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ムダな労力? ビジネスメールの「To」は役職順にすべきなのか

ビジネスパーソンであれば誰しも、メールの宛先を「役職順」にすべきかどうかで迷ったご経験があるはず。SNS上でも「役職順にしないとマナー違反」「ムダな労力」など白熱した議論が行われています。そこでマナーのプロの見解やいかに――。

ビジネスメールの「To」は役職順?

 ビジネスメールの宛先(To)を「役職順」にすべきかどうかを巡る議論がSNS上で交わされています。「メールの宛先欄は役職順にしないとマナー違反」との指摘がある一方、「ムダな労力」という反対意見も。以下「本当にムダ」「ToとCcの区別を間違えなければ問題ない」「うちの会社は役職順」「役職順にするよう後輩に指導している」など議論は白熱しています。

 これについて「マナーのプロ」の見解はどのようなものでしょうか。企業や大学などで人財育成やマナーコンサルティングを行い、上司と部下のコミュニケーションやリーダー育成、新人教育、営業接客マナー、接遇などのマナー本が国内外で70冊以上(累計100万部超)のマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。

相手への敬意を表現する日本文化

Q.ずばり、ビジネスメールの宛先は役職順にすべきなのでしょうか。

西出さん「面倒だと思う方もいらっしゃるとは思いますが、メールの宛先を役職順に並べるのは、ビジネスマナーの基本と言えます。昨今『相手を敬う』という意識が希薄になりがちですが、相手に対して敬語を使ったり、役職にのっとって席次表を作ったりするなど、日本には本来、相手を敬い、それを表現する文化が数多くあります。メールも例外ではないと考えてみてはいかがでしょうか。メールの宛先を役職順に並べるという気持ちが相手を敬うことにつながります。ムダな労力と思う気持ちもわかりますが、そのひと手間をかけるかどうかで、相手からの評価に違いが出る可能性があります。とはいえ、そもそもメール自体が簡略的なやり取りをベースにしたものであるため、必ずそうしなければならないという決まりはなく、マナーとして強制するものでもありません。また、受信側が順序にこだわらない場合もあるでしょう。ここでビジネスマナーとして大事なことは、一般的に受信側がどう感じ、どのように思うかを考えた上で、自社としての方針を明確にしたり、上司や先輩の指導に従ったりすることだと思います。会社として特にこだわりがない場合、自分が善かれと思うことを実行すれば問題ありません」

Q.一般的に、ビジネスメールを送る上で注意すべきことは何でしょうか。

西出さん「受信者はそれぞれ感じ方や考えは異なります。それを前提に、ビジネスシーンでも、簡易にコミュニケーションを取ることを目的にパソコンからメールを送信していましたが、近年は、さらに簡単にコミュニケーションが取れるLINEなどのツールが普及したことにより、メールは丁寧に書き、失礼のないように送信するという意識に変化しつつあるのも間違いありません。現に、最近では『メールではなく、LINEの方が楽なのでLINEでよいですか』というビジネスパーソンも少なくありません。以前は『手紙や電話、FAXではなくメールでよいですか』という時代だったのですが(笑)。時代とともに変化することもありますね。マナーは面倒だと思われることも多いと思いますが、仕事上はさまざまな年代や立場、考え方の相手が存在します。メールを送る場合、相手からマイナスに思われるかもしれない要素は極力排除し、心配りを欠かさないことがプラスに作用すると思われます。相手を敬う気持ちを常に意識し、ビジネスシーンに自然と反映できればよいですね」

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西出ひろ子(にしで・ひろこ)

マナーコンサルタント、マナー解説者、美道家

ヒロコマナーグループ代表。一般社団法人「マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会」代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経て、マナー講師として独立。マナーの本場英国へ。オックスフォードにて、オックスフォード大学大学院遺伝子学研究者のビジネスパートナーと1999年に起業し、お互いをプラスに導くマナー論を確立させる。帰国後、名だたる企業300社以上にマナーコンサルティングなどを行い、他に類を見ない唯一無二の指導と称賛される。その実績はテレビや新聞、雑誌などで「マナー界のカリスマ」として多数紹介。「マナーの賢人」として「ソロモン流」(テレビ東京)などのドキュメンタリー番組でも報道された。NHK大河ドラマ「龍馬伝」をはじめ、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、映画「るろうに剣心 伝説の最期編」などのドラマや映画、CMのマナー指導・監修者としても活躍中。著書は28万部突破の「お仕事のマナーとコツ」(学研プラス)、16万部を超える「改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書」(プレジデント社) など監修含め国内外で100冊以上。「10歳までに身につけたい 一生困らない子どものマナー」「かつてない結果を導く 超『接待』術」(共に青春出版社)など子どものマナーから、ビジネスマナー、テーブルマナーなどマナーのすべてに精通。ヒロコマナーグループ(http://www.hirokomanner-group.com)。
※「TPPPO」「先手必笑」「マナーコミュニケーション」「真心マナー」は西出博子の登録商標です。

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