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賭けマージャン問題で検察審査会「起訴相当」→罰金、そもそも検察審査会って?

元東京高検検事長の賭けマージャン問題は検察がいったん、「不起訴」とした後、「検察審査会」の議決から罰金刑へとつながりました。検察審査会制度とは、どういうものなのでしょうか。

黒川弘務氏(2019年1月、時事)
黒川弘務氏(2019年1月、時事)

 元東京高検検事長、黒川弘務氏の賭けマージャン問題について、東京地検特捜部が3月18日、同氏を単純賭博罪で略式起訴し、東京簡裁が3月25日、罰金20万円の略式命令を出したとの報道がありました。東京地検はいったんは黒川氏を不起訴処分にしていましたが、東京第6検察審査会が「起訴相当」と議決したことを受けて再捜査を行い、正式な裁判を開くことを求めない「略式起訴」としたものです。

 そもそも、この「検察審査会」制度とはどういうものなのでしょうか。また、黒川氏の件はこれで完全に終わりなのでしょうか。弁護士の藤原家康さんに聞きました。

一般市民の感覚を反映

検察審査会制度の流れ
検察審査会制度の流れ

Q.検察審査会制度の概要を教えてください。

藤原さん「刑事事件で、検察官が『不起訴』処分をした場合、被害者等が検察審査会に申し立てると、審査会で『不起訴処分が妥当かどうか』が審査されます。検察審査会は20歳以上で、衆議院議員の選挙権がある人の中から、くじで選ばれた11人の『検察審査員』で構成されます。

検察審査会において、審査の後に議決がなされますが、議決には(1)起訴相当(2)不起訴不当(3)不起訴相当の3つがあります。(1)の議決は8人以上の多数で決まります。(2)(3)は過半数で決定します。(1)か(2)の議決があった場合、検察官は速やかに、議決を参考にして、起訴すべきか否かを検討した上、起訴か不起訴かの処分をしなければなりません。

(1)の議決を踏まえた上で、検察官が改めて不起訴処分をした場合、その議決をした検察審査会は、検察官が決めた不起訴処分が妥当かどうかを再び審査します。この2回目の審査で『起訴をすべきだ』とする議決は8人以上の多数によります。

この議決がなされると、事件は必ず起訴されることになります(『強制起訴』と言われます)。裁判所は、起訴をして事件を進める者を弁護士の中から指定します。その弁護士が検察官の代わりを務めて、裁判が開かれることになります。

なお、検察審査会はほかにも、検察事務の改善についての提案や勧告も行います」

Q.検察審査員は国民の中から、くじで選ばれるとのことですが、法律知識の乏しい人もいると思います。起訴するかどうかの判断ができるのでしょうか。

藤原さん「できます。検察審査会制度の趣旨は一般市民の感覚を反映させることにあり、むしろ、法律知識がないことを前提とした判断が想定されています」

Q.検察審査員に選ばれた人が断ることはできるのでしょうか。

藤原さん「70歳以上である場合、重い病気や海外旅行などやむを得ない事由があり、検察審査会が承認した場合など一定の場合に断ることができます」

Q.黒川氏の件で、検察審査会は「起訴相当」と議決しましたが、東京地検は正式な裁判を行わない「略式起訴」を選択し、東京簡裁が略式命令を出しました。この場合、検察審査会が「正式裁判をすべきだ」と要請することはできないのでしょうか。あるいは、他の機関が「正式裁判をすべきだ」と要請することはできないのでしょうか。

藤原さん「いずれもできません。略式命令に対して正式裁判の請求ができるのは、略式命令を受けた者(今回の場合は黒川氏)、または検察官であり(刑事訴訟法465条1項)、検察審査会や他の機関に正式裁判の請求の権限はありません」

Q.略式起訴から略式命令となった場合と、起訴から正式な裁判になった場合との主な違いを教えてください。

藤原さん「略式命令は公判(刑事裁判)を開かずに罰金、科料という、お金を支払う刑を言い渡します。正式な裁判では罰金、科料に加え、懲役などの刑も言い渡すことができます。また、正式な裁判は原則として公開の法廷で審理されます」

Q.もし、東京地検が今回、略式起訴をしなかったとしたら、その後どのようになった可能性があるか教えてください。

藤原さん「東京地検は略式起訴をしない場合、起訴のうちの公判請求(正式な裁判の請求)か、不起訴処分をすることになります。不起訴処分をした場合、検察審査会で再び、『起訴すべきだ』との議決がされれば、先述した『強制起訴』となっていました。

強制起訴されると正式な裁判が開かれる可能性があり、その場合は先述したように、原則として公開の法廷で審理されます。元検事長である黒川氏が法廷への出頭を命じられ、マスコミや一般の傍聴者がいる前で被告人の席に座る事態もあり得ました」

Q.東京地検が正式な裁判を避けるために略式起訴を選んだのではないか、という批判もあります。その可能性はあるのでしょうか。

藤原さん「単純賭博罪(刑法185条)の刑は50万円以下の罰金、または科料とされています。この刑について起訴する際には、正式な裁判を求めず略式起訴をすることが通常であり、そのことに限って言えば、正式な裁判を避けるために略式起訴を選んだ可能性は低いと思います。

他方で、常習賭博罪(刑法186条)の刑は3年以下の懲役であり、この刑について略式起訴をすることはできず、起訴をする場合は正式な裁判を求めるしかありません。仮に黒川氏について、証拠上、常習賭博罪で起訴することがあり得る場合、検察庁の判断として、罪の選択において、起訴になる場合も正式な裁判を避け略式起訴になるようにした可能性が大きいということになります。

この事件の容疑者は検察庁のナンバー2とされる東京高検検事長を務めていた黒川氏であり、その黒川氏について正式な裁判を求めることははばかられ、他方で、検察庁の2度の不起訴の意思に反して強制起訴されたということになれば、『身内をかばおうとして失敗した』とされて検察庁の権威が大いに失墜すると検察庁において考えられたこともあり得ます」

(オトナンサー編集部)

藤原家康(ふじわら・いえやす)

弁護士

東京大学法学部第一類卒業。2001年10月弁護士登録(第二東京弁護士会)。一般民事事件・刑事事件・家事事件・行政事件・破産事件・企業法務などに携わる。日本弁護士連合会憲法委員会事務局次長、第二東京弁護士会人権擁護委員会副委員長などを歴任。中学校・高校教諭免許(英語)も保有する。TBS「ひるおび!」「クイズ!新明解国語辞典」「夫婦問題バラエティ!ラブネプ」、フジテレビ「お台場政経塾」などメディア出演多数。

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