食器を落としたら…店員は大声で、全員で謝るべき? 2000人調査、専門家の見解も
なぜ、接客やサービスが過剰に?

続いて、飲食店コンサルタントの成田良爾さんに話を聞きました。
Q.店員が食器を落とした際、大声で「失礼しました!」と謝る行為について、アンケートでは7割以上の人が「謝ってほしいが、大声は必要ない」と答えています。どう思われますか。
成田さん「大声で謝る必要はないと私も思います。仕事柄、さまざまな飲食店の社員教育マニュアルを見てきましたが、『グラスを割るなどの粗相があった場合、お客さまに“失礼いたしました!”と謝る』といった記述が、主にチェーン店や大型店舗のマニュアルで見られました。おわびは当然ですが、中には、店全体に聞こえるくらいの大声で謝らせる、度を過ぎた教育をしている店もありました。『大声で謝る行為』は接客のマニュアル化によって生まれた、よくない慣行だと思います」
Q.他の店員も一緒になって謝る行為は、約8割が「全員で謝る必要はない」と回答しています。
成田さん「判断が難しいところですが、お客さまを不快にさせたことへのおわびの一言ですので、各店員が近くにいるお客さまに『びっくりさせて申し訳ない』とコミュニケーションを取ることは必要だと思います。しかし、その際も大声は必要ありません」
Q.「飲食店の接客やサービスが過剰」と約6割の人が答えています。なぜ、店は過剰とも思える接客やサービスを行うのでしょうか。
成田さん「1980年代後半のバブル経済の頃から、チェーン店や大型店の出店が急増し、飲食業に就業する人が一気に増えました。しかし、社員教育が追い付かずに接客の質が全体的に落ちてしまい、接客レベルを維持するため、店舗でハウスルール(店員が最低限守るべきルール)を設けるなど社員教育をマニュアル化しました。その中に『クレームになりにくい接客マナー』の一つとして、『食器を落とした場合には“失礼いたしました”と大きな声で言う』があります。
しかし、マニュアル化によって、『失礼いたしました』を発する本来の『意図』が教育されず、ただ『作業』としての『失礼いたしました』だけを指導している店が多いのも現状です。企業にとって、クレームを最小限にするためには必要なハウスルールでしたが、今後は意図を明確にした接客サービスを教育していくことも必要でしょう」
Q.飲食店コンサルタントの立場から見て、飲食店の接客やサービスで過剰だと思ったことがあれば教えてください。
成田さん「私見ですが、顧客がトイレから戻ったときにおしぼりを新しいものに取り換えることや、必要以上の取り皿の交換、まだ水が入っているグラスに水をつぎ足すことは過剰サービスだと思います。
トイレの後におしぼりを渡すサービスは、くみ取り式トイレが主流だった時代、店員がトイレに行った客を、手拭いを持ってトイレの前で待っていたことがきっかけで始まりました。当時はトイレの設置場所が店から離れている場合もあり、客が『トイレに行く』と言って、そのまま飲み逃げする可能性もあったためでその名残です」
Q.飲食店が過剰な接客やサービスを続けた場合、集客や店の運営にどう影響するのでしょうか。
成田さん「飲食店側は『クレームになりにくい接客マナー』を教育しているつもりでしょうが、アンケート結果を見る限り、過剰な接客やサービスを続けた場合、客数や売り上げが減少する可能性はあります。ただ、過剰な接客やサービスをやめると、それを求める顧客からの不満やクレームが増えることも考えられます。彼らが少数派だとしても、社会への影響力によっては飲食店経営が傾きかねません。ここはまさに経営判断で、どちらがよいとも悪いともいえないでしょう」
Q.では、飲食店が過剰な接客やサービスを見直しつつ、できるだけ、客からの不満やクレームを少なくすることは可能なのでしょうか。
成田さん「先述のように、過剰かどうかは顧客の受け取り方次第です。『おもてなし』という言葉がありますが、語源は相手を敬い、心を『持って』作業を『成す』からきています。顧客によって、『何が心地よいか』『何を必要としているのか』はそれぞれ異なります。『“失礼いたしました!”と大きな声で謝る』という『作業』のみを教えるマニュアルではなく、その『意図』を明確に教え、個々のお客さまに対応できるアドリブ力を身に付ける取り組みが有効でしょう」
Q.このほか、アンケートでは「横柄な客には毅然(きぜん)と対応してほしい」という意見もありました。客による悪質なクレームや嫌がらせがあった場合、店はどう対処すべきなのでしょうか。
成田さん「客による店への悪質なクレームや嫌がらせなどは『カスタマーハラスメント』などといわれ、近年問題になっています。私の事務所に相談にいらっしゃった飲食店さまの例では、他の客に聞こえるような大声で『店員のサービスがなっていない』『料理がおいしくない』などと怒鳴りつけ、値引きやサービスを請求してくる客や、必要以上に店員を呼んで話し相手をさせ、他の仕事をできなくさせる客がいました。
私の事務所ではまず、『その場の店員が明確に意思表示をすること』、それでも客が態度を改めなければ、店の責任者が『態度を改めなければ、お帰りいただく』旨を『警告する』など毅然とした対処が必要だとアドバイスしています。もし、警告をしても客が態度を改めないのであれば、営業妨害として警察に通報しましょう」
Q.飲食店で、客と店員がお互いに気持ちよく過ごすには。
成田さん「飲食店は食欲を満たすだけの場所ではありません。人とのコミュニケーションやリラックスできる雰囲気、日常とは違ったおいしい食事など、心も体も元気になれる素晴らしい場所です。客も店員もお互いに相手を敬い感謝し、日本人ならではの『おもてなし』のコミュニケーションの心掛けが必要ではないでしょうか」
※この記事はオトナンサーとYahoo!ニュースによる共同企画で、Yahoo!ニュースが実施したアンケートの結果を活用しています。アンケートは3月16日、全国のYahoo! JAPANユーザーを対象に行い、2000人から有効回答を得ました。年代は30代20%、40代36%、50代以上35%が多く、男女比はほぼ6対4。職業は会社員53%が最多で、専業主婦(主夫)11%、自営業10%などでした。
(オトナンサー編集部)

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