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1日乗車券、「もう使わないから」と友達に渡したら、法的問題は?

地下鉄や私鉄の「1日乗車券」について、使用済みの券を他人が使えるように自動改札の辺りに放置したり、友人に渡したりする行為の法的問題を弁護士に聞きました。

「1日乗車券」使い回しの法的問題は?
「1日乗車券」使い回しの法的問題は?

 地下鉄や私鉄では「1日乗車券」などの名称で、一定の区間内が1日乗り放題になる切符を販売していることが多くあります。便利な切符ではありますが、一方で、夕方くらいに乗り終える場合、「あと何時間か使えるのに、もったいないな」「拾った人が使ってくれれば」と思う人もいるようで、一部のターミナル駅で、1日乗車券が自動改札の辺りに放置されていることがあるようです。こうした行為や、友人に渡して使い回す行為に法的問題はないのでしょうか。弁護士の藤原家康さんに聞きました。

詐欺罪に該当する可能性も

Q.1日乗車券を自動改札の辺りに放置する行為に、法的問題はありますか。

藤原さん「その乗車券の購入者以外が使用する可能性があることから、法的な問題の原因となることが考えられます。1日乗車券のたぐいの切符を購入した場合、それを使用する権利は、購入した本人に限られるのが通常だからです」

Q.放置された1日乗車券を、拾って使用した場合、どのような法的問題があるのでしょうか。

藤原さん「民事では、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償義務が生じることが考えられます。その鉄道の運営会社に対する賠償義務です。

刑事では、購入者ではないにもかかわらず使用して、輸送の利益を得ることから、運営会社に対する詐欺罪(刑法246条2項)が成立することが考えられます」

Q.朝から1日乗車券を使っていた人が、使い終わろうとした夕方ごろに、これから電車に乗ろうという友人と駅で偶然に会い、「もう使わないからあげる」と1日乗車券を渡し、その友人が使用した場合はどうでしょうか。

藤原さん「購入者以外が使用することは予定されていないと考えられ、他人にあげることによっても、先ほど述べた、民事、刑事の責任が生じることが考えられます。友人が使用した場合も、先ほど述べた、民事、刑事の責任が生じることが考えられます。

1日乗車券をあげた人の罪名ですが、具体的な内容により、詐欺罪の共同正犯、教唆犯(そそのかす)、ほう助犯(助ける)のいずれも成立し得ます。一般に、責任が重い順に、共同正犯、教唆犯、ほう助犯となります」

Q.既に使い始めた1日乗車券を、有効期間中(当日の終電終了時)までに使う予定がない場合、切符はどうすべきなのでしょうか。

藤原さん「自身で持っておき、特に記念に保存するつもりもなければ、廃棄するしかないと思われます。払い戻しができる場合があるかもしれませんが、それができるかについては、乗車券の内容を確認しておく必要があります」

(オトナンサー編集部)

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藤原家康(ふじわら・いえやす)

弁護士

東京大学法学部第一類卒業。2001年10月弁護士登録(第二東京弁護士会)。一般民事事件・刑事事件・家事事件・行政事件・破産事件・企業法務などに携わる。日本弁護士連合会憲法委員会事務局次長、第二東京弁護士会人権擁護委員会副委員長などを歴任。中学校・高校教諭免許(英語)も保有する。TBS「ひるおび!」「クイズ!新明解国語辞典」「夫婦問題バラエティ!ラブネプ」、フジテレビ「お台場政経塾」などメディア出演多数。

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