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宿題を代行、荷物も準備…過保護・過干渉「ヘリコプターペアレント」の問題点

子どもの失敗を恐れ、常に監視する過保護な親を「ヘリコプターペアレント」、子どもの行く先に支障がないよう、ならしていく親を「スノープラウペアレント」と呼ぶそうです。それぞれ、問題はないのでしょうか。

「ヘリコプターペアレント」の問題点は?(C)あべゆみこ
「ヘリコプターペアレント」の問題点は?(C)あべゆみこ

「子どもが失敗するのがかわいそうで見ていられない」「子どもの失敗は親の責任」「子どものために、よかれと思って」。わが子にとって危険なことがないか気になるあまり、自分でも気付かないうちに、まるで子どもの頭上をパタパタと旋回する“ヘリコプター”のような親になってはいませんか。危険がないかを常に監視する過保護・過干渉な親のことを「ヘリコプターペアレント」というそうです。

 一方で、子どもが自分の力で困難を乗り越えて進もうとしているのに「これは危ないから」「これは邪魔だから」と考えて、まるで除雪車のように雪をかき分け、子どもの通る道をならしていく親を「スノープラウペアレント」と呼ぶそうです。

けんかも時には必要なのに…

 ヘリコプターペアレントやスノープラウペアレントと、その子どもによく見られる「あるある」な光景をご紹介します。

【「仲良く遊ぶのよ」とくぎを刺す】

 子どもとその友達に対して、まだけんかもしていないのに、親が「仲良く遊ぶのよ」と事前にくぎを刺してしまうケースです。子ども同士のけんかやおもちゃの取り合いは、社会性を学ぶことができる貴重な体験です。けんかをすることを前提にくぎを刺してしまうと、そうした機会を奪ってしまうことになります。道具を持って友達をたたいたり、砂をかけたりするなど、相手にけがをさせるような行為以外は様子を見守りましょう。

【忘れ物を届ける】

 子どもが筆箱などを忘れたとき、「今日一日困るだろう」と思って、親がついつい届けてしまうケースです。忘れ物を届けることで、子どもは「僕(私)が忘れても親が届けてくれる」と学習してしまい、「忘れ物に気を付けないといけない」という意識が薄らいでしまいます。また、子どもが何も言わなくても親が助けてばかりいると、困った状況に陥ったときも自分から他人に助けを求めることができず、受け身になってしまう可能性もあります。

「忘れ物をして困った」という経験をきっかけに、子どもの中に「明日から忘れないように気を付けよう」という意識が生まれるかもしれません。また、先生やクラスメートに自分からSOSを出せるようになったり、代用品の工夫ができるようになったりするなど、ピンチを切り抜けるためにはどうすればいいのかを自ら考え、行動に移せるようになる可能性もあるでしょう。

 また、ピンチに見舞われたときに周囲から親切にされれば、その経験を通じて、「友達を大切にしよう」「今度は、僕(私)が誰かを助けてあげよう」と思うようにもなるかもしれません。

【子どもがやろうとする前から口うるさい】

 気が利き過ぎるのか、せっかちな性格で待てないのか、子どもの自主的な行動より前に親がつい、「喉が渇いているんじゃないの?」「トイレに行きたいんじゃない?」「忘れ物はない?」などと言ってしまうケースです。こうした経験を繰り返せば、子どもは自分でSOSが出せなくなったり、指示待ち人間になってしまったりするかもしれません。

 他にも、次のようなケースがよく見られます。

・子どもの友達を親が決め、「○○ちゃんと遊びなさい。□□君とは遊んではだめ」と指示する
・夏休みの作品を「出来栄えがパッとしないと、子どもが恥ずかしい思いをするだろう」と親が作ってしまう
・「野球をやりたい」という子どもの意思を無視して、「サッカーの方がこれからもっと人気になるから」と親が習い事を決めている
・もう4歳を過ぎているのに「自分のことは自分でしましょう」と言いながらも通園バッグの中身を親が全て準備している

失敗は成長のチャンス

 ある小学生の話です。プールに行くとき、その子は水泳帽と水着を持っていくのを忘れました。プールで着替えようとしたら、水着も帽子もゴーグルもありません。「わああ、お母さんが入れてくれなかった!」と騒いでいました。

 すると、コーチから、「何でお母さんのせいにしちゃうの?」と諭されました。そして、「お母さんが泳ぐんじゃないよね。自分の水着なんだから、今度からは自分でちゃんと用意してね」と言われていました。この子は親からではなく他人に「自分の物は自分で準備しなくてはならない」ということを教えてもらったのです。

「子育ての目的は、最終的には自立」と言われますが、何も親元を離れて生活し、自分で生計を立てることだけが自立ではありません。幼い頃から幾度となく壁にぶつかり、失敗したり転んだりして、自分で策を練る体験を積ませることが将来の自立につながります。子どもは失敗することで多くのことを学んでいるのです。成長のチャンスを親が奪わないようにしましょう。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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