありません。しかし、この言葉を言われることで部下が傷つくのであれば、言わないようにするのが上司としてのマナーと言えるでしょう。ただし、ここで大事なことは、上司だけがマナーを実行すればよいわけではありません。マナーは『お互いさま』が大前提にあります。大切なことは、双方が相手の立場に立ち、相手の気持ちを想像し、慮ることだと思います」
Q.この場合の相手の「立場」「気持ち」とはどのようなものですか。
西出さん「たとえば、新人はいつか自分が上司の立場(指導する側)になった時のことを、上司はかつて自分が部下として指導を受けていた時のことを、経験の有無にかかわらず想像し、状況を置き換えてみるのです。相手の立場に立つことで、部下は『前にも言ったよね』と言わざるをえない上司の気持ちや状況を、上司は『前にも言ったよね』が決して気持ちのよい言葉ではないことを、そして、相手や場合によっては深く傷つくこともあることを理解できると思います。年代や育った環境などが異なる人たちが職場にはいます。そういう人たちと一緒に仕事をする時、お互いの立場に立って思いやる心から成るマナーが大切なのです」
Q.「前にも言ったよね」を使いたい時、どのような点に配慮すべきでしょうか。
西出さん「悪気なく、つい出てしまうのかもしれませんが、このセリフを発する目的・意義を明確にすることです。上司が発する『前にも言ったよね』は、部下に対する嫌味ではなく『同じミスをしないよう成長してほしい』と部下の成長を願う思いやりのある気持ちが前提でなければ、部下に受け入れてもらえる、結果を出す正しい指導とは言えません。ひいてはそれが、お客様や取引先などへのサービス向上につながるわけです。『前にも言ったよね』と言いたくなったら、一度深呼吸をしてから『勘違いだったら悪いんだけど』などのまずはクッション言葉を伝え、その後『このこと前にも伝えていなかったっけ?』と『?』をつけて部下に聞く言い方をしてみましょう。このような場合は、強く断定する言い方は控えることをお薦めします。部下が萎縮してしまうからです。上司の言い方一つで部下の感じ方は大きく変わります。このように伝えることで、部下も素直に『申し訳ありません。前にも注意をされました』と言えるかもしれません。これだけでも、お互いのコミュニケーションに良い変化を及ぼし、部下の成長ゴールへの距離も変わります」
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